商君書 / 墾令
令軍市無有女子、而命其商、令人自給甲兵、使視軍興。又使軍市無得私輸糧者、則姦謀無所於伏。盜輸糧者不私稽。輕惰之民不游軍市、盜糧者無所售。送糧者不私、輕惰之民不游軍市、則農民不淫、國粟不勞、則草必墾矣。
新字:令軍市無有女子、而命其商、令人自給甲兵、使視軍興。又使軍市無得私輸糧者、則姦謀無所於伏。盗輸糧者不私稽。軽惰之民不游軍市、盗糧者無所售。送糧者不私、軽惰之民不游軍市、則農民不淫、国粟不労、則草必墾矣。
書き下し
軍市に女子有る無からしめ、而してその商に命じ、人をして自ら甲兵を給せしめ、軍興を視せしむ。又た軍市をして私かに糧を輸る者を得る無からしむれば、則ち姦謀は伏する所無し。糧を盜み輸る者は私かに稽らず。輕惰の民は軍市に游ばず、糧を盜む者は售る所無し。糧を送る者私かにせず、輕惰の民軍市に游ばざれば、則ち農民は淫せず、國粟は勞せず、則ち草必ず墾かれん。
現代語訳
軍の市場に女性を置かないようにし、そこの商人には命じて、兵士が自分で武具を用意できるようにさせ、軍の動きに応じて備えさせる。また軍の市場で穀物をひそかに運び込むことができないようにすれば、悪だくみが隠れる場所がなくなる。穀物を盗んで運ぶ者もひそかに滞留できない。軽薄で怠惰な民が軍の市場に遊びに来ず、穀物を盗む者は売りさばく先がない。穀物を運ぶ者が私腹を肥やさず、軽薄で怠惰な民が軍の市場に集まらなければ、農民は乱れず、国の穀物も無駄に費やされない。そうすれば荒地は必ず開墾される。
解説
軍の市場を管理する条である。着眼点は「姦謀は伏する所無し」——悪だくみが隠れられる場所を先に潰す、という発想にある。不正は動機があるだけでは起きず、隠れられる場所と、盗んだものを換金できる出口があってはじめて成立する。だから商君書は、動機を戒めるかわりに出口を閉じる。盗んだ穀物を売りさばく先がなければ、盗む意味がない。組織の不正対策も同じで、心構えを説くより、換金できる経路と人目の届かない場所を数え上げるほうが早い。
この章句が説くこと
軍市姦謀は伏する所無し不正の出口を閉じる隠れ場所
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