商君書 / 説民
民之所欲萬、而利之所出一。民非一則無以致欲、故作一。作一則力摶、力摶則彊、彊而用、重彊。故能生力、能殺力、曰:「攻敵之國」、必疆。
新字:民之所欲万、而利之所出一。民非一則無以致欲、故作一。作一則力摶、力摶則彊、彊而用、重彊。故能生力、能殺力、曰:「攻敵之国」、必疆。
書き下し
民の欲する所は萬にして、利の出づる所は一なり。民、一に非ざれば則ち以て欲を致す無し、故に一を作す。一を作せば則ち力は摶まり、力摶まれば則ち彊く、彊くして用うれば、重ねて彊し。故に能く力を生じ、能く力を殺すを「敵を攻むるの國」と曰う、必ず疆し。
現代語訳
民が欲しがるものは一万通りあるが、利益の出てくる場所は一つである。民は、その一つを通らなければ欲しいものを得られない。だから一つに絞るのだ。一つに絞れば力は束ねられ、力が束ねられれば強く、強い状態で用いればさらに強い。だから、力を生み出すこともでき、力を使い切ることもできる国を「敵を攻める国」といい、必ず強い。
解説
「民の欲する所は万、利の出づる所は一」——欲望は多様でよい、出口を一つにすればよい、という設計思想である。人の望みを変えようとするのではなく、望みを叶える経路だけを一本にする。人を変えずに行動を変える方法として、これ以上に効率のよいやり方はない。そして「能く力を生じ、能く力を殺す」。力を生み出すだけでなく、生み出した力を使い切ることまでを一組にしている。溜めた力を使わずにいれば、それは内側で腐る。人を採り、予算を取り、能力を蓄えた組織が、それを実際に投じないままでいるとどうなるか——この書は繰り返しそこを警告する。
この章句が説くこと
欲する所は万利の出づる所は一作一力を生じ力を殺す動機づけ
関連する章句
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『商君書』説民私道を塞ぎて以てその志を窮め、一門を啓きて以てその欲を致し、民をして必ずその惡む所を先にし、然る後にその欲する所を致さしむ。故に力多し。力多くして用いざれば則ち志は窮まり、志窮まれば則ち私有り、私有れば則ち弱有り。故に能く力を生じて、力を殺すこと能わざるを「自ら攻むるの國」と曰う、必ず削らる。故に曰く、王者は國に力を蓄えず、家に粟を積まず、と。國に力を蓄えざるは、下これを用うればなり、家に粟を積まざるは、上これを藏むればなり。
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『商君書』壹言夫れ聖人の國を治むるや、能く力を摶め、能く力を殺す。制度察らかなれば則ち民力は摶まる。摶まりて化せざれば則ち行われず、行われて富無ければ則ち亂を生ず。故に國を治むる者、その力を摶むるや、以て國を富まし兵を彊くするなり、その力を殺すや、以て敵を事とし農を勸むるなり。
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『商君書』弱民利、一孔より出づれば、則ち國に物多く、十孔より出づれば、則ち國に物少なし。一を守る者は治まり、十を守る者は亂る。治まれば則ち強く、亂るれば則ち弱し。強ければ則ち物來たり、弱ければ則ち物去る。故に國、物を致す者は強く、物を去る者は弱し。民辱めらるれば則ち爵を貴び、弱ければ則ち官を尊び、貧しければ則ち賞を重んず。刑を以て民を治むれば則ち用いらるるを樂しみ、賞を以て民を戰わしむれば則ち死を輕んず。故に戰事に兵の用いらるるを強と曰う。民に私榮有れば、則ち列を賤しみ官を卑しむ。富めば則ち賞を輕んず。民を治むるに羞辱するに刑を以てすれば、戰わば則ち戰う。民、死を畏れ事亂れて戰えば、故に兵農は怠りて國は弱し。
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『商君書』壹言夫れ開きて塞がざれば則ち短長し、長じて攻めざれば則ち姦有り。塞ぎて開かざれば則ち民は渾し、渾して用いざれば則ち力多し、力多くして攻めざれば則ち蝨有り。故に力を摶むるは以て務めを壹にするなり、力を殺すは以て敵を攻むるなり。國を治むるに民の壹なるを貴ぶ。民壹なれば則ち樸、樸なれば則ち農す、農すれば則ち勤め易く、勤むれば則ち富む。富める者はこれを廢するに爵を以てすれば、淫せず、淫する者はこれを廢するに刑を以てすれば農を務む。故に能く力を摶めて用うること能わざる者は、必ず亂れ、能く力を殺して摶むること能わざる者は、必ず亡ぶ。故に明君はこの二者を齊うるを知れば、その國は彊く、この二者を齊うるを知らざれば、その國は削らる。
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『商君書』弱民民弱ければ國は強く、民強ければ國は弱し。故に道有るの國は、務め民を弱くするに在り。樸なれば則ち強く、淫なれば則ち弱し。弱ければ則ち軌り、淫なれば則ち志を越ゆ。弱ければ則ち用有り、志を越ゆれば則ち強し。故に曰く、「強を以て強を去る者は弱く、弱を以て強を去る者は強し」と。民、これを善くすれば則ち和し、これを利すれば則ち用いらる。用いらるれば則ち任有り、和すれば則ち匱し。任有らば乃ち政に富む。上、法を舍てて、民の善しとする所に任ず、故に姦多し。民貧しければ則ち富を力め、民富めば則ち淫す。淫すれば則ち蝨有り。故に民富みて用いられざれば、則ち民をして食を以て爵を出でしむ。爵は必ずその力を以てすれば、則ち農は偷まず。農偷まざれば、六蝨は萌す無し。故に國富みて民治まれば、重ねて強し。
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