商君書 / 徠民
臣之所謂兵者、非謂悉興盡起也、論境內所能給軍卒車騎、令故秦兵、新民給芻食。天下有不服之國、則王以此春違其農、夏食其食、秋取其刈、冬凍其葆。以大武搖其本、以廣文安其嗣。王行此十年之內、諸侯將無異民、而王何為愛爵而重復乎!
新字:臣之所謂兵者、非謂悉興尽起也、論境内所能給軍卒車騎、令故秦兵、新民給芻食。天下有不服之国、則王以此春違其農、夏食其食、秋取其刈、冬凍其葆。以大武揺其本、以広文安其嗣。王行此十年之内、諸侯将無異民、而王何為愛爵而重復乎!
書き下し
臣の所謂る兵なる者は、悉く興し盡く起こすを謂うに非ざるなり。境內の軍卒車騎に給する能う所を論じ、故秦を兵とし、新民に芻食を給せしむ。天下に服せざるの國有らば、則ち王はこれを以て春にはその農に違い、夏にはその食を食らい、秋にはその刈を取り、冬にはその葆を凍らしむ。大武を以てその本を搖るがし、廣文を以てその嗣を安んず。王これを行うこと十年の內、諸侯は將に異民無からんとす。而して王は何為れぞ爵を愛しみ復を重んずるや。
現代語訳
私のいう兵とは、全員を動員して総出撃することではない。国内で軍卒や戦車・騎兵に供給できる範囲を見きわめ、もとからの秦の民を兵とし、新しく来た民には飼い葉と食糧の供給をさせる。天下に服さない国があれば、王はこの体制で、春にはその国の農作業を妨げ、夏にはその食糧を食い、秋にはその刈り入れを奪い、冬にはその備蓄を凍らせる。強い武力でその根本を揺るがし、広い文治でその後継を安んじさせる。王がこれを十年行えば、諸侯にはもはや自分の民がいなくなるだろう。それなのに王は、どうして爵位を惜しみ免税を重く見られるのか。
解説
全員動員をしない、というのが提案の要点である。供給できる範囲を見きわめ、それを超えない。そして戦いは季節ごとに相手の生産を削る形で行う。総力戦ではなく、継続可能な圧力である。そのうえで「大武を以てその本を搖るがし、廣文を以てその嗣を安んず」——強く当たって根を揺らし、広く受け入れて後を安んじさせる。押すことと受け入れることを同時にやる。競争でも、相手を叩くだけでは人は来ない。叩きながら受け皿を用意しておいてはじめて、人と資源がこちらへ動く。
この章句が説くこと
大武を以て本を揺るがし広文を以て嗣を安んず悉く興し尽く起こすに非ず継続可能な圧力
関連する章句
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『商君書』徠民夫れ秦の患うる所の者は、兵を興して伐てば、則ち國家は貧しく、安居して農せば、則ち敵は休息を得。これ王の兩つながら成すこと能わざる所なり。故に四世戰い勝ちて、天下は服せず。今、故秦を以て敵を事とし、而して新民をして本を作さしめば、兵は百たび外に宿すと雖も、境內は須臾の時をも失わず。これ富強兩つながら成るの效なり。
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