商君書 / 墾令
廢逆旅、則姦偽躁心私交疑農之民不行。逆旅之民無所於食、則必農、農則草必墾矣。壹山澤、則惡農慢惰倍欲之民無所於食、無所於食則必農、農則草必墾矣。
新字:廃逆旅、則姦偽躁心私交疑農之民不行。逆旅之民無所於食、則必農、農則草必墾矣。壱山沢、則悪農慢惰倍欲之民無所於食、無所於食則必農、農則草必墾矣。
書き下し
逆旅を廢すれば、則ち姦偽躁心私交にして農を疑う民は行かず。逆旅の民は食する所無ければ、則ち必ず農す、農すれば則ち草必ず墾かれん。山澤を壹にすれば、則ち農を惡み慢惰にして欲に倍く民は食する所無し、食する所無ければ則ち必ず農す、農すれば則ち草必ず墾かれん。
現代語訳
宿屋を廃止すれば、悪だくみをする者、落ち着かない者、私的な交際にふける者、農業を疑う者は動き回れなくなる。宿屋で暮らしていた者は食べていく先を失うので必ず農業をする。農業をすれば荒地は必ず開墾される。山と沢を国が一手に管理すれば、農業を嫌い、なまけ、欲に背く民は食べていく先を失う。食べていく先を失えば必ず農業をする。農業をすれば荒地は必ず開墾される。
解説
宿屋を潰し、山と沢を国有にする。人が移動する足場と、農地の外で採って食える場所を、両方とも消す条である。商君書の施策は一貫して同じ形をしている——望ましくない行動を叱るのではなく、それを支えていた基盤を撤去する。ここまで来ると統制の域だが、設計の論理そのものは今も生きている。人の行動は説得ではなく、選べる選択肢の形で決まる。ある行動をやめさせたければ、注意するより先に、それを可能にしている足場を見つけることだ。
この章句が説くこと
逆旅を廃す山沢を壱にす選択肢の設計統制
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