史記 / 亀策列伝
百僚蕩恐,皆曰龜策能言。后事覺姦窮,亦誅三族。夫摓策定數,灼龜觀兆,變化無窮,是以擇賢而用占焉,可謂聖人重事者乎!周公卜三龜,而武王有瘳。紂為暴虐,而元龜不占。晉文將定襄王之位,卜得黃帝之兆,卒受彤弓之命。獻公貪驪姬之色,卜而兆有口象,其禍竟流五世。楚靈將背周室,卜而龜逆,終被乾谿之敗。兆應信誠於內,而時人明察見之於外,可不謂兩合者哉!
新字:百僚蕩恐,皆曰亀策能言。后事覚姦窮,亦誅三族。夫摓策定数,灼亀観兆,変化無窮,是以択賢而用占焉,可謂聖人重事者乎!周公卜三亀,而武王有瘳。紂為暴虐,而元亀不占。晋文将定襄王之位,卜得黄帝之兆,卒受彤弓之命。献公貪驪姫之色,卜而兆有口象,其禍竟流五世。楚霊将背周室,卜而亀逆,終被乾谿之敗。兆応信誠於内,而時人明察見之於外,可不謂両合者哉!
書き下し
百僚蕩恐し、皆亀策能く言ふと曰ふ。後に事覚れ姦窮まり、亦三族を誅せらる。夫れ策を摓(かぞ)へ数を定め、亀を灼きて兆を観るに、変化窮まり無し。是を以て賢を択びて占を用ふ。聖人の事を重んずる者と謂ふ可きか。周公三亀を卜して、武王瘳ゆる有り。紂暴虐を為して、元亀占はず。晋の文、将に襄王の位を定めんとして、卜して黄帝の兆を得、卒に彤弓の命を受く。献公驪姫の色を貪り、卜して兆に口象有り、其の禍竟に五世に流る。楚の霊、将に周室に背かんとし、卜して亀逆らひ、終に乾谿の敗を被る。兆応は内に信誠にして、時人の明察は之を外に見る。両合する者と謂はざる可けんや。
現代語訳
役人たちはみな震え上がり、亀策はものを言うのだと言い合った。のちに事が露見して悪事が明らかになると、その者たちもまた三族を誅殺された。そもそも筮竹を数えて数を定め、亀甲を焼いてひびの兆しを見ると、その変化は窮まりがない。だから賢い者を選んで占いを行わせる。これは聖人が事を重んじたものと言えるであろう。周公が三つの亀で占うと、武王の病が癒えた。紂が暴虐を働くと、大亀は占いに応じなかった。晋の文公が周の襄王の位を安定させようとしたとき、占って黄帝の兆しを得て、ついに彤弓(赤い弓、覇者のしるし)を賜る命を受けた。献公は驪姫(りき)の美しさに心を奪われ、占うと兆しに口の象(讒言のしるし)が現れ、その禍はとうとう五代にわたって続いた。楚の霊王が周室に背こうとしたとき、占うと亀が逆らう兆しを示し、ついに乾谿(かんけい)での敗北をこうむった。兆しの応えは内において誠実であり、当時の人々の明察はそれを外に見て取った。両者が合致したものと言えないであろうか。
解説
関連する章句
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史記 亀策列伝蛮夷氐羌は君臣の序無しと雖も、亦疑ひを決するの卜有り。或いは金石を以てし、或いは草木を以てし、国俗を同じくせず。然れども皆以て戦伐攻撃し、兵を推して勝ちを求むる可く、各々其の神を信じて、以て来事を知る。略々聞く、夏殷の卜せんと欲する者は、乃ち蓍亀を取り、已めば則ち之を棄て去る。以為へらく、亀は蔵すれば則ち霊ならず、蓍は久しければ則ち神ならずと。周室の卜官に至りては、常に蓍亀を宝蔵す。又其の大小先後、各々尚ぶ所有るも、其の帰を要すれば等しきのみ。或いは以為へらく、聖王事に遭ひて定めざる無く、疑ひを決して見ざる無し。其の稽神求問の道を設くる者は、以為へらく、後世衰微し、愚は智を師とせず、人各々自ら安んじ、化分かれて百室と為り、道散じて垠無し。故に之を至微に推し帰し、精神に要絜するなりと。或いは以為へらく、昆虫の長ずる所は、聖人も与に争ふ能はず。其の吉凶に処し、然否を別つこと、多く人に中ると。高祖の時に至り、秦の太卜の官に因る。天下始めて定まり、兵革未だ息まず。孝恵の国を享くること日少なく、呂后は女主、孝文・孝景は掌故に因襲し、未だ講試するに遑あらず。父子官を疇(つ)ぎ、世々相伝ふと雖も、其の精微深妙は、遺失する所多し。今上即位するに至り、博く芸能の路を開き、悉く百端の学を延き、一伎に通ずるの士も咸自ら効すを得。絶倫超奇なる者を右と為し、阿私する所無し。数年の間に、太卜大いに集まる。会々上、匈奴を撃ち、西のかた大宛を攘ひ、南のかた百越を収めんと欲す。卜筮至りて預め表象を見、先づ其の利を図る。猛将の鋒を推し節を執り、勝ちを彼に獲るに及び、而して蓍亀時日も亦此に力有り。上尤も意を加へ、賞賜或いは数千万に至る。丘子明の属の如きは、富溢れ貴寵ありて、朝廷を傾く。卜筮を以て蠱道を射るに至り、巫蠱時に或いは頗る中る。素より眥睚の快からざる有れば、公に因りて誅を行ひ、意を恣にして傷つくる所、以て族を破り門を滅ぼす者、勝げて数ふ可からず。
