商君書 / 禁使
或曰:「人主執虛後以應、則物應稽驗、稽驗則姦得。」臣以為不然。夫吏專制決事於千里之外、十二月而計書以定、事以一歲別計、而主以一聽、見所疑焉、不可蔽、員不足。夫物至、則目不得不見、言薄、則耳不得不聞。故物至則辨、言至則論。故治國之制、民不得避罪、如目不能以所見遁心。
新字:或曰:「人主執虚後以応、則物応稽験、稽験則姦得。」臣以為不然。夫吏専制決事於千里之外、十二月而計書以定、事以一歳別計、而主以一聴、見所疑焉、不可蔽、員不足。夫物至、則目不得不見、言薄、則耳不得不聞。故物至則弁、言至則論。故治国之制、民不得避罪、如目不能以所見遁心。
書き下し
或るひと曰く、「人主、虛を執りて後にして以て應ずれば、則ち物は應じて稽驗せられ、稽驗せらるれば則ち姦は得らる」と。臣以て然らずと為す。夫れ吏は千里の外に專制して事を決す。十二月にして計書は以て定まり、事は一歲を以て別ちて計り、而して主は一たび以て聽く。疑う所を見れば、蔽うべからず。員は足らざるなり。夫れ物至れば、則ち目は見ざるを得ず。言薄れば、則ち耳は聞かざるを得ず。故に物至れば則ち辨じ、言至れば則ち論ず。故に國を治むるの制は、民は罪を避くるを得ず、目の見る所を以て心を遁るる能わざるが如し。
現代語訳
ある人が言う。「君主が心を虚しくして構え、後手に回って応じれば、物事はそれに応じて照合され、照合されれば悪事は捕らえられる」と。私はそうは思わない。役人は千里の外で専断して事を決している。十二か月かけて会計の書がまとまり、事は一年ごとに分けて計算され、君主はそれを一度に聞く。疑わしいところを見つけても、隠しきることはできない。人手が足りないのだ。物が目の前に来れば、目は見ないわけにいかない。言葉が迫れば、耳は聞かないわけにいかない。だから物が来れば見分け、言葉が来れば論じる。だから国を治める仕組みでは、民は罪を避けることができない。目が見たものを心から逃せないのと同じである。
解説
年に一度の決算報告だけで、千里の外の役人の専断を把握できるはずがない——数字が上がってくる周期と、実際に事が動く速さが合っていないという指摘である。年一回の報告で見えるのは、すでに終わったことだけだ。「物至れば則ち辨じ、言至れば則ち論ず」。目の前に来たものは見ずにいられない。だから、見ずにいられない形で情報が届く仕組みを作れ、ということになる。報告を求めるのではなく、届く構造を作る。月次決算の締めが遅い会社は、この一段が刺さるはずである。
この章句が説くこと
十二月にして計書定まる物至れば則ち弁ず報告の周期と事の速さ届く構造
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『商君書』禁使今夫れ幽夜には、山陵の大なるも、離婁も見ず。清朝日䵎かなれば、則ち上は飛鳥を別ち、下は秋毫を察す。故に目の見るや、日の勢に託すればなり。勢を得るの至りは、官を參せずして潔く、數を陳ねて物は當たる。今、多官眾吏を恃みて、官に丞監を立つ。夫れ丞を置き監を立つる者は、且に以て人の利を為すを禁ぜんとするなり。而して丞監も亦た利を為さんと欲す。則ち何を以て相い禁ぜんや。故に丞監を恃みて治むる者は、僅かに存するの治なり。數に通ずる者は然らず。その勢を別ち、その道を難くす。故に曰く、「その勢、匿し難き者は、跖と雖も非を為さず」と。故に先王は勢を貴ぶ。
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『商君書』禁使今、亂國は然らず。多官眾吏を恃む。吏眾しと雖も、事は同じくして體は一なり。夫れ事同じくして體一なる者は、相い監すること不可なり。且つ夫れ利異にして害同じからざる者は、先王の以て保と為す所なり。故に至治は、夫妻交友も相い為に惡を棄て非を蓋うこと能わずして、親を害せず、民人も相い為に隱すこと能わず。上と吏とは、事は合して利は異なる者なり。今夫れ騶虞は、以て相い監すること不可なり。事合して利同じき者なればなり。若し馬をして能く言わしめば、則ち騶虞はその惡を逃るる所無からん。利異なればなり。利合して惡同じき者は、父も以て子に問うこと能わず、君も以て臣に問うこと能わず。吏と吏とは、利合して惡同じきなり。夫れ事合して利異なる者は、先王の以て端と為す所なり。
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『商君書』説民國の治まるは、家に斷ずれば王たり、官に斷ずれば彊く、君に斷ずれば弱し。輕きを重くすれば刑は去り、官を常にすれば則ち治まる。刑を省き保を要むれば、賞は倍すべからざるなり。姦有らば必ずこれを告げしむれば、則ち民は心に斷ず。上令して民の以て應ずる所を知り、器、家に成りて官に行わるれば、則ち事は家に斷ず。
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