説苑 / 說叢
善不可以偽來,惡不可以辭去。近市無賈,在田無野。善不逆旅,非仁義剛武無以定天下。
新字:善不可以偽来,悪不可以辞去。近市無賈,在田無野。善不逆旅,非仁義剛武無以定天下。
書き下し
善は偽りを以て來すべからず、惡は辭を以て去るべからず。市に近くして賈無く、田に在りて野無し。善は旅を逆えず、仁義剛武に非ずんば以て天下を定むる無し。
現代語訳
善は偽りによって招き寄せることはできず、悪は言い訳によって消し去ることはできない。市場に近いのに商人がいないことはなく、田畑にあるのに野原がないということはない(=物事にはそれぞれ相応の実質が伴う)。善は旅人を拒まない(善行はどこでも通用する)ものであり、仁義と剛強な武力を兼ね備えなければ天下を安定させることはできない。
解説
善悪の本質は見せかけや弁明で操作できるものではないという原則から始まる章である。「善は偽りを以て來すべからず、惡は辭を以て去るべからず」は、良い評判を演技で作り上げることも、悪事を言い訳で帳消しにすることもできないという厳しい現実を示しており、体裁を取り繕うことに長けた現代社会への警鐘となる。また末尾で仁義という徳性だけでなく剛武という実力も併せ持たなければ天下を安定させられないと説く点は、理想論だけでは組織や社会を動かせないという現実主義的な視点を加えている。
この章句が説くこと
実質と体裁善悪自招仁義剛武
関連する章句
-
説苑・說叢賢師良友其の側に在り、詩書禮樂前に陳なるも、棄てて不善を為す者は鮮なし。義士は心を欺かず、仁人は生を害せず。謀泄るれば則ち功無く、計設けざれば則ち事成らず。賢士は非とする所に事えず、事うる所を非とせず。愚者は間を行いて益ます固く、鄙人は詐を飾りて益ます野なり。聲は細なりとも聞こえざる無く、行いは隱すとも明らかならざる無し。至神は化せざる無く、至賢は移さざる無し。上信ぜず、下忠ならざれば、上下和せず、安しと雖も必ず危し。求むるに其の道を以てすれば則ち得ざる無く、為すに其の時を以てすれば則ち成らざる無し。
-
説苑・說叢萬物其の本を得る者は生じ、百事其の道を得る者は成る。道の在る所、天下之に歸す。德の在る所、天下之を貴ぶ。仁の在る所、天下之を愛す。義の在る所、天下之を畏る。屋漏るる者は民之を去り、水淺き者は魚之に逃げ、樹高き者は鳥之に宿り、德厚き者は士之に趨り、禮有る者は民之を畏れ、忠信なる者は士之に死す。衣弊ると雖も、行は必ず脩む。頭亂ると雖も、言は必ず治む。時は之に應ずるに在り、為は之に因るに在り。伐つ所にして其の福に當たれば五たびす。伐つ所にして當たらざれば其の禍十たびす。
-
説苑・說叢水源に倍けば則ち川竭れ、人信に倍けば則ち名達せず。義患に勝てば則ち吉、患義に勝てば則ち滅ぶ。五聖の謀も、時に逢うに如かず。辯智明慧も、世に遇うに如かず。鄙心有る者には、便勢を授くべからず。愚質有る者には、利器を予うべからず。多く易んずれば多く敗れ、多く言えば多く失う。
-
説苑・說叢命を知る者は天を怨みず、己を知る者は人を怨みず。人にして愛せざれば則ち仁なる能わず、佞にして巧ならざれば則ち信なる能わず。善を言うに身に及ぶ毋かれ、惡を言うに人に及ぶ毋かれ。上清くして欲無ければ、則ち下正しくして民樸なり。來事は追うべきなり、往事は及ぶべからず。思慮の心無ければ則ち達せず、談說の辭無ければ則ち樂しからず。
-
説苑・說叢士は利を以て移らず、患を為して改めず、孝敬忠信の事立てば、死すと雖も悔いず。智にして私を用うるは、愚にして公を用うるに如かず。故に曰く、巧偽は拙誠に如かずと。學問倦まざるは、己を治むる所以なり。教誨厭わざるは、人を治むる所以なり。虛無を貴ぶ所以の者は、變に應じて時に合するを得ればなり。冠故しと雖も、必ず首に加う。履新たなりと雖も、必ず足に關す。上下分有り、相倍くべからず。一心は以て百君に事うべく、百心は以て一君に事うべからず。故に曰く、心を正しくし、又た言を少なくせよと。
-
説苑・說叢君子は義を比べ、農夫は穀を比ぶ。君に事えて其の言を進むるを得ざれば、則ち其の爵を辭す。其の義を行うを得ざれば、則ち其の祿を辭す。人皆取るの取ると為るを知るも、與うるの之を取ると為るを知らず。政に寇を招く有り、行いに恥を招く有り。為さずして自ら至るは、天下未だ有らざるなり。