史記 / 亀策列伝
衛平乃援式而起,仰天而視月之光,觀斗所指,定日處鄉。規矩為輔,副以權衡。四維已定,八卦相望。視其吉凶,介蟲先見。乃對元王曰:「今昔壬子,宿在牽牛。河水大會,鬼神相謀。漢正南北,江河固期,南風新至,江使先來。白雲壅漢,萬物盡留。斗柄指日,使者當囚。玄服而乘輜車,其名為龜。王急使人問而求之。」王曰:「善。」於是王乃使人馳而往問泉陽令曰:「漁者幾何家?名誰為豫且?豫且得龜,見夢於王,王故使我求之。」泉陽令乃使吏案籍視圖,水上漁者五十五家,上流之廬,名為豫且。泉陽令曰:「諾。」乃與使者馳而問豫且曰:「今昔汝漁何得?」豫且曰:「夜半時舉網得龜。」使者曰:「今龜安在?」曰:「在籠中。」使者曰:「王知子得龜,故使我求之。」豫且曰:「諾。」即繋龜而出之籠中,獻使者。使者載行,出於泉陽之門。正晝無見,風雨晦冥。雲蓋其上,五采青黃;雷雨并起,風將而行。入於端門,見於東箱。身如流水,潤澤有光。望見元王,延頸而前,三步而止,縮頸而卻,復其故處。元王見而怪之,問衛平曰:「龜見寡人,延頸而前,以何望也?縮頸而復,是何當也?」衛平對曰:「龜在患中,而終昔囚,王有德義,使人活之。今延頸而前,以當謝也,縮頸而卻,欲亟去也。」元王曰:「善哉!
新字:衛平乃援式而起,仰天而視月之光,観斗所指,定日処郷。規矩為輔,副以権衡。四維已定,八卦相望。視其吉凶,介虫先見。乃対元王曰:「今昔壬子,宿在牽牛。河水大会,鬼神相謀。漢正南北,江河固期,南風新至,江使先来。白雲壅漢,万物尽留。斗柄指日,使者当囚。玄服而乗輜車,其名為亀。王急使人問而求之。」王曰:「善。」於是王乃使人馳而往問泉陽令曰:「漁者幾何家?名誰為予且?予且得亀,見夢於王,王故使我求之。」泉陽令乃使吏案籍視図,水上漁者五十五家,上流之廬,名為予且。泉陽令曰:「諾。」乃与使者馳而問予且曰:「今昔汝漁何得?」予且曰:「夜半時舉網得亀。」使者曰:「今亀安在?」曰:「在籠中。」使者曰:「王知子得亀,故使我求之。」予且曰:「諾。」即繋亀而出之籠中,献使者。使者載行,出於泉陽之門。正昼無見,風雨晦冥。雲蓋其上,五采青黄;雷雨并起,風将而行。入於端門,見於東箱。身如流水,潤沢有光。望見元王,延頸而前,三歩而止,縮頸而却,復其故処。元王見而怪之,問衛平曰:「亀見寡人,延頸而前,以何望也?縮頸而復,是何当也?」衛平対曰:「亀在患中,而終昔囚,王有徳義,使人活之。今延頸而前,以当謝也,縮頸而却,欲亟去也。」元王曰:「善哉!
