商君書 / 墾令
國之大臣諸大夫、博聞辨慧游居之事、皆無得為、無得居游於百縣、則農民無所聞變見方。農民無所聞變見方、則知農無從離其故事、而愚農不知、不好學問。愚農不知、不好學問、則務疾農。知農不離其故事、則草必墾矣。
新字:国之大臣諸大夫、博聞弁慧游居之事、皆無得為、無得居游於百県、則農民無所聞変見方。農民無所聞変見方、則知農無従離其故事、而愚農不知、不好学問。愚農不知、不好学問、則務疾農。知農不離其故事、則草必墾矣。
書き下し
國の大臣諸大夫、博聞辨慧游居の事、皆な為すを得る無く、百縣に居游するを得る無くんば、則ち農民は變を聞き方を見る所無し。農民變を聞き方を見る所無ければ、則ち知農はその故事を離るるに從う無く、而して愚農は知らず、學問を好まず。愚農知らず、學問を好まざれば、則ち務めて農に疾む。知農その故事を離れざれば、則ち草必ず墾かれん。
現代語訳
国の大臣や諸大夫が、博識をひけらかし弁舌をふるって各地を渡り歩くことを一切させず、地方の県々に滞在して遊説することも禁じれば、農民は新しい話を聞いたり別のやり方を目にしたりする機会がなくなる。農民が新しい話を聞かなければ、賢い農民も従来の仕事を離れる筋道がなくなり、愚かな農民は何も知らず、学問を好まない。愚かな農民が何も知らず学問を好まなければ、ひたすら農業に励む。賢い農民が従来の仕事を離れなければ、荒地は必ず開墾される。
解説
情報の遮断を明言した条である。農民が別のやり方を知ってしまうと、いまの仕事を離れる筋道ができてしまう——だから知らせない。ここには弁解の余地がなく、商君書がなぜ危険な書と呼ばれてきたかがそのまま出ている。薄めずに読むべき箇所だ。そのうえで、この条は経営者に鋭い問いを返してくる。自社の人が外の事例や他社のやり方を知らないままでいることを、本当は少し安心して眺めていないか。知らせないことで保っている定着は、この二千三百年前の統制と同じ構造をしている。
この章句が説くこと
百県に居游するを得る無し情報の遮断愚民策知らせない安心
関連する章句
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『商君書』墾令外權を以て爵と官とを任ずる無くんば、則ち民は學問を貴ばず、又た農を賤しまず。民學を貴ばざれば則ち愚、愚なれば則ち外交無く、外交無ければ則ち農に勉めて偷まず。民農を賤しまざれば、則ち國は安くして殆うからず。國安くして殆うからず、農に勉めて偷まざれば、則ち草必ず墾かれん。
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『商君書』墾令民をして擅に徙るを得る無からしむれば、則ち誅愚亂農の民は食する所無くして必ず農す。愚心躁欲の民意を壹にすれば、則ち農民は必ず靜かなり。農靜かに、誅愚亂農の民農せんと欲さば、則ち草必ず墾かれん。
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『商君書』墾令庸を取ることを得る無くんば、則ち大夫家長は建繕せず。愛子は惰食せず、惰民は窳ならず、而して庸民は食する所無く、これ必ず農す。大夫家長建繕せざれば、則ち農事は傷つかず。愛子惰食せず、惰民窳ならざれば、則ち故田は荒れず。農事傷つかず、農民益々農せば、則ち草必ず墾かれん。
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『商君書』墾令宿治無くんば、則ち邪官は民に私利を為すに及ばずして、百官の情は相い稽らず。百官の情相い稽らざれば、則ち農に餘日有り。邪官の民に私利を為すに及ばざれば、則ち農は敝れず。農敝れずして餘日有らば、則ち草必ず墾かれん。