商君書 / 靳令
是故興國不用十二者、故其國多力、而天下莫之能犯也。兵出必取、取必能有之、按兵而不攻、必富。朝廷之吏、少者不毀也、多者不損也。效功而取官爵、雖有辯言、不得以相干也、此謂以數治。以力攻者、出一取十、以言攻者、出十亡百。國好力、此謂「以難攻」、國好言、此謂「以易攻」。
新字:是故興国不用十二者、故其国多力、而天下莫之能犯也。兵出必取、取必能有之、按兵而不攻、必富。朝廷之吏、少者不毀也、多者不損也。効功而取官爵、雖有弁言、不得以相干也、此謂以数治。以力攻者、出一取十、以言攻者、出十亡百。国好力、此謂「以難攻」、国好言、此謂「以易攻」。
書き下し
是の故に興る國は十二者を用いず。故にその國に力多くして、天下これを能く犯す莫きなり。兵出づれば必ず取り、取れば必ず能くこれを有つ。兵を按じて攻めざれば、必ず富む。朝廷の吏、少なき者も毀たざるなり、多き者も損せざるなり。功を效して官爵を取る。辯言有りと雖も、以て相い干すを得ざるなり。これを數を以て治むと謂う。力を以て攻むる者は、一を出だして十を取り、言を以て攻むる者は、十を出だして百を亡う。國、力を好む、これを「難きを以て攻む」と謂い、國、言を好む、これを「易きを以て攻む」と謂う。
現代語訳
だから興る国はこの十二を用いない。だからその国には力が多く、天下の誰も侵すことができない。兵を出せば必ず取り、取れば必ず保つ。兵を収めて攻めなければ必ず富む。朝廷の役人は、少ない者もそのために貶められず、多い者もそのために減らされない。功績を示して官職と爵位を得る。弁の立つ者がいても、それによって割り込むことはできない。これを、数によって治める、という。力によって攻める者は一を投じて十を取り、言葉によって攻める者は十を投じて百を失う。国が力を尊ぶことを「難きを以て攻める」といい、国が弁舌を好むことを「易きを以て攻める」という。
解説
「數を以て治む」——数によって治める、という一語がこの段の要である。官職も爵位も、示された功績の数字によって決まり、口のうまさで割り込むことはできない。「辯言有りと雖も、以て相い干すを得ざるなり」。弁明や交渉で評価を動かせない状態を作ることが、法家の目指した公平である。数字で評価することの冷たさはよく批判されるが、数字がない評価は必ず声の大きい人に有利に働く。どちらの不公平を選ぶかという問題として、この一段は読める。
この章句が説くこと
数を以て治む弁言以て相い干すを得ず功を効して官爵を取る評価と交渉実力主義
関連する章句
-
尉繚子・戰威賢を舉げ能に任すれば、時日せずして事利あり。法を明らかにし令を審らかにすれば、卜筮せずして吉を獲。功を貴び勞を養えば、禱祠せずして福を得。
-
論語・里仁篇子曰わく、位無きを患えず、立つ所以を患う。己を知る莫きを患えず、知らるべきを為すを求む。
-
史記 商君列伝民をして什伍と為らしめて、相ひ牧司し連坐せしむ。姦を告げざる者は腰斬し、姦を告ぐる者は敵首を斬るに同じく賞し、姦を匿す者は敵に降るに同じく罰す。民に二男以上有りて分異せざる者は、其の賦を倍にす。軍功有る者は、各々率を以て上爵を受く。私斗を為す者は、各々軽重を以て刑の大小を被る。力を本業に僇し、耕織して粟帛を致すこと多き者は其の身を復す。末利を事とし及び怠りて貧しき者は、挙げて以て収孥と為す。宗室も軍功の論有るに非ざれば、属籍を為すを得ず。尊卑爵秩の等級を明らかにし、各々差次を以て田宅を名づく。功有る者は顕栄し、功無き者は富むと雖も芬華する所無し。
-
史記 仲尼弟子列伝冉雍、字は仲弓。仲弓、政を問ふ。孔子曰く、「門を出づるは大賓を見るが如くし、民を使ふは大祭を承くるが如くす。邦に在りても怨み無く、家に在りても怨み無し」と。孔子、仲弓を以て徳行有りと為し、曰く、「雍や南面せしむ可し」と。仲弓の父は賤人なり。孔子曰く、「犁牛の子も騂くして且つ角有らば、用ふる勿からんと欲すと雖も、山川其れ諸れを舎てんや」と。
-
『韓非子』顯學第五十故に孔子曰く、「容を以て人を取らんか、之を子羽に失す、言を以て人を取らんか、之を宰予に失す。」・・・故に明主の吏・宰相は必ず州部より起こり、猛將は必ず卒伍より發る。
-
葉隠・聞書第二数馬(かずま)申し候は、茶の湯に古き道具を用うる事を、むさき事、新しき器綺麗(きれい)にて然(しか)るべしと申す衆あり。また古き道具はしおらしき故(ゆえ)用うるなどと思う人もあり。皆相違なり。古き道具は下賤(げせん)の者も取り扱いたる物なれども、よくよくその徳ある故に、大人(たいじん)の手にも触れらるるものなり。徳を貴みてなり。奉公人も同然なり。下賤より高位になりたる人は、その徳ある故なり。然るを、氏(うじ)もなき者と同役はなるまじ、昨今(さっこん)まで足軽にてありし者を頭人(とうにん)には罷成(まかりな)らず、と思うは以ての外(もってのほか)取違(とりちが)いなり。もとより、その位に備わりたる人よりは、下より登りたるは、徳を貴みて一入(ひとしお)崇敬する筈なり。