新書 / 道術
對曰:「親愛利子謂之慈,反慈爲嚚。子愛利親謂之孝,反孝爲孽。愛利出中謂之忠,反忠爲倍。心省恤人謂之惠,反惠爲困;兄敬愛弟謂之友,反友爲𤼻。弟敬愛兄謂之悌,反悌爲敖。接遇慎容謂之恭,反恭爲媟。接遇肅正謂之敬,反敬爲嫚。言行抱一謂之貞,反貞爲僞。期果言當謂之信,反信爲慢。衷理不辟謂之端,反端爲趽。據當不傾謂之平,反平爲險。行善決菀謂之清,反清爲魰。辭利刻謙謂之廉,反廉爲貪。兼覆無私謂之公,反公爲私。方直不曲謂之正,反正爲邪。以人自觀謂之度,反度爲妄;以己量人謂之恕,反恕爲荒。惻隱憐人謂之慈,反慈爲忍。厚志隱行謂之潔,反潔爲汰。施行得理謂之德,反德爲怨。放理潔靜謂之行,反行爲污。功遂自卻謂之退,反退爲戟。厚人自薄謂之讓,反讓爲冒。
新字:対曰:「親愛利子謂之慈,反慈為嚚。子愛利親謂之孝,反孝為孽。愛利出中謂之忠,反忠為倍。心省恤人謂之恵,反恵為困;兄敬愛弟謂之友,反友為𤼻。弟敬愛兄謂之悌,反悌為敖。接遇慎容謂之恭,反恭為媟。接遇粛正謂之敬,反敬為嫚。言行抱一謂之貞,反貞為偽。期果言当謂之信,反信為慢。衷理不辟謂之端,反端為趽。拠当不傾謂之平,反平為険。行善決菀謂之清,反清為魰。辞利刻謙謂之廉,反廉為貪。兼覆無私謂之公,反公為私。方直不曲謂之正,反正為邪。以人自観謂之度,反度為妄;以己量人謂之恕,反恕為荒。惻隠憐人謂之慈,反慈為忍。厚志隠行謂之潔,反潔為汰。施行得理謂之徳,反徳為怨。放理潔静謂之行,反行為汚。功遂自却謂之退,反退為戟。厚人自薄謂之譲,反譲為冒。
書き下し
対えて曰く、「親愛利子は之を慈と謂い、慈に反するを嚚と為す。子愛利親は之を孝と謂い、孝に反するを孽と為す。愛利中より出づるを之を忠と謂い、忠に反するを倍と為す。心省み人を恤うるを之を恵と謂い、恵に反するを困と為す。兄の弟を敬愛するを之を友と謂い、友に反するを𤼻と為す。弟の兄を敬愛するを之を悌と謂い、悌に反するを敖と為す。接遇して容を慎むを之を恭と謂い、恭に反するを媟と為す。接遇して粛正なるを之を敬と謂い、敬に反するを嫚と為す。言行一を抱くを之を貞と謂い、貞に反するを偽と為す。期果たし言当たるを之を信と謂い、信に反するを慢と為す。衷理にして辟ならざるを之を端と謂い、端に反するを趽と為す。当に拠りて傾かざるを之を平と謂い、平に反するを険と為す。善を行い菀を決くを之を清と謂い、清に反するを魰と為す。辞利して謙を刻むを之を廉と謂い、廉に反するを貪と為す。兼ね覆いて私無きを之を公と謂い、公に反するを私と為す。方直にして曲がらざるを之を正と謂い、正に反するを邪と為す。人を以て自ら観るを之を度と謂い、度に反するを妄と為す。己を以て人を量るを之を恕と謂い、恕に反するを荒と為す。惻隠して人を憐れむを之を慈と謂い、慈に反するを忍と為す。志を厚くし行いを隠すを之を潔と謂い、潔に反するを汰と為す。施行理を得るを之を徳と謂い、徳に反するを怨と為す。理を放い潔く静かなるを之を行と謂い、行に反するを污と為す。功遂げて自ら却くを之を退と謂い、退に反するを戟と為す。人を厚くし自ら薄くするを之を譲と謂い、譲に反するを冒と為す。
現代語訳
答えて言いました。「親しみ愛して子に利することを慈といい、慈に反するものを嚚(愚かで頑ななこと)とします。子が親を愛して利することを孝といい、孝に反するものを孽(わざわい)とします。愛と利益が心の底から出るのを忠といい、忠に反するものを倍(背き)とします。心に省みて人を思いやるのを恵といい、恵に反するものを困とします。兄が弟を敬い愛するのを友といい、友に反するものを𤼻とします。弟が兄を敬い愛するのを悌といい、悌に反するものを敖(おごり)とします。人に接して姿を慎むのを恭といい、恭に反するものを媟(なれなれしさ)とします。人に接して厳粛で正しいのを敬といい、敬に反するものを嫚(あなどり)とします。言行が一つに抱かれているのを貞といい、貞に反するものを偽とします。