商君書 / 説民
刑生力、力生彊、彊生威、威生德、德生於刑。故刑多則賞重、賞少則刑重。民之有欲有惡也、欲有六淫、惡有四難。從六淫、國弱、行四難、兵彊。故王者刑於九、而賞出一。刑於九、則六淫止、賞出一、則四難行。六淫止、則國無姦、四難行、則兵無敵。
新字:刑生力、力生彊、彊生威、威生徳、徳生於刑。故刑多則賞重、賞少則刑重。民之有欲有悪也、欲有六淫、悪有四難。従六淫、国弱、行四難、兵彊。故王者刑於九、而賞出一。刑於九、則六淫止、賞出一、則四難行。六淫止、則国無姦、四難行、則兵無敵。
書き下し
刑は力を生じ、力は彊を生じ、彊は威を生じ、威は德を生ず。德は刑に生ず。故に刑多ければ則ち賞は重く、賞少なければ則ち刑は重し。民の欲有り惡有るや、欲に六淫有り、惡に四難有り。六淫に從えば國は弱く、四難を行えば兵は彊し。故に王者は九に刑して、賞は一を出だす。九に刑すれば則ち六淫は止み、賞一を出だせば則ち四難は行わる。六淫止まば則ち國に姦無く、四難行わるれば則ち兵に敵無し。
現代語訳
刑罰は力を生み、力は強さを生み、強さは威を生み、威は徳を生む。徳は刑罰から生まれるのである。だから刑罰が多ければ賞は重みを持ち、賞が少なければ刑罰は重みを持つ。民には欲するものと嫌うものがあり、欲するものには六つの放縦があり、嫌うものには四つの難儀がある。六つの放縦に従えば国は弱く、四つの難儀を行わせれば兵は強い。だから王者は十のうち九を刑罰にあて、賞は一だけ出す。九を刑罰にあてれば六つの放縦は止み、賞を一だけ出せば四つの難儀は実行される。六つの放縦が止めば国に悪事がなくなり、四つの難儀が行われれば兵に敵はなくなる。
解説
「德は刑に生ず」——徳は刑罰から生まれる、という一句に、儒家との断絶が凝縮している。儒家は徳が先にあって刑は補助だと考えるが、商君書は順序を逆にする。力があり、威があり、その結果として人は恩恵を感じる、と。冷酷ではあるが、まったくの空論とも言い切れない。約束を守らせる仕組みがない場所では、善意はしばしば踏み倒される。徳が成り立つには、それを支える力の裏づけが要る——そこまでは認めたうえで、力が徳を生むと言い切るところで線を越える。この一行が、線のどちら側にあるかを考える材料になる。
この章句が説くこと
徳は刑に生ず六淫と四難刑九賞一徳と力の順序賞罰実力主義
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