説苑 / 說叢
百行之本,一言也。一言而適,可以卻敵;一言而得,可以保國。響不能獨為聲,影不能倍曲為直,物必以其類及,故君子慎言出己。負石赴淵,行之難者也,然申屠狄為之,君子不貴之也;盜跖凶貪,名如日月,與舜禹並傳而不息,而君子不貴。
新字:百行之本,一言也。一言而適,可以卻敵;一言而得,可以保国。響不能独為声,影不能倍曲為直,物必以其類及,故君子慎言出己。負石赴淵,行之難者也,然申屠狄為之,君子不貴之也;盗跖凶貪,名如日月,与舜禹並伝而不息,而君子不貴。
書き下し
百行の本は、一言なり。一言にして適えば、以て敵を卻くべし。一言にして得れば、以て國を保つべし。響は獨り聲を為す能わず、影は曲に倍きて直と為る能わず。物は必ず其の類を以て及ぶ。故に君子は言を慎みて己より出だす。石を負いて淵に赴くは、行いの難き者なり、然れども申屠狄之を為すも、君子は之を貴ばざるなり。盜跖は凶貪にして、名は日月の如く、舜禹と並び傳わりて息まざるも、君子は貴ばず。
現代語訳
あらゆる行いの根本は、たった一言にある。一言が適切であれば、それによって敵を退けることもできる。一言が的を射ていれば、それによって国を保つこともできる。こだまは音の発生源なしに独りでは音を発することができず、影は曲がったものから真っ直ぐな形として現れることはできない。物事は必ずその同類のものによって影響が及ぶ。だから君子は自分自身から発する言葉を慎むのである。石を背負って深い淵に身を投げるのは、行うことの難しい行為であるが、申屠狄はそれを実行した。しかし君子はそれを貴ばない。盗跖は凶悪で貪欲な人物であったが、その悪名は太陽や月のように広く知れ渡り、舜や禹と並んで語り継がれて絶えることがない。しかし君子はそれを貴ばない。
解説
一言の重みから始まり、こだまや影の比喩を通じて「物は類を以て及ぶ」という因果の法則、そして極端な行為や悪名の高さを安易に称賛しない君子の判断基準を示す章である。「一言にして適えば、以て敵を卻くべし」は、たった一つの適切な発言が大きな危機を回避しうるという、言葉の持つ実践的な力を強調している。また申屠狄の投身自殺や盗跖の悪名という、常人には難しい極端な行為や広く知られた悪評であっても、それ自体を無条件に評価してはならないという君子の姿勢は、話題性や困難さだけで物事の価値を判断しがちな現代社会への戒めとなる。
この章句が説くこと
一言の重み類は類を呼ぶ価値判断