書き下し
衛平乃ち式を援きて起ち、天を仰ぎて月の光を視、斗の指す所を観て、日を定め郷に処す。規矩を輔と為し、副ふるに権衡を以てす。四維已に定まり、八卦相望む。其の吉凶を視るに、介虫先づ見はる。乃ち元王に対へて曰く、「今昔は壬子、宿は牽牛に在り。河水大いに会し、鬼神相謀る。漢は南北に正しく、江河固より期す。南風新たに至り、江の使ひ先づ来たる。白雲漢を壅ぎ、万物尽く留まる。斗柄日を指し、使者当に囚はるべし。玄服にして輜車に乗る、其の名を亀と為す。王急ぎ人をして問ひて之を求めしめよ」と。王曰く、「善し」と。是に於いて王乃ち人をして馳せて往きて泉陽の令に問はしめて曰く、「漁者は幾何の家ぞ。名は誰か豫且為る。豫且亀を得て、夢に王に見ゆ。王故に我をして之を求めしむ」と。泉陽の令乃ち吏をして籍を案じ図を視しむるに、水上の漁者五十五家、上流の廬、名を豫且と為す。泉陽の令曰く、「諾」と。乃ち使者と馳せて豫且に問ひて曰く、「今昔、汝漁りて何をか得たる」と。豫且曰く、「夜半の時、網を挙げて亀を得たり」と。使者曰く、「今、亀安くにか在る」と。曰く、「籠の中に在り」と。使者曰く、「王、子の亀を得たるを知り、故に我をして之を求めしむ」と。豫且曰く、「諾」と。即ち亀を繋ぎて之を籠の中より出だし、使者に献ず。使者載せて行き、泉陽の門を出づ。正昼にして見る無く、風雨晦冥たり。雲其の上を蓋ひ、五采青黄。雷雨並び起こり、風将ゐて行く。端門に入り、東箱に見ゆ。身は流水の如く、潤沢にして光有り。元王を望み見て、頸を延ばして前み、三歩にして止まり、頸を縮めて却き、其の故の処に復す。元王見て之を怪しみ、衛平に問ひて曰く、「亀、寡人を見て、頸を延ばして前むは、何を以て望むや。頸を縮めて復するは、是れ何に当たるや」と。衛平対へて曰く、「亀は患ひの中に在りて、終昔囚はる。王に徳義有り、人をして之を活かさしむ。今、頸を延ばして前むは、以て謝に当たるなり。頸を縮めて却くは、亟やかに去らんと欲するなり」と。元王曰く、「善いかな。
現代語訳
衛平はそこで式盤を手に取って立ち上がり、天を仰いで月の光を見、北斗の柄の指す方向を観察して、日を定め方角を定めた。規(コンパス)と矩(さしがね)を補助とし、権衡(はかり)を添えた。四隅の方位が定まり、八卦が向かい合った。その吉凶を見ると、甲羅のある生き物(介虫)の兆しがまず現れた。そこで元王に答えて言った。「昨夜は壬子の日で、月は牽牛の宿にあった。黄河の水は大いに集まり、鬼神が互いに謀っていた。天の川は南北にまっすぐかかり、長江と黄河はもとより会う約束をしていた。南風が吹き始めたところで、長江の使者がまず来た。白い雲が天の川をふさぎ、万物はことごとくとどまった。北斗の柄は日を指しており、使者は捕らわれることになる。黒い衣を着て幌つきの車に乗っているのは、その名を亀という。王よ、急いで人をやって尋ね、探させよ」。王は「よろしい」と言った。そこで王は人を馬で走らせ、泉陽の県令に尋ねさせた。「漁師は何軒あるか。豫且という名の者は誰か。豫且が亀を捕らえ、その亀が王の夢に現れた。だから王は私を遣わして亀を探させたのだ」。泉陽の県令は役人に戸籍を調べ地図を見させたところ、川沿いの漁師は五十五軒で、上流の小屋の者が豫且という名であった。泉陽の県令は「承知した」と言い、使者とともに馬を走らせて豫且に尋ねた。「昨夜、おまえは漁で何を獲ったか」。豫且は言った。「夜中に網を上げたら亀が獲れた」。使者は言った。「その亀は今どこにいるか」。豫且は「籠の中にいる」と言った。使者は言った。「王はおまえが亀を獲ったことを知って、私に探させたのだ」。豫且は「承知した」と言った。そしてすぐに亀を縛って籠から出し、使者に献上した。使者は亀を車に載せて進み、泉陽の門を出た。真昼なのに何も見えず、風雨で真っ暗になった。雲がその上を覆い、五色に青や黄に輝いた。