商君書 / 徠民
曩者臣言曰:「意民之情、其所欲者、田宅也、晉之無有也信、秦之有餘也必、若此而民不西者、秦士戚而民苦也。」今利其田宅、復之三世。此必與其所欲、而不使行其所惡也。然則山東之民無不西者矣。且直言之謂也、不然、夫實曠虛、出天寶、而百萬事本、其所益多也、豈徒不失其所以攻乎?
新字:曩者臣言曰:「意民之情、其所欲者、田宅也、晉之無有也信、秦之有余也必、若此而民不西者、秦士戚而民苦也。」今利其田宅、復之三世。此必与其所欲、而不使行其所悪也。然則山東之民無不西者矣。且直言之謂也、不然、夫実曠虚、出天宝、而百万事本、其所益多也、豈徒不失其所以攻乎?
書き下し
曩者、臣言いて曰く、「意うに民の情、その欲する所の者は田宅なり。晉のこれ有る無きは信なり、秦の餘り有るは必なり。此くの若くして民の西せざるは、秦の士は戚みて民は苦しめばなり」と。今、その田宅を利し、これを復すること三世。これ必ずその欲する所を與えて、その惡む所を行わしめざるなり。然らば則ち山東の民、西せざる者無からん。且つ直だ言うの謂いなり。然らずんば、夫れ曠虛を實たし、天寶を出だし、而して百萬、本を事とせば、その益する所は多し。豈に徒だその攻むる所以を失わざるのみならんや。
現代語訳
先ほど私はこう言った。「思うに民の心情として、欲しいものは田と家である。晋にそれがないのは確かで、秦に余っているのは間違いない。それでも民が西へ来ないのは、秦の役人が厳しく民が苦しんでいるからだ」と。いま、その田と家で利を与え、三代にわたって課役を免除する。これはまさに、相手の欲しいものを必ず与え、嫌がることはさせない、ということである。そうすれば山東の民で西へ来ない者はいなくなる。しかもこれは言葉だけの話ではない。そうでなくとも、空き地を満たし、天与の宝を掘り出し、百万の人が根本の仕事に従事すれば、その利益は大きい。どうして、こちらの攻める手立てを失わないというだけの話であろうか。
解説
「必ずその欲する所を與えて、その惡む所を行わしめざるなり」——欲しいものは必ず与え、嫌がることはさせない。人を招く条件を、これ以上ないほど単純に言い切っている。相手が何を欲しがっているかは、すでに前段で調べてある。田と家だ。だから田と家を出す。採用や勧誘がうまくいかないとき、多くの場合は条件が悪いのではなく、相手が何を欲しがっているかを調べずに、自分が出しやすいものを並べている。調べる、そして相手が欲しいものを出す。順番はこれだけである。
この章句が説くこと
必ずその欲する所を与うその悪む所を行わしめず田宅相手を調べてから出す民心
関連する章句
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『商君書』徠民秦の鄰と與にする所の者は、三晉なり。兵を用いんと欲する所の者は、韓魏なり。彼は土狹くして民眾く、その宅は參居して并處し、その賓萌は賈息す。民は上に通名無く、下に田宅無くして、姦に恃み末作を務めて以て處る。人の陰陽澤水に復する者、半ばを過ぐ。これその土のその民を生かすに足らざるなり、秦の民のその土を實たすに足らざるに過ぐる有るに似たり。意うに民の情、その欲する所の者は、田宅なり。而して晉のこれ有る無きは信なり、秦の餘り有るは必なり。此くの如くして民の西せざるは、秦の士は戚みて民は苦しめばなり。
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『商君書』徠民今、王、明惠を發せられ、諸侯の士の來たり義に歸する者、今これを復すること三世、軍事を知る無からしめよ。秦の四境の內、陵阪丘隰は十年の征を起こさざること、律に著すなり。以て作夫百萬を食わしむるに足る。
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『商君書』徠民夫れ民を苦しめて兵を彊くする所以の者は、將に以て敵を攻めて欲する所を成さんとすればなり。兵法に曰く、「敵弱くして兵彊し」と。これ吾が攻むる所以を失わずして、敵はその守る所を失うを言うなり。今、三晉、秦に勝たざること四世なり。魏襄より以來、野戰に勝たず、守城は必ず拔かる。小大の戰い、三晉の秦に亡う所の者は、勝げて數うべからざるなり。此くの若くして服せざるは、秦は能くその地を取るも、而してその民を奪う能わざればなり。
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『商君書』徠民臣竊かに王吏の明を以て過見と為す。これその弱き所以なり。三晉の民を奪わざるは、爵を愛しみて復を重んずればなり。その說に曰く、「三晉の弱き所以の者は、その民は樂を務めて復爵の輕ければなり。秦の強き所以の者は、その民は苦を務めて復爵の重ければなり。今、爵を多くして久しく復せば、これ秦の彊き所以を釋てて、三晉の弱き所以を為すなり」と。これ王吏の爵を重んじ復を愛しむの說なり。而して臣竊かに以て然らずと為す。
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