約束を果たし言葉が当たるのを信といい、信に反するものを慢とします。真心が理にかなって偏らないのを端といい、端に反するものを趽とします。当を得て傾かないのを平といい、平に反するものを険とします。善を行って滞りを開くのを清といい、清に反するものを魰とします。辞退して利を捨て謙を重んじるのを廉といい、廉に反するものを貪とします。すべてを覆って私がないのを公といい、公に反するものを私とします。方正で曲がらないのを正といい、正に反するものを邪とします。人の立場で自分を見るのを度といい、度に反するものを妄とします。自分を物差しに人を量るのを恕といい、恕に反するものを荒とします。心を痛めて人を憐れむのを慈といい、慈に反するものを忍とします。志を厚くして行いを隠すのを潔といい、潔に反するものを汰とします。施しが理にかなうのを徳といい、徳に反するものを怨とします。道理に従い清く静かなのを行といい、行に反するものを污とします。功が成って自ら退くのを退といい、退に反するものを戟とします。人を厚く、自分を薄くするのを譲といい、譲に反するものを冒とします。
解説
この章句が説くこと
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『新書』道術心兼ねて人を愛するを之を仁と謂い、仁に反するを戾と為す。行いて其の宜しきに充つるを之を義と謂い、義に反するを懜と為す。剛柔道を得るを之を和と謂い、和に反するを乖と為す。合い得て密周なるを之を調と謂い、調に反するを盭と為す。賢の逮ばざるを優するを之を寛と謂い、寛に反するを阨と為す。衆を包み易を容るるを之を裕と謂い、裕に反するを褊と為す。欣𢣤して安んず可きを之を煴と謂い、煴に反するを鷙と為す。安柔にして苛ならざるを之を良と謂い、良に反するを齧と為す。法に縁り理に循うを之を軌と謂い、軌に反するを易と為す。当を襲い道に縁るを之を道と謂い、道に反するを辟と為す。広く較べて自ら斂むるを之を倹と謂い、倹に反するを侈と為す。費やすこと適に過ぎざるを之を節と謂い、節に反するを靡と為す。𣅺銀して善を勉むるを之を慎と謂い、慎に反するを怠と為す。忠悪にして道うこと勿きを之を戒と謂い、戒に反するを傲と為す。深く禍福を知るを之を知と謂い、知に反するを愚と為す。亟かに見て窕かに察するを之を慧と謂い、慧に反するを童と為す。動くに文体有るを之を礼と謂い、礼に反するを濫と為す。容服義有るを之を儀と謂い、儀に反するを詭と為す。行い帰して過ぎざるを之を順と謂い、順に反するを逆と為す。動静次を摂むるを之を比と謂い、比に反するを錯と為す。容志道を審らかにするを之を僩と謂い、僩に反するを野と為す。辞令得に就くを之を雅と謂い、雅に反するを陋と為す。物を論じて明辯なるを之を辯と謂い、辯に反するを訥と為す。纖微皆審らかなるを之を察と謂い、察に反するを旄と為す。
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『新書』道術言動畏る可きを之を威と謂い、威に反するを圂と為す。臨制して犯されざるを之を厳と謂い、厳に反するを𨌑と為す。仁義修立するを之を任と謂い、任に反するを欺と為す。義に伏し誠必なるを之を節と謂い、節に反するを罷と為す。節を持して恐れざるを之を勇と謂い、勇に反するを怯と為す。理を信じ惔を遂ぐるを之を敢と謂い、敢に反するを揜と為す。志操精果なるを之を誠と謂い、誠に反するを殆と為す。行いを克くし節を遂ぐるを之を必と謂い、必に反するを怚と為す。凡そ此れ品なり。善の体にして、所為の道なり」と。故に道を守る者は之を士と謂い、道を楽しむ者は之を君子と謂い、道を知る者は之を明と謂い、道を行う者は之を賢と謂い、且つ明に且つ賢なる、此れを聖人と謂う。
