説苑 / 說叢
蒲且脩繳,鳧鴈悲鳴;逄蒙撫弓,虎豹晨嗥。河以委蛇故能遠,山以凌遲故能高,道以優游故能化,德以純厚故能豪。言人之善,澤於膏沐;言人之惡,痛於矛戟。為善不直,必終其曲;為醜不釋,必終其惡。
新字:蒲且脩繳,鳧鴈悲鳴;逄蒙撫弓,虎豹晨嗥。河以委蛇故能遠,山以凌遅故能高,道以優游故能化,徳以純厚故能豪。言人之善,沢於膏沐;言人之悪,痛於矛戟。為善不直,必終其曲;為醜不釈,必終其悪。
書き下し
蒲且繳を脩むれば、鳧鴈悲鳴す。逄蒙弓を撫すれば、虎豹晨に嗥ゆ。河は委蛇なるを以て故に能く遠く、山は凌遲なるを以て故に能く高く、道は優游なるを以て故に能く化し、德は純厚なるを以て故に能く豪なり。人の善を言うは、膏沐より澤あり。人の惡を言うは、矛戟より痛し。善を為すも直からざれば、必ず終に其れ曲がる。醜を為して釋かざれば、必ず終に其れ惡しむ。
現代語訳
弓の名手である蒲且がいぐるみの糸を手入れするだけで、鳧や雁は悲しげに鳴く。同じく名手の逄蒙が弓を手にとって撫でるだけで、虎や豹は朝から吠える(彼らの技量の評判が獲物にまで伝わっている)。河は曲がりくねって流れるからこそ遠くまで至り、山はなだらかに連なるからこそ高くそびえる。道は悠々とゆったりしているからこそ人を感化することができ、徳は純粋で厚みがあるからこそ大きな存在になれる。人の善行を語ることは、香油で髪を潤すことよりも恵み深い。人の悪行を語ることは、矛や戟で突かれるよりも痛ましい。善を行ってもそれが真っ直ぐでなければ、最後にはねじ曲がってしまう。醜いことを行って改めなければ、最後にはますます悪くなってしまう。
解説
名人の技量に対する恐れ、河や山の悠然とした姿から導かれる大成の理、そして言葉の持つ力という三つの主題を連ねた章である。「河は委蛇なるを以て故に能く遠く、山は凌遲なるを以て故に能く高く」は、まっすぐに急ぐことよりも、時にゆるやかに迂回しながら進むことこそが遠大な達成を可能にするという逆説的な知恵を示しており、性急な成果主義に傾きがちな現代社会への示唆に富む。また人の善行を語る言葉は油以上に人を潤し、悪行を語る言葉は武器以上に人を傷つけるという対比は、言葉の持つ力の大きさを改めて教えてくれる。
この章句が説くこと
悠然大成言葉の力