商君書 / 賞刑
故曰:贊茅岐周之粟、以賞天下之人、不人得一升、以其錢賞天下之人、不人得一錢。故曰:百里之君、而封侯其臣、大其舊。自士卒坐陳者、里有書社。賞之所加、寬於牛馬者、何也?善因天下之貨、以賞天下之人。故曰:「明賞不費。」湯武既破桀紂、海內無害、天下大定、築五庫、藏五兵、偃武事、行文教、倒載干戈、搢笏作為樂以申其德。當此時也、賞祿不行、而民整齊。故曰:「明賞之猶、至於無賞也。」
新字:故曰:賛茅岐周之粟、以賞天下之人、不人得一升、以其銭賞天下之人、不人得一銭。故曰:百里之君、而封侯其臣、大其旧。自士卒坐陳者、里有書社。賞之所加、寛於牛馬者、何也?善因天下之貨、以賞天下之人。故曰:「明賞不費。」湯武既破桀紂、海内無害、天下大定、築五庫、蔵五兵、偃武事、行文教、倒載干戈、搢笏作為楽以申其徳。当此時也、賞禄不行、而民整斉。故曰:「明賞之猶、至於無賞也。」
書き下し
故に曰く、贊茅岐周の粟を以て、天下の人に賞せば、人ごとに一升を得ず。その錢を以て天下の人に賞せば、人ごとに一錢を得ず、と。故に曰く、百里の君にして、その臣を侯に封じ、その舊を大にす。士卒の陳に坐する者よりして、里に書社有り、と。賞の加うる所、牛馬よりも寬きは、何ぞや。善く天下の貨に因りて、以て天下の人に賞すればなり。故に曰く、「明賞は費やさず」と。湯武、既に桀紂を破り、海內に害無く、天下は大いに定まる。五庫を築き、五兵を藏め、武事を偃せ、文教を行い、干戈を倒に載せ、笏を搢み樂を作為して以てその德を申ぶ。この時に當たるや、賞祿行われずして、民は整齊たり。故に曰く、「明賞の猶きは、賞無きに至るなり」と。
現代語訳
だからこう言う。贊茅や岐周の穀物で天下の人に賞を与えれば、一人当たり一升にも足りない。その銭で天下の人に賞を与えれば、一人当たり一銭にも足りない、と。それでもこう言う。百里四方の君でありながら、その臣下を諸侯に封じ、もとの領地より大きくした。陣に加わった士卒から、村ごとに名簿に記して土地を与えた、と。賞の及ぶ範囲が牛馬よりも広かったのはなぜか。天下の財貨をうまく用いて、天下の人に賞したからである。だから「明らかな賞は費用がかからない」というのだ。湯王・武王が桀と紂を破り、天下に害がなくなり大いに定まると、五つの蔵を築いて五種の武器を収め、軍事をやめて文の教えを行い、武具を逆さまに積み、笏を差して音楽を作りその徳を述べた。この時にあたっては、賞も俸禄も行われないのに、民は整然としていた。だから「明らかな賞は、賞が要らないところまで行き着く」というのだ。
解説
この章句が説くこと
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呂氏春秋・義賞①春氣至れば則ち草木産し、秋氣至れば則ち草木落つ。産と落とは之を使しむるもの或り。自ら然るに非ざるなり。故に之を使しむる者至れば、物為さざる無く、之を使しむる者至らざれば、物為す可き無し。古の人、其の使しむる所以を審らかにす、故に物、用を為さざる莫し。賞罰の柄、此れ上の使しむる所以なり。其の以て加うる所の者義なれば、則ち忠信親愛の道彰わる。久しく彰われて愈々長ずれば、民の之に安んずること性の若し。此を之れ教成ると謂う。教成れば則ち厚賞嚴威有りと雖も禁ずること能わず。故に善く教うる者は、義以て賞罰して教成り、教成りて賞罰禁ずること能わず。賞罰を用いて當らざるも亦た然り。姦偽賊亂貪戻の道興り、久しく興りて息まざれば、民の之を讎うること性の若し。戎夷胡貉巴越の民は、是を以て厚賞嚴罰有りと雖も、禁ずること能わず。郢人の兩版を以て垣するや、吳起之を變じて惡まる。賞罰易れば民安くんぞ樂しまん。氐羌の民、其れ虜となるや、其の係纍を憂えずして、其の死するに焚かれざるを憂うるは、皆、邪に成り、且つ成りて民を賊う。故に賞罰の加うる所は、慎まざる可からず。
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『韓非子』難一第三十六今赫は僅かに驕侮せざるのみにして、襄子之を賞するは、是れ賞を失うなり。明主は賞を無功に加えず、罰を無罪に加えず。
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孫子・行軍篇數々賞する者は、窘するなり。數々罰する者は、困しむなり。先に暴にして後に其の衆を畏るる者は、不精の至りなり。来たりて委謝する者は、休息を欲するなり。
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『韓非子』外儲説右下第三十五賞罰共にすれば則ち禁令行われず。何を以て之を明らかにせん。之を明らかにするに造父・於期を以てす。
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『韓非子』二柄第七明主の其の民を導制する所の者は、二柄のみ。二柄とは、刑・徳なり。
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呂氏春秋・當賞①民は道無くして天を知る。民は四時寒暑日月星辰の行を以て天を知る。四時寒暑日月星辰の行當たれば、則ち諸生の血氣有るの類、皆為に其の處を得て其の產に安んず。人臣も亦た道無くして主を知る。人臣は賞罰爵祿の加わる所を以て主を知る。主の賞罰爵祿の加わる所の者宜しければ、則ち親疏遠近賢不肖、皆其の力を盡くして、以て用を為す。