商君書 / 外内
民之內事、莫苦於農、故輕治不可以使之。奚謂輕治?其農貧而商富、故其食賤者錢重。食賤則農貧、錢重則商富、末事不禁、則技巧之人利、而游食者眾之謂也。故農之用力最苦、不如商賈技巧之人。苟能令商賈技巧之人無繁、則欲國之無富、不可得也。
新字:民之内事、莫苦於農、故軽治不可以使之。奚謂軽治?其農貧而商富、故其食賤者銭重。食賤則農貧、銭重則商富、末事不禁、則技巧之人利、而游食者眾之謂也。故農之用力最苦、不如商賈技巧之人。苟能令商賈技巧之人無繁、則欲国之無富、不可得也。
書き下し
民の內事は、農より苦しきは莫し。故に輕治は以てこれを使うべからず。奚をか輕治と謂う。その農は貧しくして商は富み、故にその食賤しき者は錢重し。食賤しければ則ち農は貧しく、錢重ければ則ち商は富む。末事禁ぜられざれば、則ち技巧の人は利ありて、游食する者眾きの謂いなり。故に農の力を用うること最も苦しく、商賈技巧の人に如かず。苟くも能く商賈技巧の人をして繁からしむる無くんば、則ち國の富む無きを欲するも、得べからざるなり。
現代語訳
民にとって内の仕事では、農業より苦しいものはない。だから軽い統治ではそれを行わせられない。何を軽い統治というのか。農民が貧しく商人が富み、そのために食糧が安いと銭の価値が重くなることをいう。食糧が安ければ農民は貧しく、銭が重ければ商人は富む。末端の商いが禁じられなければ、技巧を持つ者が利を得て、働かずに食べる者が多くなる、ということである。農民の労力の使い方は最も苦しく、商人や技巧の人には及ばない。もし商人や技巧の人を増やさないようにできるなら、国が富まないでいようと思っても、そうはならない。
解説
食糧が安いと農民が貧しくなり、銭が重くなって商人が富む——価格を通じて所得が移転する仕組みを、はっきりと捉えている。いちばん苦しい仕事をしている人がいちばん報われない、という状態が構造的に生まれることへの指摘だ。商君書はこれを商業の抑制で解こうとしたが、現代で使えるのは診断のほうだろう。自社でいちばんきつい持ち場は、いちばん報われているか。そうでないなら、値付けや評価の仕組みのどこかで所得が別のところへ移っている。それは意図ではなく構造の問題である。
この章句が説くこと
民の内事は農より苦しきは莫し食賤しければ農貧し所得の移転きつい持ち場
関連する章句
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『商君書』外内故に曰く、農にしてその國を富まさんと欲する者は、境內の食は必ず貴く、而して農せざるの徵は必ず多く、市利の租は必ず重ければ、則ち民は田せざるを得ず。田無ければ、その食を易えざるを得ず。食貴ければ則ち田する者は利あり、田する者利あれば則ち事とする者は眾し。食貴くして、糴食は利あらずして、又た重徵を加うれば、則ち民はその商賈技巧を去りて、地利を事とせざるを得ず。故に民の利は盡く地利に在り。
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『商君書』農戦百姓曰く、「我れ農に疾み、先ず公倉を實たし、餘を收めて以て親に事え、上の為に生を忘れて戰い、以て主を尊び國を安んずるなり。倉は虛しく、主は卑しく、家は貧し。然らば則ち官を索むるに如かず」と。親戚交游合すれば、則ち更に慮らん。豪傑は務めて詩書を學び、外權に隨從し、要靡は商賈に事え、技藝を為す。皆な以て農戰を避く。民これを以て教えと為さば、則ち粟焉んぞ少なきこと無きを得ん、而して兵焉んぞ弱きこと無きを得んや。
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『商君書』算地故に聖人の國を為むるや、入りては民に令して以て農に屬せしめ、出でては民に令して以て戰を計らしむ。夫れ農は民の苦しむ所にして、戰は民の危うしとする所なり。その苦しむ所を犯し、その危うしとする所を行う者は、計なり。故に民は生くれば則ち利を計り、死すれば則ち名を慮る。名利の出づる所は、審らかにせざるべからざるなり。利、地に出づれば、則ち民は力を盡くし、名、戰に出づれば、則ち民は死を致す。入りて民をして力を盡くさしむれば、則ち草は荒れず、出でて民をして死を致さしむれば、則ち敵に勝つ。敵に勝ちて草荒れざれば、富強の功は、坐して致すべきなり。
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『商君書』墾令商に糴ることを得る無く、農に糶ることを得る無からしむ。農に糶ることを得る無くんば、則ち窳惰の農も勉め疾む。商に糴ることを得る無くんば、則ち多歲にも樂しみを加えず、多歲に樂しみを加えざれば、則ち饑歲にも裕利無く、裕利無ければ則ち商は怯え、商怯うれば則ち農せんと欲す。窳惰の農勉め疾み、商農せんと欲さば、則ち草必ず墾かれん。
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『商君書』壹言夫れ聖人の法を立て俗を化して、民をして朝夕農に從事せしむるや、知らざるべからざるなり。夫れ民の事に從いて制に死するは、上の榮名を設け、賞罰の明らかなるを置くを以てなり。辯說私門を用いずして功立つ、故に民の農を喜びて戰を樂しむなり。上の農戰の士を尊びて、辯說技藝の民を下し、游學の人を賤しむを見る、故に民は務めを壹にし、その家は必ず富みて、身は國に顯る。上、公利を開きて私門を塞ぎ、以て民力を致す。私勞は國に顯れず、私門は君に請わず。此くの若くして功名勸めば、則ち上の令は行われて荒草は闢かれ、淫民は止みて姦は萌す無し。國を治むるに能く民力を摶めて民務を壹にする者は彊く、能く本を事として末を禁ずる者は富む。
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『商君書』農戦故にその民、農する者寡くして、游食する者眾し。眾ければ則ち農する者は怠り、農する者怠れば則ち土地は荒る。學ぶ者俗を成せば、則ち民は農を舍てて、談說に從事し、高言偽議し、農を舍てて游食し、而して言を以て相い高しとす。故に民、上を離れて臣とせざる者、群を成す。これ國を貧しくし兵を弱くするの教えなり。夫れ國、民を庸うに言を以てすれば、則ち民は農に畜えられず。故に惟だ明君のみ言を好むの以て兵を彊くし土を闢くべからざるを知る。惟だ聖人の國を治むるや、壹を作し、これを農に摶むるのみ。