司馬法 / 用眾
擊其疑;加其卒;致其屈;襲其規;因其不避;阻其圖;奪其慮;乘其懼。凡從奔,勿息。敵人或止不路,則慮之。凡近敵都必有進路,退,必有返慮。
新字:撃其疑;加其卒;致其屈;襲其規;因其不避;阻其図;奪其慮;乗其懼。凡従奔,勿息。敵人或止不路,則慮之。凡近敵都必有進路,退,必有返慮。
書き下し
其の疑うを撃ち、其の卒(にわか)なるに加え、其の屈するを致し、其の規を襲い、其の避けざるに因り、其の図を阻み、其の慮を奪い、其の懼るるに乗ず。凡そ奔るを従(お)うには、息むこと勿かれ。敵人或いは止まりて路せざれば、則ち之を慮れ。凡そ敵の都に近づけば必ず進む路有り、退くには、必ず返る慮有り。
現代語訳
(敵の様子を観察したうえで)敵が迷っているところを撃ち、敵が慌てているところに攻めかかり、敵を追い詰めて屈服させ、敵の計画の裏をかいて襲い、敵が避けようとしないところにつけこみ、敵の企てを阻み、敵の思慮を奪い、敵がおびえているところにつけこむ。およそ逃げる敵を追うときは、休んではならない。敵がもし立ち止まって道を進まないなら、(伏兵などを)警戒せよ。およそ敵の都に近づくときは、必ず進む道を確保し、退くときは、必ず引き返す方策を用意しておく。
解説
前の節で敵の様子を試し観察したうえで、どこを撃つかを並べる一節である。迷い、慌て、屈し、計画を立てている所、避けようとしない所、企てを抱く所、思慮、恐れと、敵の心の隙を次々に挙げている。司馬法は仁本篇で深追いを戒めたが、ここでは逃げる敵を追うなら休むなと言い、ただし敵が急に止まったら罠を疑えと付け加える。追撃そのものを否定するのではなく、追うなら一気に、しかし用心深く、ということである。さらに敵の都に近づくときは進む道と退く方策を必ず用意せよと説く。攻めるときほど退路を考えておくのは、孫子にも通じる兵法の基本である。仕事で大きな勝負に出るときも、勢いに乗りつつ撤退の条件と手順を先に決めておけば、思わぬ落とし穴にはまっても立て直せる。
関連する章句
-
司馬法・用眾凡そ戦いの道は、寡を用うるには固く、衆を用うるには治む。寡は煩に利あり、衆は正に利あり。衆を用うるには進止し、寡を用うるには進退す。衆以て寡に合えば、則ち遠く裹(つつ)みて之を闕(か)く。若し分かれて迭(たが)いに撃てば、寡以て衆を待つ。若し衆之を疑わば、則ち自ら之を用う。利を擅(ほしいまま)にせば、則ち旗を釈(す)て、迎えて之を反す。敵若し衆ければ則ち相聚まりて裹みを受く。敵若し寡く、若し畏るれば、則ち之を避けて之を開く。凡そ戦いは、風を背にし、高きを背にし、高きを右にし、険を左にし、沛(はい)を歴、圯(い)を歴、兼ねて舎(やど)るに亀を環らす。凡そ戦いは、設けて其の作(おこ)るを観、敵を視て挙ぐ。待つには則ち循いて鼓すること勿く、衆の作るを待つ。攻むるには則ち屯して之を伺う。凡そ戦いは、衆寡以て其の変を観、進退以て其の固きを観、
-
司馬法・用眾凡そ戦いは、先んずれば則ち弊(つか)れ、後るれば則ち懾(おそ)れ、息(いこ)えば則ち怠り、息わざるも亦弊れ、息うこと久しきも亦其の懾に反る。
-
司馬法・用眾危うくして其の懼るるを観、静かにして其の怠るを観、動きて其の疑うを観、襲いて其の治まるを観る。
-
司馬法・嚴位凡そ戦いは、其の微静を撃ち、其の強静を避く。其の倦労を撃ち、其の閑窕を避く。其の大懼を撃ち、其の小懼を避く。
-
司馬法・嚴位凡そ戦いの道は、道義を等しくし、卒伍を立て、行列を定め、縦横を正し、名実を察す。立ちて進むには俯し、坐して進むには跪く。畏るれば則ち密にし、危うければ則ち坐す。遠き者は之を視れば則ち畏れず、邇(ちか)き者は視ること勿ければ則ち散ぜず。位下れば、左右下り、甲坐し、誓いて徐(おもむろ)に之を行う。位は徒甲に逮(およ)び、籌(はか)るに軽重を以てし、馬を振るい徒甲を譟(さわ)がしめ、畏るれば亦た之を密にす。跪坐坐伏すれば、則ち膝行して寛(ゆる)やかに之に誓う。起ちて譟ぎ鼓して進めば、則ち鐸を以て之を止む。枚を御(ふく)み糗(きゅう)を誓い、坐して膝行して之を推し、戮を執りて顧みるを禁じ、譟ぎて以て之に先んず。若し畏るること太甚しければ、則ち戮殺すること勿く、示すに顔色を以てし、之に告ぐるに生くる所を以てし、其の職を循(めぐ)り省みよ。凡そ三軍、人戒むること分日、人禁ずること息(や)まざれば、以て食を分かつべからず、其の疑惑に方(あた)りては、師とすべく服せしむべし。凡そ戦いは、力を以て久しく、気を以て勝つ。固きを以て久しく、危うきを以て勝つ。本心固く、新気勝ち、甲を以て固く、兵を以て勝つ。凡そ車は密なるを以て固く、徒は坐するを以て固く、甲は重きを以て固く、兵は軽きを以て勝つ。
-
司馬法・嚴位両心交々定まり、両利一の若く、両ながら之が職を為し、惟だ権もて之を視る。凡そ戦いは、軽を以て軽を行えば則ち危うし。重を以て重を行えば則ち功無し。軽を以て重を行えば則ち敗る。重を以て軽を行えば則ち戦う。故に戦いは相軽重を為す。舎には甲兵を謹み、行には陣して行列し、戦いには進止を謹む。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る