商君書 / 慎法
而世主莫能致力者、何也?使民之所苦者無耕、危者無戰。二者、孝子難以為其親、忠臣難以為其君。今欲敺其眾民、與之孝子忠臣之所難、臣以為非劫以刑、而敺以賞莫可。而今夫世俗治者、莫不釋法度而任辯慧、後功力而進仁義、民故不務耕戰。
新字:而世主莫能致力者、何也?使民之所苦者無耕、危者無戦。二者、孝子難以為其親、忠臣難以為其君。今欲敺其衆民、与之孝子忠臣之所難、臣以為非劫以刑、而敺以賞莫可。而今夫世俗治者、莫不釈法度而任弁慧、後功力而進仁義、民故不務耕戦。
書き下し
而るに世主の能く力を致す莫きは、何ぞや。民の苦しむ所の者は耕くに無く、危うき所の者は戰うに無からしむればなり。二者は、孝子も以てその親の為にし難く、忠臣も以てその君の為にし難し。今、その眾民を敺りて、これに孝子忠臣の難しとする所を與えんと欲す。臣以て、劫かすに刑を以てし、而して敺るに賞を以てするに非ざれば可なる莫しと為す。而るに今夫れ世俗の治むる者は、法度を釋てて辯慧に任じ、功力を後にして仁義を進めざる莫し。民、故に耕戰を務めず。
現代語訳
それなのに世の君主が力を致すことができないのはなぜか。民が苦しむのは耕すことに及ぶものがなく、危険なのは戦うことに及ぶものがないからである。この二つは、孝子でも親のためにやり遂げるのが難しく、忠臣でも君主のためにやり遂げるのが難しい。いまその大勢の民を駆り立てて、孝子や忠臣でも難しいことをやらせようとしている。私は、刑罰で脅し、賞で駆り立てるのでなければ不可能だと考える。ところがいま世間で政治を行う者は、法度を捨てて弁舌と知恵に任せ、功績と労力を後回しにして仁義を前に出さない者はいない。だから民は農耕と戦いに努めないのである。
解説
「孝子も以てその親の為にし難く、忠臣も以てその君の為にし難し」——最も苦しく最も危険な仕事は、孝行者でも忠義者でもやり遂げるのが難しい。だから精神で動かすことはできない、というのがこの段の前提である。ここには冷徹な現実認識がある。本当にきつい仕事は、忠誠心や責任感では最後まで持たない。それを頼りに人を配置している職場は、その人の善意が尽きた瞬間に崩れる。いちばんきつい持ち場ほど、精神ではなく制度で支える。この順序を間違えると、まじめな人から潰れていく。
この章句が説くこと
孝子忠臣の難しとする所精神では持たない劫かすに刑を以てし敺るに賞を以てすきつい持ち場賞罰
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