雷雨がともに起こり、風が車を導いて進んだ。宮殿の正門に入り、東の脇殿で元王に謁見した。亀の体は流れる水のようで、潤いつやがあって光っていた。亀は元王を遠くから見ると、首を伸ばして前に進み、三歩で止まり、首を縮めて後ずさりし、元の場所に戻った。元王はそれを見て不思議に思い、衛平に尋ねた。「亀は私を見て首を伸ばして前に進んだが、何を望んでいるのか。首を縮めて元に戻ったのは、どういう意味なのか」。衛平は答えた。「亀は災難の中にあって、一晩中捕らわれていた。王に徳と義があって、人をやって助け出してくださった。いま首を伸ばして前に出たのは、お礼を言ったのだ。首を縮めて後ずさりしたのは、早く立ち去りたいと思っているのだ」。元王は言った。「なるほど、もっともだ。
解説
関連する章句
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史記 亀策列伝之を白蛇の蟠る杅林の中に求むる者は、斎戒して以て待つ。譺然として、状人の来たりて之に告ぐる有るが如し。因りて醮酒を以て佗発し、之を求むること三宿にして得」と。是に由りて之を観れば、豈に偉ならずや。筆(けだ)し亀は敬はざる可けんや。南方の老人、亀を用ひて床の足を支ふ。行ふこと二十余歳、老人死して床を移すに、亀尚ほ生きて死せず。亀は能く気を行らし導引す。問ふ者曰く、「亀の至神此の若し。然るに太卜の官、生亀を得れば、何為れぞ輒ち殺して其の甲を取るや」と。近世、江上の人に名亀を得る有り。畜ひて之を置き、家因りて大いに富む。人と議し、遣り去らんと欲す。人教へて之を殺して遣る勿からしむ。之を遣れば人の家を破らんと。亀、夢に見えて曰く、「我を水中に送れ。吾を殺す無かれ」と。其の家終に之を殺す。之を殺して後、身死し、家利あらず。人民と君王とは道を異にす。人民名亀を得ば、其の状類ねて宜しく殺すべからず。往古の故事を以て之を言へば、古の明王聖主は皆殺して之を用ふ。宋の元王の時に亀を得、亦殺して之を用ふ。謹みて其の事を左方に連ね、好事の者をして其の中を観択せしむ。宋の元王二年、江、神亀をして河に使ひせしむ。泉陽に至り、漁者豫且、網を挙げて得て之を囚ふ。之を籠の中に置く。夜半、亀来たりて夢に宋の元王に見えて曰く、「我、江の為に河に使ひし、而して幕網吾が路に当たる。泉陽の豫且我を得て、我去る能はず。身は患ひの中に在り、告語す可き莫し。王に徳義有り、故に来たりて告訴す」と。元王惕然として悟る。乃ち博士衛平を召して之に問ひて曰く、「今、寡人夢に一丈夫を見る。頸を延ばして頭長く、玄繡の衣を衣て輜車に乗り、来たりて夢に寡人に見えて曰く、『我、江の為に河に使ひし、而して幕網吾が路に当たる。泉陽の豫且我を得て、我去る能はず。身は患ひの中に在り、告語す可き莫し。王に徳義有り、故に来たりて告訴す』と。是れ何物ぞや」と。
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史記 亀策列伝神此の如きに至るか。久しく留む可からず。駕を趣して亀を送り、期を失はしむる勿かれ」と。衛平対へて曰く、「亀は是れ天下の宝なり。先づ此の亀を得る者は天子と為り、且つ十言して十当たり、十戦して十勝つ。深淵に生まれ、黄土に長ず。天の道を知り、上古に明らかなり。游ぶこと三千歳、其の域を出でず。安平静正にして、動くに力を用ひず。寿は天地を蔽ひ、其の極を知る莫し。物と変化し、四時に色を変ず。居りて自ら匿れ、伏して食はず。春は倉(あを)く夏は黄に、秋は白く冬は黒し。陰陽に明らかにして、刑徳に審らかなり。先づ利害を知り、禍福を察す。以て言へば当たり、以て戦へば勝つ。王能く之を宝とせば、諸侯尽く服せん。王遣る勿かれ。以て社稷を安んぜよ」と。元王曰く、「亀は甚だ神霊にして、上天より降り、深淵に陥る。患難の中に在り、我を以て賢と為す。徳厚くして忠信、故に来たりて寡人に告ぐ。