商君書 / 禁使
今夫幽夜、山陵之大、而離婁不見、清朝日䵎、則上別飛鳥、下察秋毫。故目之見也、託日之勢也。得勢之至、不參官而潔、陳數而物當。今恃多官眾吏、官立丞監。夫置丞立監者、且以禁人之為利也、而丞監亦欲為利、則以何相禁?故恃丞監而治者、僅存之治也。通數者不然、別其勢、難其道。故曰:「其勢難匿者、雖跖不為非焉。」故先王貴勢。
新字:今夫幽夜、山陵之大、而離婁不見、清朝日䵎、則上別飛鳥、下察秋毫。故目之見也、託日之勢也。得勢之至、不参官而潔、陳数而物当。今恃多官眾吏、官立丞監。夫置丞立監者、且以禁人之為利也、而丞監亦欲為利、則以何相禁?故恃丞監而治者、僅存之治也。通数者不然、別其勢、難其道。故曰:「其勢難匿者、雖跖不為非焉。」故先王貴勢。
書き下し
今夫れ幽夜には、山陵の大なるも、離婁も見ず。清朝日䵎かなれば、則ち上は飛鳥を別ち、下は秋毫を察す。故に目の見るや、日の勢に託すればなり。勢を得るの至りは、官を參せずして潔く、數を陳ねて物は當たる。今、多官眾吏を恃みて、官に丞監を立つ。夫れ丞を置き監を立つる者は、且に以て人の利を為すを禁ぜんとするなり。而して丞監も亦た利を為さんと欲す。則ち何を以て相い禁ぜんや。故に丞監を恃みて治むる者は、僅かに存するの治なり。數に通ずる者は然らず。その勢を別ち、その道を難くす。故に曰く、「その勢、匿し難き者は、跖と雖も非を為さず」と。故に先王は勢を貴ぶ。
現代語訳
暗い夜には、山や丘がどれほど大きくても、離婁でさえ見えない。晴れた朝に日が明るければ、上は飛ぶ鳥を見分け、下は秋の産毛まで見きわめる。だから目が見えるのは、日の勢いに託しているからである。勢いを得ることの極致は、役所をいくつも重ねなくても清潔であり、数を並べれば物事が当たることである。ところがいまは、多くの役所と大勢の役人を頼りにして、役所に補佐役と監察役を置く。補佐役と監察役を置くのは、人が私利を図るのを禁じるためである。ところがその補佐役と監察役もまた私利を図ろうとする。それでは何によって互いを禁じるのか。だから補佐役と監察役を頼りにする統治は、かろうじて存続しているだけの統治である。数に通じた者はそうしない。その勢いを分け、その道を難しくする。だから「その状況で隠しにくければ、盗跖であっても悪いことをしない」というのだ。だから先王は勢いを尊んだ。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『商君書』禁使今、亂國は然らず。多官眾吏を恃む。吏眾しと雖も、事は同じくして體は一なり。夫れ事同じくして體一なる者は、相い監すること不可なり。且つ夫れ利異にして害同じからざる者は、先王の以て保と為す所なり。故に至治は、夫妻交友も相い為に惡を棄て非を蓋うこと能わずして、親を害せず、民人も相い為に隱すこと能わず。上と吏とは、事は合して利は異なる者なり。今夫れ騶虞は、以て相い監すること不可なり。事合して利同じき者なればなり。若し馬をして能く言わしめば、則ち騶虞はその惡を逃るる所無からん。利異なればなり。利合して惡同じき者は、父も以て子に問うこと能わず、君も以て臣に問うこと能わず。吏と吏とは、利合して惡同じきなり。夫れ事合して利異なる者は、先王の以て端と為す所なり。
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『商君書』禁使或るひと曰く、「人主、虛を執りて後にして以て應ずれば、則ち物は應じて稽驗せられ、稽驗せらるれば則ち姦は得らる」と。臣以て然らずと為す。夫れ吏は千里の外に專制して事を決す。十二月にして計書は以て定まり、事は一歲を以て別ちて計り、而して主は一たび以て聽く。疑う所を見れば、蔽うべからず。員は足らざるなり。夫れ物至れば、則ち目は見ざるを得ず。言薄れば、則ち耳は聞かざるを得ず。故に物至れば則ち辨じ、言至れば則ち論ず。故に國を治むるの制は、民は罪を避くるを得ず、目の見る所を以て心を遁るる能わざるが如し。
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『商君書』禁使人主の禁使する所以の者は、賞罰なり。賞は功に隨い、罰は罪に隨う。故に功を論じ罪を察するは、審らかにせざるべからざるなり。夫れ賞を高くし罰を下すも、上に必ずその道を知る無くんば、道無きと同じきなり。凡そ道を知る者は、勢數なり。故に先王はその彊を恃まずして、その勢を恃み、その信を恃まずして、その數を恃む。今夫れ飛蓬は、飄風に遇いて千里を行くは、風の勢に乘ずればなり。淵を探る者の千仞の深きを知るは、繩を縣くるの數なり。故にその勢に託する者は、遠しと雖も必ず至り、その數を守る者は、深しと雖も必ず得。
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『商君書』説民故に王者は刑賞を民の心に斷じ、器用を家に斷ず。治明らかなれば則ち同じく、治闇ければ則ち異なる。同じければ則ち行われ、異なれば則ち止まる。行わるれば則ち治まり、止まれば則ち亂る。治まれば則ち家に斷じ、亂るれば則ち君に斷ず。國を治むるには下に斷ずるを貴ぶ。故に十里を以て斷ずる者は弱く、五里を以て斷ずる者は彊し。家に斷ずれば則ち餘り有り、故に曰く日に治むる者は王たり、と。官に斷ずれば則ち足らず、故に曰く夜に治むる者は彊し、と。君に斷ずれば則ち亂る、故に曰く宿して治むる者は削らる、と。故に道有るの國は、治は君に聽かず、民は官に從わず。
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『商君書』弱民明主のその臣を使うや、用は必ず功に加わり、賞は必ずその勞を盡くす。人主、その民をして信ずること日月の如くならしむれば、これ敵無きなり。今、離婁は秋毫の末を見るも、明目を以て人に易うること能わず。烏獲は千鈞の重きを舉ぐるも、多力を以て人に易うること能わず。聖人の體性を存するや、以て相い易うること能わざるなり。今、當世の事を用うる者、皆な上聖と為らんと欲す。法を舉ぐるの謂いなり。法に背きて治むるは、これ任重く道遠くして馬牛無きなり、大川を濟るに舡楫無きなり。今夫れ人眾く兵強きは、これ帝王の大資なり。苟くも法を明らかにして以てこれを守るに非ざれば、危亡と鄰を為す。故に明主は法を察す。
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『商君書』君臣古者、未だ君臣上下有らざるの時、民は亂れて治まらず。是を以て聖人は貴賤を別ち、爵位を制し、名號を立てて、以て君臣上下の義を別つ。地廣く、民眾く、萬物多し、故に五官を分かちてこれを守る。民眾くして姦邪生ず、故に法制を立て度量を為して以てこれを禁ず。是の故に君臣の義、五官の分、法制の禁有るは、慎まざるべからざるなり。