商君書 / 外内
故欲戰其民者、必以重法、──賞則必多、威則必嚴、淫道必塞、──為辯知者。不貴、游宦者不任、文學私名不顯。賞多威嚴、民見戰賞之多則忘死、見不戰之辱則苦生。賞使之忘死、而威備之苦生、而淫道又塞、以此遇敵、是以百石之弩射飄葉也、何不陷之有哉?
新字:故欲戦其民者、必以重法、──賞則必多、威則必厳、淫道必塞、──為弁知者。不貴、游宦者不任、文学私名不顕。賞多威厳、民見戦賞之多則忘死、見不戦之辱則苦生。賞使之忘死、而威備之苦生、而淫道又塞、以此遇敵、是以百石之弩射飄葉也、何不陥之有哉?
書き下し
故にその民を戰わしめんと欲する者は、必ず重法を以てす——賞は則ち必ず多く、威は則ち必ず嚴に、淫道は必ず塞ぐ——辯知を為す者は貴からず、游宦する者は任ぜられず、文學私名は顯れず。賞多く威嚴なれば、民は戰賞の多きを見れば則ち死を忘れ、戰わざるの辱めを見れば則ち生を苦しむ。賞はこれをして死を忘れしめ、而して威はこれに備えて生を苦しましめ、而して淫道は又た塞がる。此くを以て敵に遇わば、これ百石の弩を以て飄葉を射るなり。何ぞ陷らざるの有らんや。
現代語訳
だから民を戦わせようとする者は、必ず重い法を用いる——賞は必ず多く、威は必ず厳しく、よこしまな道は必ず塞ぐ——弁舌と知恵を売る者は尊ばれず、諸国を渡り歩く者は任用されず、学問や私的な名声は目立たない。賞が多く威が厳しければ、民は戦いの賞の多さを見て死を忘れ、戦わないことの恥辱を見て生きていることが苦しくなる。賞が死を忘れさせ、威が生きることを苦しくさせ、そのうえよこしまな道も塞がれている。この状態で敵に当たれば、それは百石の弩で舞う木の葉を射るようなものだ。射抜けないはずがない。
解説
賞を多く、威を厳しく、逃げ道を塞ぐ。この三つが揃った状態を「百石の弩で舞う木の葉を射る」と表現する。強大な力を、無防備な相手に当てる。誇張ではあるが、条件が揃ったときの圧倒的な差を言いたいのだろう。ここで重要なのは、三つのうち一つでも欠ければ効かないという点だ。賞だけ厚くしても逃げ道があれば人はそちらへ行き、逃げ道を塞いでも賞がなければ恨みだけが残る。制度の効果は足し算ではなく掛け算で、どれか一つがゼロなら全体がゼロになる。
この章句が説くこと
百石の弩を以て飄葉を射る賞は多く威は厳に淫道は塞ぐ三つ揃ってはじめて効く信賞必罰動機づけ
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史記 張釈之馮唐列伝臣愚かにして、以為へらく陛下の法太だ明らかにして、賞太だ軽く、罰太だ重しと。且つ雲中の守魏尚は、上功の首虜六級を差(たが)へしに坐して、陛下之を吏に下し、其の爵を削り、之を罰作す。此れに由りて之を言へば、陛下廉頗・李牧を得と雖も、用ふること能はざるなり。臣誠に愚かにして、忌諱に触る。死罪死罪」と。文帝説(よろこ)ぶ。是の日馮唐をして節を持して魏尚を赦さしめ、復た以て雲中の守と為し、而して唐を拝して車騎都尉と為し、中尉及び郡国の車士を主らしむ。七年、景帝立ち、唐を以て楚の相と為し、免ぜらる。武帝立ち、賢良を求め、馮唐を挙ぐ。唐時に年九十余、復た官を為すこと能はず。乃ち唐の子馮遂を以て郎と為す。遂は字は王孫、亦奇士にして、余と善し。太史公曰く、張季の長者を言ふ、法を守りて意に阿(おもね)らず。馮公の将率を論ずる、味有るかな、味有るかな。語に曰く「其の人を知らずんば、其の友を視よ」と。二君の称誦する所は、廊廟に著すべし。書に曰く「偏せず党せず、王道蕩蕩たり。党せず偏せず、王道便便たり」と。張季・馮公之に近し。
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