寡人若し遣らずんば、是れ漁者なり。漁者は其の肉を利とし、寡人は其の力を貪る。下は不仁と為り、上は無徳と為る。君臣礼無くんば、何に従りてか福有らん。寡人忍びず。奈何ぞ遣る勿からん」と。衛平対へて曰く、「然らず。臣聞く、盛徳は報いず、重寄は帰さず。天与ふるに受けずんば、天其の宝を奪ふと。今、亀は天下を周流し、還りて其の所に復し、上は蒼天に至り、下は泥塗に薄(せま)る。九州を還り遍くし、未だ嘗て愧辱せられず、稽留する所無し。今泉陽に至り、漁者辱めて之を囚ふ。王之を遣ると雖も、江河必ず怒り、務めて報仇を求めん。自ら以て侵さると為し、因りて神と謀らん。淫雨霽れず、水治む可からず。若しくは枯旱を為し、風ふきて埃を揚げ、蝗虫暴かに生じ、百姓時を失はん。王仁義を行ふも、其の罰必ず来たらん。此れ佗の故無し。其の祟りは亀に在り。後に之を悔ゆと雖も、豈に及ぶこと有らんや。王遣る勿かれ」と。
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史記 亀策列伝褚先生曰く、漁者網を挙げて神亀を得、亀自ら夢に宋の元王に見え、元王博士衛平を召して告ぐるに夢の亀の状を以てし、平式を運らし、日月を定め、衡度を分かち、吉凶を視、亀と物色の同じきを占ひ、平王を諫めて神亀を留めて以て国の重宝と為さしむ。美なり。古者、筮に必ず亀を称する者は、其の令名を以てなり。従りて来たる所久し。余述べて伝を為る。十一月、十二月、正月、二月、三月、中は関にして内高く外下る。四月、首仰ぎ足開き肣開き首俛して大。五月、横吉にして首俛して大。六月、七月、八月、九月、十月。卜の禁に曰く、子・亥・戌は以て卜し及び亀を殺す可からず。日中食已はるが如くして卜す。暮昏は亀の徼なり。以て卜す可からず。庚・辛は以て殺し、及び以て之を鉆る可し。常に月旦を以て亀を祓ふ。先づ清水を以て之を澡ひ、卵を以て之を祓ひ、乃ち亀を持して之を遂(めぐ)らし、常に以て祖と為すが若くす。人若し已に卜して中らずんば、皆之を祓ふに卵を以てす。東に向かひて立ち、灼くに荊若しくは剛木を以てし、土卵もて之を指すこと三たび、亀を持して卵を以て之を周環し、祝して曰く、「今日吉なり。謹みて粱・卵・焍黄を以て玉霊の不祥を祓ひ去る」と。玉霊必ず信にして以て誠なれば、万事の情を知り、兆を弁じて皆占ふ可し。信ならず誠ならずんば、則ち玉霊を焼き、其の灰を揚げ、以て後の亀を徴す。其の卜は必ず北に向かひ、亀甲は必ず尺二寸。卜は先づ造を以て灼鉆し、鉆中已はれば、又亀の首を灼くこと各々三たび。又復た鉆る所の中を灼くを正身と曰ひ、首を灼くを正足と曰ふ。各々三たび。即ち造を以て三たび亀を周り、祝して曰く、「之を玉霊夫子に仮る。夫子玉霊、荊もて而(なんぢ)の心を灼き、而をして先知せしむ。而は上は天に行き、下は淵に行く。諸霊の数、汝の信なるに如くは莫し。今日は良日なり。一良貞を行ふ。某、某を卜せんと欲す。即し得れば喜び、得ずんば悔ゆ。即し得ば、我に郷ひて身長大に発し、首足収まり人皆上偶せよ。
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史記 亀策列伝民は其の処に安んぜず、鬼神は享けず。飄風日々に起こり、正昼晦冥たり。日月並び蝕し、滅息して光無し。列星奔乱し、皆紀綱を絶つ。是を以て之を観れば、安くんぞ久長なるを得ん。湯武無しと雖も、時固より当に亡ぶべし。故に湯の桀を伐ち、武王の紂に剋つは、其の時然らしむるなり。乃ち天子と為り、子孫世を続ぐ。終身咎無く、後世之を称して、今に至るまで已まず。是れ皆時に当たりて行ひ、事を見て彊め、乃ち能く其の帝王を成す。今、亀は大宝なり。聖人の使ひと為り、之を賢王に伝ふ。手足を用ひず、雷電之を将ゐ、風雨之を送り、流水之を行らしむ。侯王徳有りて、乃ち之に当たるを得。今、王徳有りて此の宝に当たる。恐らくは敢へて受けざらん。