商君書 / 墾令
無得取庸、則大夫家長不建繕。愛子不惰食、惰民不窳、而庸民無所於食、是必農。大夫家長不建繕、則農事不傷。愛子不惰食、惰民不窳、則故田不荒。農事不傷、農民益農、則草必墾矣。
書き下し
庸を取ることを得る無くんば、則ち大夫家長は建繕せず。愛子は惰食せず、惰民は窳ならず、而して庸民は食する所無く、これ必ず農す。大夫家長建繕せざれば、則ち農事は傷つかず。愛子惰食せず、惰民窳ならざれば、則ち故田は荒れず。農事傷つかず、農民益々農せば、則ち草必ず墾かれん。
現代語訳
人を雇うことを認めなければ、大夫や家長は屋敷の造営や修繕をしなくなる。可愛がられている子は遊んで食べていられなくなり、怠け者はだらけていられなくなり、雇われて暮らしていた者は食べていく先を失って必ず農業をする。大夫や家長が造営をしなければ、農作業が妨げられない。可愛がられた子が遊び食いせず、怠け者がだらけなければ、もとの田は荒れない。農作業が妨げられず、農民がますます農業に励めば、荒地は必ず開墾される。
解説
労働の売買そのものを禁じる条である。狙いは二つ。貴族の屋敷普請に人手を取られて農繁期の労働力が抜けることを防ぐこと、そして「人に雇われて食う」という選択肢を消すことだ。商君書の徹底ぶりがよく出ている——雇用という中間の層をなくせば、人は全員が直接生産に向かうはずだという設計である。実際には分業を否定する暴論だが、裏返せば「間に立つ仕事が増えすぎると、直接つくる人が減る」という警告として読める。組織が大きくなるほど、調整だけをする人の比率は静かに上がっていく。
この章句が説くこと
庸を取ることを得る無し雇用の禁止分業への警戒間接部門
関連する章句
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『商君書』墾令商に糴ることを得る無く、農に糶ることを得る無からしむ。農に糶ることを得る無くんば、則ち窳惰の農も勉め疾む。商に糴ることを得る無くんば、則ち多歲にも樂しみを加えず、多歲に樂しみを加えざれば、則ち饑歲にも裕利無く、裕利無ければ則ち商は怯え、商怯うれば則ち農せんと欲す。窳惰の農勉め疾み、商農せんと欲さば、則ち草必ず墾かれん。
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『商君書』墾令商の口數を以て商を使い、これが廝輿徒重なる者をして必ず名に當らしむれば、則ち農は逸にして商は勞す。農逸なれば則ち良田は荒れず、商勞すれば則ち去來賷送の禮は百縣に通ずる無く、則ち農民は饑えず、行は飾らず。農民饑えず、行飾らざれば、則ち公作は必ず疾く、而して私作は荒れず、則ち農事は必ず勝る。農事必ず勝れば、則ち草必ず墾かれん。
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『商君書』墾令餘子の使令を均しく出し、世を以てこれを使い、又たその解舍を高くし、甬有らしめ、官食は槩にして、以て役を辟くべからず。而して大官は未だ必ずしも得べからざるなり、則ち餘子は游びて人に事えず。餘子游びて人に事えざれば、則ち必ず農す、農すれば則ち草必ず墾かれん。
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『商君書』墾令祿厚くして稅多く、食口眾き者は、農を敗る者なり。則ちその食口の數を以て、賦してこれを重く使わば、則ち辟淫游惰の民は食する所無し。食する所無ければ則ち必ず農す、農すれば則ち草必ず墾かれん。
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『商君書』墾令糧を送るに僦を取るを得る無く、反庸を得る無く、車牛輿重の設けは、必ず名に當らしむ。然らば則ち往くこと速やかに徠ること疾く、則ち業は農を敗らず。業農を敗らざれば、則ち草必ず墾かれん。
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『商君書』墾令外權を以て爵と官とを任ずる無くんば、則ち民は學問を貴ばず、又た農を賤しまず。民學を貴ばざれば則ち愚、愚なれば則ち外交無く、外交無ければ則ち農に勉めて偷まず。民農を賤しまざれば、則ち國は安くして殆うからず。國安くして殆うからず、農に勉めて偷まざれば、則ち草必ず墾かれん。