説苑 / 雜言
孔子曰:「鞭扑之子,不從父之教;刑戮之民,不從君之政,言疾之難行。故君子不急斷,不意使,以為亂源。」
新字:孔子曰:「鞭扑之子,不従父之教;刑戮之民,不従君之政,言疾之難行。故君子不急断,不意使,以為乱源。」
書き下し
孔子曰く、「鞭扑の子は、父の教えに従わず。刑戮の民は、君の政に従わず。言疾くして行い難きなり。故に君子は急に断ぜず、意もて使わず、以て乱の源と為す」と。
現代語訳
孔子は言った。「むち打たれ続けた子は、父親の教えに従わなくなる。刑罰を受け続けた民は、君主の政治に従わなくなる。それは、命令が性急すぎて実行が難しくなるからである。だから君子は、性急に事を断じたり、自分の思いつきだけで人を使ったりしない。それをすれば混乱の原因となるからである」と。
解説
体罰や刑罰の乱用が、かえって従わせようとしていた相手を離反させてしまうという逆説は、力による支配の限界を鋭く突く。現代の職場や家庭においても、性急な叱責や一方的な命令を重ねるほど、部下や子どもの心が離れ、かえって指示が通らなくなるという現象は頻繁に見られる。この章が説くのは、人を動かそうとするときほど性急さや独断を戒め、相手が納得し従いうる道理と手順を踏むことこそが、結果的に混乱を防ぎ長期的な統率を可能にするという教訓である。
この章句が説くこと
性急さの弊害独断統率
関連する章句
-
孔子家語・六本孔子曰わく、「中人の情や、余り有れば則ち侈り、足らざれば則ち倹あり、禁むる無ければ則ち淫し、度無ければ則ち逸し、欲に従えば則ち敗る。是の故に鞭樸の子は、父の教えに従わず。刑戮の民は、君の令に従わず。此れ疾を忍び難く、急を行い難きを言うなり。故に君子は急に断ぜず、急に制せず、飲食をして量有らしめ、衣服をして節有らしめ、宮室をして度有らしめ、畜積をして数有らしめ、車器をして限有らしむ。乱の原を防ぐ所以なり。夫れ度量明らかにす可からざるは、是れ中人の由りて令する所なり。」
-
説苑・雜言孔子曰く、「船は水に非ざれば行く可からず、水船中に入れば、則ち其れ没す。故に曰く、君子は厳ならざる可からざるなり、小人は閉ざさざる可からざるなり」と。
-
説苑・雜言天下道を失いて、而る後に仁義生ず。国家治まらずして、而る後に孝子生ず。民争いて分かれずして、而る後に慈恵生ず。道逆さまに時反して、而る後に権謀生ず。凡そ善の生ずるや、皆学の由る所なり。一室の中、必ず主道有り、父母の謂いなり。故に君正しければ則ち百姓治まり、父母正しければ則ち子孫孝慈なり。是を以て孔子の家児は罵ることを知らず、曾子の家児は怒ることを知らず。然る所以の者は、生まれながらにして善く教うればなり。夫れ仁者は人を合するを好み、不仁者は人を離すを好む。故に君子人間に居れば則ち治まり、小人人間に居れば則ち乱る。君子人を和せんと欲するは、譬うれば猶お水火の相能く然らざるがごときも、而も鼎其の間に在れば、水火乱れずして、乃ち百味を和す。是を以て君子は其の間に人を択ぶを慎まざる可からず。
-
説苑・政理魯に父子訟うる者有り。康子曰く、「之を殺せ。」孔子曰く、「未だ殺すべからざるなり。夫れ民、子父の訟うるの不善なるを知らざること久し。是れ則ち上の過ちなり。上に道有らば、是の人亡からん。」康子曰く、「夫れ民を治むるに孝を以て本と為す。今一人を殺して以て不孝を戮せば、亦た可ならずや。」孔子曰く、「不孝にして之を誅せば、是れ辜無きを虐殺するなり。三軍大敗すとも誅すべからず、獄訟治まらずとも刑すべからず。上、之が教を陳べて先ず之に服せば、則ち百姓風に從わん。躬ら行いて從わずして后に之を俟つに刑を以てせば、則ち民罪を知らん。夫れ一仞の牆、民踰ゆる能わず、百仞の山、童子升りて遊ぶは、陵遲なるが故なり。今是れ仁義の陵遲すること久し。能く民の踰えざるを謂わんや。詩に曰く、『民をして迷わざらしめよ』と。昔者、君子は其の百姓を導きて迷わざらしむ。是を以て威厲しくして至らず、刑錯きて用いず。」是に於て訟うる者之を聞き、乃ち訟うる無きを請う。
-
『塩鉄論』疾貪篇賢良曰く、駟馬馴れざるは、禦者の過ちなり。百姓治まらざるは、有司の罪なり。春秋の刺譏の庶人に及ばざるは、其の率を責むればなり。故に古者、大夫の將に刑に臨まんとするや、聲色を禦せず、刑以て當たれるも、猶お三たび巡りて之を嗟嘆す。其の化する能わざるを恥じて其の全からざるを傷むなり。政教闇くして著れず、百姓顛蹶して扶けざるは、猶お赤子の井に臨むがごとくにして、其の入るに聽すなり。此くの若くんば、則ち何を以て民の父母と為さんや。故に君子は教に急にして、刑に緩なり。一を刑して百を正し、一を殺して萬を慎ましむ。是を以て周公は管・蔡を誅し、而して子產は鄧皙を誅せしなり。刑誅一たび施されて、民は禮義に遵う。夫れ上の下を化するは、風の草を靡かすが若く、教に從わざるは無し。何ぞ一一にして之を縛らんや。
-
説苑・說叢富まざれば以て大と為すこと無く、予えざれば以て親を合わすること無し。親疏なれば則ち害あり、眾を失えば則ち敗る。教えずして誅する、之を虐と謂い、戒めずして成るを責む、之を暴と謂うなり。