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『新書』道德說物の道とし始むる所、之を道と謂い、得て以て生ずる所、之を徳と謂う。徳の有するや、道を以て本と為す、故に曰く「道なる者は、徳の本なり」と。徳は物を生じ又物を養えば、則ち物は安利なり。物を安利にする者は、仁の行なり。仁の行は徳より出づ、故に曰く「仁なる者は、徳の出づるなり」と。徳は理を生じ、理立てば則ち宜有り、適う之を義と謂う。義なる者は、理なり、故に曰く「義なる者は、徳の理なり」と。徳は物を生じ、又之を養長して離れず、得て以て安利なり。徳の物に遇うや忠厚なり、故に曰く「忠なる者は、徳の厚きなり」と。徳の忠厚なるや、信固くして易わらず、此れ徳の常なり。故に曰く「信なる者は、徳の固きなり」と。徳は道より生じて理有り、理を守れば則ち道に合し、道と理と密にして離れず、故に能く物を畜い物を養う。物は仰ぎて徳を恃まざる莫し、此れ徳の高きなり、故に曰く「密なる者は、徳の高きなり」と。道して失う勿ければ、則ち道有り。得て之を守れば、則ち徳有り。行い休む無き有れば、則ち行成る。故に曰く「道此れ之を道と謂い、徳此れ之を徳と謂い、行此れ之を行と謂う」と。諸の此の言は、徳の変を尽くす。変なる者は、理なり。
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『新書』道術対えて曰く、「人主仁なれば境内和す。故に其の士民親しまざる莫し。人主義なれば境内理まる。故に其の士民順わざる莫し。人主礼有れば境内粛す。故に其の士民敬せざる莫し。人主信有れば境内貞し。故に其の士民信ぜざる莫し。人主公なれば境内服す。故に其の士民戴かざる莫し。人主法あれば境内軌る。故に其の士民輔けざる莫し。賢を挙ぐれば民善に化し、能を使えば官職治まる。英俊位に在れば主尊く、羽翼任に勝うれば民顕わる。徳を操りて固ければ威立ち、教え順にして必ずなれば令行わる。周く聴けば蔽われず、稽験すれば惶れず、好悪を明らかにすれば民心化し、事の端を密にすれば人主神なり。術とは、物に接するの隊なり。凡そ権の重き者は心を事に謹み、令の行わるる者は必ず言を謹めば、則ち過敗鮮し。此れ術の物に接するの道なり。其の原を為すこと屈する無く、其の変に応ずること極まり無し。故に聖人之を尊ぶ。夫れ道の詳しきは、述ぶるに勝う可からざるなり」と。曰く、「請う問う、善を品するの体は何如」と。
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『翁問答』上卷之本大槪を論ずるに、先五倫を以ていへば、親を愛敬するが感通の根本なる故に、本分の名号を改めず、孝行と名付て、扨それより感通の光景に因て、名を立て教を示し給ことなり、二心なく君を愛敬するを忠と名付く、礼儀正しく臣下を愛敬するを仁と名付く、能く教へて子を愛敬するを慈と名付く、和順にして兄を愛敬するを悌と名付く、善をせめて弟を愛敬するを恵と名付く、正しき節を守りて夫を愛敬するを順と名付く、朋友を愛敬するを信と名付く、一身を以て云へば耳目の聰明、四肢の恭重、行住座臥の法則、皆愛敬の感通なり、如此親切なる道徳なれば、如何なる愚痴不肖の賤男賤女、五六歳の幼童迄も、能く知り能く行ひ、扨大至極の全体は聖人と雖共つくし難き物なり、誠に不二の要道、無双の重宝なれ共卞和が璧となりて、世俗の闇を照さゞる事なげかわしき事なるべし。
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『太上感応篇』善行・是れ道なれば則ち進み、非道なれば則ち退く是れ道なれば則ち進み、道に非ざれば則ち退く。邪径を履まず、暗室を欺かず。徳を積み功を累ね、物に慈心あり。忠孝友悌、己を正して人を化す。
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