王若し之を遣らば、宋必ず咎有らん。後に之を悔ゆと雖も、亦及ぶ無きのみ」と。元王大いに悦びて喜ぶ。是に於いて元王日に向かひて謝し、再拝して受く。日を択びて斎戒す。甲乙最も良し。乃ち白雉及び驪羊を刑し、血を以て亀に灌ぐ、壇の中央に於いて。刀を以て之を剥ぐに、身全くして傷つかず。脯酒もて之を礼し、其の腹腸を横たふ。荊支もて之を卜し、必ず其の創を制す。理は理に達し、文相錯迎す。工をして之を占はしむるに、言ふ所尽く当たる。邦の福の重宝、傍郷に聞こゆ。牛を殺して帮(かは)を取り、鄭の桐に被る。草木畢く分かれ、化して甲兵と為る。戦ひて勝ち攻めて取ること、元王に如くは莫し。元王の時、衛平宋に相たり、宋国最も彊し。亀の力なり。
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荘子・外物宋の元君夜半にして人の髪を被(こうむ)りて阿門(あもん)を闚(うかが)うを夢む。曰く、「予は宰路(さいろ)の淵より、予は清江の為に河伯の所に使いす。漁者の余且(よしょ)予を得たり」と。元君覚め、人をして之を占わしむ。曰く、「此れ神亀なり」と。君曰く、「漁者に余且なる者有るか」と。左右曰く、「有り」と。君曰く、「余且をして朝に会せしめよ」と。明日、余且朝す。君曰く、「漁して何をか得たる」と。対えて曰く、「且の網、白亀を焉(そこ)に得たり。其の円(まわ)り五尺なり」と。君曰く、「若(なんじ)の亀を献ぜよ」と。亀至る。君は再び之を殺さんと欲し、再び之を活かさんと欲す。心疑いて、之を卜す。曰く、「亀を殺して以て卜すれば、吉なり」と。乃ち亀を刳(さ)き、七十二鑽(さん)して遺筴(いさく)無し。
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史記 亀策列伝王以て然らずと為さば、王独り玉櫝隻雉の昆山に出で、明月の珠の四海に出づるを聞かずや。石を鐫り蚌を拌(さ)き、伝へて市に売る。聖人之を得て、以て大宝と為す。大宝の在る所、乃ち天子と為る。今、王自ら以て暴と為すも、蚌を海に拌くに如かず。自ら以て彊と為すも、石を昆山に鐫るに過ぎず。取る者は咎無く、宝とする者は患ひ無し。今、亀使ひして来たり網に抵り、而して漁者に遭ひて之を得らる。夢に見えて自ら言ふ。是れ国の宝なり。王何ぞ憂へん」と。元王曰く、「然らず。寡人之を聞く、諫むる者は福なり、諛ふ者は賊なりと。人主諛ひを聴くは、是れ愚惑なり。然りと雖も、禍は妄りに至らず、福は徒らに来たらず。天地気を合はせて、以て百財を生ず。陰陽に分有り、四時を離れず。十有二月、日至を期と為す。聖人焉に徹し、身乃ち災ひ無し。明王之を用ひ、人敢へて欺く莫し。故に云ふ、福の至るや、人自ら之を生じ、禍の至るや、人自ら之を成すと。禍と福と同じく、刑と徳と双ぶ。聖人之を察し、以て吉凶を知る。桀紂の時、天と功を争ひ、鬼神を擁遏し、通ずるを得ざらしむ。是れ固より已に無道なり。諛臣衆き有り。桀に諛臣有り、名を趙梁と曰ふ。教へて無道を為さしめ、勧むるに貪狼を以てす。湯を夏台に繋ぎ、関龍逢を殺す。左右死を恐れ、傍らに偸諛す。国は累卵より危ふきに、皆傷む無しと曰ふ。楽を称して万歳と言ひ、或いは未央と曰ふ。其の耳目を蔽ひ、之と詐狂す。湯卒に桀を伐ち、身死し国亡ぶ。其の諛臣に聴き、身独り殃ひを受く。春秋之を著し、今に至るまで忘れず。紂に諛臣有り、名を左彊と為す。誇りて目巧み、教へて象郎を為らしむ。将に天に至らんとし、又玉床有り。犀玉の器、象箸にして羹す。聖人其の心を剖かれ、壮士其の胻を斬らる。箕子死を恐れ、髪を被りて佯り狂ふ。周の太子歴を殺し、文王昌を囚ふ。之を石室に投じ、将に昔(よる)より明に至らんとす。陰兢之を活かし、之と俱に亡ぐ。
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