商君書 / 説民
故王者刑賞斷於民心、器用斷於家。治明則同、治闇則異。同則行、異則止。行則治、止則亂。治則家斷、亂則君斷。治國貴下斷、故以十里斷者弱、以五里斷者彊、家斷則有餘、故曰日治者王。官斷則不足、故曰夜治者彊。君斷則亂、故曰宿治者削。故有道之國、治不聽君、民不從官。
新字:故王者刑賞断於民心、器用断於家。治明則同、治闇則異。同則行、異則止。行則治、止則乱。治則家断、乱則君断。治国貴下断、故以十里断者弱、以五里断者彊、家断則有余、故曰日治者王。官断則不足、故曰夜治者彊。君断則乱、故曰宿治者削。故有道之国、治不聴君、民不従官。
書き下し
故に王者は刑賞を民の心に斷じ、器用を家に斷ず。治明らかなれば則ち同じく、治闇ければ則ち異なる。同じければ則ち行われ、異なれば則ち止まる。行わるれば則ち治まり、止まれば則ち亂る。治まれば則ち家に斷じ、亂るれば則ち君に斷ず。國を治むるには下に斷ずるを貴ぶ。故に十里を以て斷ずる者は弱く、五里を以て斷ずる者は彊し。家に斷ずれば則ち餘り有り、故に曰く日に治むる者は王たり、と。官に斷ずれば則ち足らず、故に曰く夜に治むる者は彊し、と。君に斷ずれば則ち亂る、故に曰く宿して治むる者は削らる、と。故に道有るの國は、治は君に聽かず、民は官に從わず。
現代語訳
だから王者は、刑罰と賞についての判断を民の心の中で完結させ、道具の使い方を家で完結させる。政治が明らかであればみな同じように動き、政治が不明であればばらばらに動く。同じように動けば事は運び、ばらばらであれば止まる。事が運べば治まり、止まれば乱れる。治まっていれば家で判断が済み、乱れていれば君主まで上がってくる。国を治めるには、下のところで判断が済むことを尊ぶ。だから十里ごとに裁決する国は弱く、五里ごとに裁決する国は強い。家で判断が済めば余裕がある。だから、その日のうちに処理する国は王者となるという。役所で判断すれば手が足りない。だから、夜までかかる国は強いにとどまるという。君主まで上がれば乱れる。だから、翌日に持ち越す国は削られるという。だから道のある国では、政治は君主の指示を仰がず、民は役人に従うのでもない。
解説
この章句が説くこと
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『商君書』説民國の治まるは、家に斷ずれば王たり、官に斷ずれば彊く、君に斷ずれば弱し。輕きを重くすれば刑は去り、官を常にすれば則ち治まる。刑を省き保を要むれば、賞は倍すべからざるなり。姦有らば必ずこれを告げしむれば、則ち民は心に斷ず。上令して民の以て應ずる所を知り、器、家に成りて官に行わるれば、則ち事は家に斷ず。
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『商君書』説民罰重ければ爵は尊く、賞輕ければ刑は威あり。爵尊ければ上は民を愛し、刑威あれば民は上に死す。故に興る國は罰を行えば則ち民は利あり、賞を用うれば則ち上は重し。法詳らかなれば則ち刑は繁く、法簡なれば則ち刑は省なり。民、治まらざれば則ち亂れ、亂れてこれを治むれば又た亂る。故にこれをその治まれるに治むれば則ち治まり、これをその亂れたるに治むれば則ち亂る。民の情や治まれるにして、その事や亂る。
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『商君書』君臣君位に處りて令行われざれば、則ち危うし。五官分かれて常無ければ、則ち亂る。法制設けられて私善行わるれば、則ち民は刑を畏れず。君尊ければ則ち令は行われ、官修まれば則ち常事有り、法制明らかなれば則ち民は刑を畏る。法制明らかならずして、民の令に從うを求むるは、得べからざるなり。民、令に從わずして、君の尊きを求むるは、堯舜の知と雖も、以て治むること能わず。明王の天下を治むるや、法に緣りて治め、功に按じて賞す。凡そ民の疾く戰いて死を避けざる所以の者は、以て爵祿を求むればなり。明君の國を治むるや、士に斬首捕虜の功有らば、必ずその爵は榮とするに足り、祿は食らうに足る。農の廛を離れざる者は、以て二親を養い、軍事に給するに足る。故に軍士は節に死し、而して農民は偷まざるなり。
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『商君書』壹言夫れ民の治まらざるは、君道の卑しければなり。法の明らかならざるは、君長の亂るればなり。故に明君は道を卑しくせず、亂を長ぜず。權を秉りて立ち、法を垂れて治む。以て姦を上に得て官に不無く、賞罰は斷じて器用に度有り。此くの若くば則ち國制は明らかにして民力は竭くし、上爵は尊くして倫徒は舉がる。
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『商君書』壹言今、世主は皆な民を治めんと欲して、これを助くるに亂を以てす。亂を為すを樂しむに非ざるなり、その故に安んじて時を闚わざればなり。これ上は古に法りてその塞がるを得、下は今に修いて時に移らず、而して世俗の變に明らかならず、民を治むるの情を察せず。故に賞を多くして以て刑を致し、刑を輕くして以て賞を去る。夫れ上、刑を設けて民服せず、賞匱しくして姦は益々多し。故に上の民に於けるや、刑を先にして賞を後にす。故に聖人の國を為むるや、古に法らず、今に修わず、世に因りてこれが治を為し、俗を度りてこれが法を為す。故に法、民の情を察せずしてこれを立つれば、則ち成らず、治、時に宜しくしてこれを行えば、則ち干せず。故に聖王の治むるや、慎みて察務を為し、心を壹に歸するのみ。
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『商君書』説民善を用うれば、則ち民はその親に親しみ、姦に任ずれば、則ち民はその制に親しむ。合してこれを復する者は善なり、別ちてこれを規する者は姦なり。善を章らかにすれば則ち過ちは匿れ、姦に任ずれば則ち罪は誅せらる。過ち匿るれば則ち民は法に勝ち、罪誅せらるれば則ち法は民に勝つ。民、法に勝てば國は亂れ、法、民に勝てば兵は彊し。故に曰く、良民を以て治むれば、必ず亂れて削らるるに至り、姦民を以て治むれば、必ず治まりて彊きに至る、と。