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史記 亀策列伝太史公曰く、古より聖王将に国を建て命を受け、事業を興動せんとするに、何ぞ嘗て卜筮を宝として以て善を助けざらんや。唐虞より以上は、記す可からざるのみ。三代の興りしより、各々禎祥に拠る。塗山の兆従ひて夏の啓世々(よよ)し、飛燕の卜順にして故に殷興り、百穀の筮吉にして故に周王たり。王者諸々の疑ひを決定するに、参ふるに卜筮を以てし、断ずるに蓍亀を以てす。易へざるの道なり。
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史記 亀策列伝余、江南に至り、其の行事を観、其の長老に問ふに、云ふ、亀は千歳にして乃ち蓮葉の上に遊び、蓍は百茎にして一根を共にすと。又其の生ずる所は、獣に虎狼無く、草に毒螫無し。江の傍らの家人常に亀を畜ひて之に飲食せしめ、以為へらく、能く導引し気を致し、衰へを助け老いを養ふに益有りと。豈に信ならずや。褚先生曰く、臣、経術に通ずるを以て、業を博士に受け、春秋を治め、高第を以て郎と為り、幸ひに宿衛するを得て、宮殿の中に出入すること十有余年。窃かに太史公の伝を好む。太史公の伝に曰く、「三王亀を同じくせず、四夷各々卜を異にす。然れども各々以て吉凶を決す。略々其の要を闚ひ、故に亀策列伝を作る」と。臣、長安の中を往来し、亀策列伝を求むれども得る能はず。故に大卜の官に之き、掌故・文学・長老の事に習ふ者に問ひ、亀策卜事を写し取り、下方に編む。聞く、古の五帝・三王、発動し事を挙ぐるに、必ず先づ蓍亀に決すと。伝に曰く、「下に伏霊有れば、上に兎糸有り。上に擣蓍有れば、下に神亀有り」と。所謂伏霊なる者は、兎糸の下に在り、状は飛鳥の形に似たり。新雨已み、天清静にして風無きに、夜を以て兎糸を捎(はら)ひて之を去り、既に篝を以て此の地を燭して之を燭し、火滅すれば、即ち其の処を記し、新布四丈を以て環らして之を置き、明くれば即ち掘りて之を取る。入ること四尺より七尺に至りて得。七尺を過ぐれば得可からず。伏霊なる者は、千歳の松根なり。之を食へば死せず。聞く、蓍の生じて百茎に満つる者は、其の下に必ず神亀有りて之を守り、其の上に常に青雲有りて之を覆ふと。伝に曰く、「天下和平にして王道得らるれば、蓍茎長さ丈、其の叢生百茎に満つ」と。方今世の蓍を取る者は、古の法度に中る能はず、百茎に満ち長さ丈なる者を得る能はず。八十茎已上、蓍の長さ八尺を取るも、即ち得難きなり。人民の好んで卦を用ふる者は、六十茎已上、長さ六尺に満つる者を取れば、既に用ふ可し。
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史記 亀策列伝得ずんば、我に郷ひて身挫折し、中外相応ぜず、首足滅し去れ」と。霊亀の卜の祝に曰く、「之を霊亀に仮る。五巫五霊も、神亀の霊の、人の死を知り、人の生を知るに如かず。某身は良貞なり。某、某物を求めんと欲す。即し得んとするや、頭見はれ足発し、内外相応ぜよ。即し得ざらんとするや、頭仰ぎ足肣まり、内外自ら垂れよ。占ひを得可し」と。病者を卜占する祝に曰く、「今、某病みて困しむ。死せんには、首上に開き、内外交々駭き、身節折れよ。死せずんば、首仰ぎ足肣まれ」と。病者の祟りを卜して曰く、「今、病に祟り有らば呈無く、祟り無くんば呈有れ。兆に中の祟り有らば内有り、外の祟りには外有れ」と。繋がるる者の出づると出でざるとを卜す。出でずんば、横吉にして安し。若し出でんには、足開き首仰ぎて外有り。財物を求め、其の当に得べき所を卜す。得んには、首仰ぎ足開き、内外相応ず。