商君書 / 画策
疆國之民、父遺其子、兄遺其弟、妻遺其夫、皆曰:「不得、無返。」又曰:「失法離令、若死我死、鄉治之。」行間無所逃、遷徙無所入。行間之治、連以五、辨之以章、束之以令、拙無所處、罷無所生。是以三軍之眾、從令如流、死而不旋踵。
新字:疆国之民、父遺其子、兄遺其弟、妻遺其夫、皆曰:「不得、無返。」又曰:「失法離令、若死我死、鄉治之。」行間無所逃、遷徙無所入。行間之治、連以五、弁之以章、束之以令、拙無所処、罷無所生。是以三軍之眾、従令如流、死而不旋踵。
書き下し
彊國の民は、父はその子に遺り、兄はその弟に遺り、妻はその夫に遺りて、皆な曰く、「得ずんば、返る無かれ」と。又た曰く、「法を失い令を離るれば、若し死せば我れも死す、鄉これを治めん」と。行間に逃るる所無く、遷徙するに入る所無し。行間の治は、連ぬるに五を以てし、これを辨つに章を以てし、これを束ぬるに令を以てす。拙なれば處る所無く、罷なれば生くる所無し。是を以て三軍の眾、令に從うこと流るるが如く、死して踵を旋らさず。
現代語訳
強い国の民は、父が子を送り出し、兄が弟を送り出し、妻が夫を送り出して、みなこう言う。「手柄を立てずに帰ってくるな」と。また言う。「法を失い命令に背けば、おまえが死ぬなら私も死ぬ。郷が始末をつけるだろう」と。隊列の中に逃げ場はなく、移り住もうにも入る先がない。隊列の統制は五人一組で連帯させ、記章によって区別し、命令によって束ねる。拙い者には居場所がなく、疲れた者には生きる道がない。だから三軍の兵は、命令に従うこと水の流れるようで、死んでも踵を返さない。
解説
家族が兵を送り出すときの言葉として記録された「得ずんば、返る無かれ」は、秦の強さの正体を伝える。恐ろしいのは、この言葉を家族自身が言っていることだ。連座の制度が、家の中にまで入り込んでいる。逃げ場も移り住む先もなく、五人一組で互いに縛られる。この統制の完成度が秦を強くし、そして統一後にその反動が一気に噴き出した。組織の求心力を制度で作るとき、逃げ場を塞ぐやり方は必ず効く。効くがゆえに、それが恨みとして蓄積することも同時に起きる。この一段は、その両方を同時に見せてくれる。
この章句が説くこと
得ずんば返る無かれ連ぬるに五を以てす逃げ場を塞ぐ結束秦の強さの正体規律
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