説苑 / 說叢
一死一生,乃知交情;一貧一富,乃知交態;一貴一賤,交情乃見;一浮一沒,交情乃出。德義在前,用兵在後。初沐者必拭冠,新浴者必振衣。敗軍之將,不可言勇;亡國之臣,不可言智。
新字:一死一生,乃知交情;一貧一富,乃知交態;一貴一賤,交情乃見;一浮一没,交情乃出。徳義在前,用兵在後。初沐者必拭冠,新浴者必振衣。敗軍之将,不可言勇;亡国之臣,不可言智。
書き下し
一たび死し一たび生きて、乃ち交情を知る。一たび貧しく一たび富みて、乃ち交態を知る。一たび貴く一たび賤しくて、交情乃ち見る。一たび浮かび一たび沒して、交情乃ち出づ。德義前に在り、用兵後に在り。初めて沐する者は必ず冠を拭い、新たに浴する者は必ず衣を振るう。敗軍の將は、勇を言うべからず。亡國の臣は、智を言うべからず。
現代語訳
一度死にかけ一度生き延びるという経験を経て、初めて真の交友の情がわかる。一度貧しくなり一度富むという経験を経て、初めて交友の実態がわかる。一度尊くなり一度卑しくなるという経験を経て、交友の情が初めて見えてくる。一度浮かび上がり一度沈むという経験を経て、交友の情が初めて表に出てくる。徳義を先に立て、武力の行使は後にする。初めて髪を洗った者は必ず冠の埃を払い、新たに湯浴みをした者は必ず衣服を振るってから着る(=清らかさを保とうとする)。敗軍の将は、勇気について語る資格はない。亡国の臣下は、知恵について語る資格はない。
解説
人間の交友関係の真価は順境ではなく、生死・貧富・貴賤・浮沈という極端な逆境や変化を経験して初めて明らかになるという洞察を示す章である。順風満帆なときに寄り添う者は多いが、逆境に陥ったときに変わらず寄り添う者こそが真の友であるという教えは、人間関係の本質を突いており現代にも色褪せない。また「敗軍の將は、勇を言うべからず。亡國の臣は、智を言うべからず」は、結果を出せなかった者が過去の能力や意気込みを弁明として持ち出すことの空しさを鋭く指摘しており、結果責任を重んじる姿勢として今も通用する。
この章句が説くこと
逆境と友情結果責任清廉
関連する章句
-
説苑・說叢必ず貴きは賤しきを以て本と為し、必ず高きは下きを以て基と為す。天將に之に與えんとすれば、必ず先ず之を苦しめ、天將に之を毀たんとすれば、必ず先ず之を累わす。父母に孝に、交友に信あれば、十步の澤に必ず香草有り、十室の邑に必ず忠士有り。草木秋に死すれども、松柏獨り在り。水は萬物を浮かべ、玉石は留まり止まる。饑渴食を得れば、誰か喜ばざらんや。窮を賑わし急を救わば、何ぞ有らざるを患えん。其の以る所を視、其の使う所を觀れば、斯れ知るべきのみ。輿馬に乘れば勞せずして千里に致り、船楫に乘れば游がずして江海を絕つ。智は疑を闕くより大なるは莫く、行は悔無きより大なるは莫し。宅を制し子に名づくれば、以て士を觀るに足る。利は兼ねず、賞は倍せず。忽忽の謀は為すべからざるなり、惕惕の心は長ずべからざるなり。
-
説苑・說叢水源に倍けば則ち川竭れ、人信に倍けば則ち名達せず。義患に勝てば則ち吉、患義に勝てば則ち滅ぶ。五聖の謀も、時に逢うに如かず。辯智明慧も、世に遇うに如かず。鄙心有る者には、便勢を授くべからず。愚質有る者には、利器を予うべからず。多く易んずれば多く敗れ、多く言えば多く失う。
-
説苑・說叢賢師良友其の側に在り、詩書禮樂前に陳なるも、棄てて不善を為す者は鮮なし。義士は心を欺かず、仁人は生を害せず。謀泄るれば則ち功無く、計設けざれば則ち事成らず。賢士は非とする所に事えず、事うる所を非とせず。愚者は間を行いて益ます固く、鄙人は詐を飾りて益ます野なり。聲は細なりとも聞こえざる無く、行いは隱すとも明らかならざる無し。至神は化せざる無く、至賢は移さざる無し。上信ぜず、下忠ならざれば、上下和せず、安しと雖も必ず危し。求むるに其の道を以てすれば則ち得ざる無く、為すに其の時を以てすれば則ち成らざる無し。
-
説苑・說叢士は利を以て移らず、患を為して改めず、孝敬忠信の事立てば、死すと雖も悔いず。智にして私を用うるは、愚にして公を用うるに如かず。故に曰く、巧偽は拙誠に如かずと。學問倦まざるは、己を治むる所以なり。教誨厭わざるは、人を治むる所以なり。虛無を貴ぶ所以の者は、變に應じて時に合するを得ればなり。冠故しと雖も、必ず首に加う。履新たなりと雖も、必ず足に關す。上下分有り、相倍くべからず。一心は以て百君に事うべく、百心は以て一君に事うべからず。故に曰く、心を正しくし、又た言を少なくせよと。
-
説苑・說叢已に雕り已に琢けば、還って樸に反る。物の相反する、復た本に歸る。流れに循いて下れば、以て至り易く、風に倍きて馳すれば、以て遠ざかり易し。兵豫め定めざれば、以て敵を待つこと無く、計先んじて慮らざれば、以て卒に應ずること無し。中方ならず、名章らかならず、外圜ならざる、禍の門なり。直にして枉ぐる能わざれば、與に大任すべからず。方にして圜する能わざれば、與に長存すべからず。之を身に慎み、云云と曰う無かれ。狂夫の言も、聖人擇ぶ。能く恥を忍ぶ者は安く、能く辱を忍ぶ者は存す。脣亡びて齒寒く、河水崩るるも、其の懷は山に在り。智を毒する者は酒より甚だしきは莫く、事を留むる者は樂より甚だしきは莫く、廉を毀る者は色より甚だしきは莫く、剛を摧く者は己を弱に反す。富は足るを知るに在り、貴は退くを求むるに在り。先んじて事を憂うる者は後に樂しみ、先んじて事を傲る者は後に憂う。福は諫を受くるに在り、存する所以なり。恭敬遜讓、精廉謗無く、慈仁人を愛せば、必ず其の賞を受く。諫めて聽かれざれば、後與に爭う無し。事を舉げて當たらざれば、百姓の為に謗らる。悔いは妄に在り、患いは先唱に在り。
-
説苑・說叢萬物其の本を得る者は生じ、百事其の道を得る者は成る。道の在る所、天下之に歸す。德の在る所、天下之を貴ぶ。仁の在る所、天下之を愛す。義の在る所、天下之を畏る。屋漏るる者は民之を去り、水淺き者は魚之に逃げ、樹高き者は鳥之に宿り、德厚き者は士之に趨り、禮有る者は民之を畏れ、忠信なる者は士之に死す。衣弊ると雖も、行は必ず脩む。頭亂ると雖も、言は必ず治む。時は之に應ずるに在り、為は之に因るに在り。伐つ所にして其の福に當たれば五たびす。伐つ所にして當たらざれば其の禍十たびす。