即し得ずんば、呈兆にして首仰ぎ足肣まる。臣妾・馬牛を売り若しくは買ふこと有るを卜す。之を得んには、首仰ぎ足開き、内外相応ず。得ずんば、首仰ぎ足肣まり、呈兆若しくは横吉にして安し。盗聚若干人の、某所に在るを撃たんとし、今某卒若干人を将ゐて往きて之を撃たんとするを卜す。当に勝つべくんば、首仰ぎ足開き身正しく、内自ら橋(あが)り、外下る。勝たずんば、足肣まり首仰ぎ、身首内下り外高し。当に行くべきか行かざるかを求むるを卜す。行かんには、首足開く。行かずんば、足肣まり首仰ぎ、若しくは横吉にして安し。安ければ行かず。往きて盗を撃つに、当に見るべきか見ざるかを卜す。見んには、首仰ぎ足肣まりて外有り。見ずんば、足開き首仰ぐ。往きて盗を候ひ、見るか見ざるかを卜す。見んには、首仰ぎ足肣まり、肣まりて勝ちて外有り。見ずんば、足開き首仰ぐ。盗の来たると聞き、来たるか来たらざるかを卜す。来たらんには、外高く内下り、足肣まり首仰ぐ。来たらずんば、足開き首仰ぎ、若しくは横吉にして安し。之を期すること自ら次ぐ。遷徙し官を去るか去らざるかを卜す。去らんには、足開き肣有りて外首仰ぐ。去らずんば、自ら去るも、即ち足肣まり、呈兆若しくは横吉にして安し。官に居りて尚ほ吉なるか否かを卜す。吉ならば、呈兆にして身正しく、若しくは横吉にして安し。吉ならずんば、身節折れ、首仰ぎ足開く。
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史記 亀策列伝君子謂ふ、夫れ卜筮を軽んじ、神明を無みする者は、悖なり。人道に背きて、禎祥を信ずる者は、鬼神も其の正を得ず。故に書に稽疑を建つ、五謀にして卜筮其の二に居り、五占其の多きに従ふ、明らかに有りて専らにせざるの道なり。
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史記 亀策列伝盗の来たるを聞けば来たる。官を徙し官に居り家室に居るは吉ならず。歳は悪し。民の疾疫は死無し。歳中兵毋し。貴人に見ゆるは吉ならず。行きて盗に遇はず。雨ふらんとして雨ふらず。霽る。吉ならず。命じて呈兆首仰足開外高内下と曰ふ。以て病を占ふに、死せず、外の祟り有り。繋がるる者は出づれども、憂ひ有り。財物を求め臣妾・馬牛を買ふは、相見れども会はず。行くは行く。来たるは言を聞きて来たらず。盗を撃てば勝つ。盗の来たるを聞くも来たらず。官を徙し官に居り家室に居り貴人に見ゆるは吉ならず。歳は中なり。民は疾疫し兵有り。請謁し亡人を追ひ漁猟するは得ず。盗を聞けば盗に遇ふ。雨ふらんとして雨ふらず。霽る。凶なり。命じて首仰足肣身折内外相応と曰ふ。以て病を占ふに、病甚だしけれども死せず。繋がるる者は久しくして出でず。財物を求め臣妾・馬牛を買ひ漁猟するは得ず。行くは行かず。来たるは来たらず。盗を撃つは用ふる有りて勝つ。盗の来たるを聞けば来たる。官を徙すも徙さず。官に居り家室に居るは吉ならず。歳は孰せず。民は疾疫す。歳中なり。兵有れども至らず。貴人に見ゆるは喜ぶ。請謁し亡人を追ふは得ず。盗に遇ふは凶なり。命じて内格外垂と曰ふ。行く者は行かず。来たる者は来たらず。病者は死す。繋がるる者は出でず。財物を求むるは得ず。人に見えんとするも見えず。大吉なり。命じて横吉内外相応自橋楡仰上柱足肣と曰ふ。以て病を占ふに、病甚だしけれども死せず。繋がること久しけれども、罪に抵らず。財物を求め臣妾・馬牛を買ひ請謁し亡人を追ひ漁猟するは得ず。行くは行かず。来たるは来たらず。官に居り家室に居り貴人に見ゆるは吉。官を徙すも徙さず。歳は大いには孰せず。民は疾疫し兵有り。兵有れども会はず。行きて盗に遇ふ。言を聞くも見ず。雨ふらんとして雨ふらず。霽れんとして霽る。大吉なり。命じて頭仰足肣内外自垂と曰ふ。憂病を卜するに、甚だしけれども死せず。官に居るは居るを得ず。行く者は行く。来たる者は来たらず。財物を求むるは得ず。人を求むるは得ず。吉なり。命じて横吉下有柱と曰ふ。来たる者を卜するに来たる。卜日に即し至らずんば、未だ来たらず。
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