説苑 / 善說
桓公立仲父,致大夫曰:「善吾者入門而右,不善吾者入門而左。」有中門而立者,桓公問焉。對曰:「管子之知,可與謀天下,其強可與取天下。君恃其信乎?內政委焉;外事斷焉。驅民而歸之,是亦可奪也。」桓公曰:「善。」乃謂管仲:「政則卒歸於子矣,政之所不及,唯子是匡。」管仲故築三歸之臺,以自傷於民。
新字:桓公立仲父,致大夫曰:「善吾者入門而右,不善吾者入門而左。」有中門而立者,桓公問焉。対曰:「管子之知,可与謀天下,其強可与取天下。君恃其信乎?内政委焉;外事断焉。駆民而帰之,是亦可奪也。」桓公曰:「善。」乃謂管仲:「政則卒帰於子矣,政之所不及,唯子是匡。」管仲故築三帰之台,以自傷於民。
書き下し
桓公仲父を立て、大夫を致して曰く、「吾を善しとする者は門に入りて右せよ、吾を善しとせざる者は門に入りて左せよ。」門に中して立つ者有り。桓公之に問う。對えて曰く、「管子の知は、與に天下を謀るべく、其の強は與に天下を取るべし。君其の信を恃むか。內政焉に委ね、外事焉に斷ず。民を驅りて之に歸せしむれば、是れ亦た奪うべきなり。」桓公曰く、「善し。」乃ち管仲に謂いて曰く、「政は則ち卒に子に歸せん。政の及ばざる所は、唯だ子是れ匡せ。」管仲故に三歸の臺を築き、以て自ら民に傷つく。
現代語訳
桓公は管仲を『仲父』として立て、大夫たちを集めて言った。『私を良しとする者は門を入って右に立て、良しとしない者は左に立て。』すると門の真ん中に立つ者があった。桓公が理由を尋ねると、彼は答えた。『管子の知恵は天下を共に謀るに足り、その力は天下を共に取るに足るものです。あなたは彼の忠誠だけを頼みにしておられるのですか。内政をすべて彼に委ね、外交も彼の判断に任せています。民を導いて彼になびかせれば、これはいずれ国を奪うこともできてしまいます。』桓公は『なるほど』と言った。そこで管仲に『政治はすべてお前に任せよう。政治の及ばないところは、お前が正してくれ』と言った。管仲はそのため自ら三帰の高台を築き、あえて民の非難を招き自分の評判を傷つけた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『韓非子』愛臣第四愛臣太だ親しければ、必ず其の身を危うくし、人臣太だ貴ければ、必ず主位を易ふ。主妾等無ければ、必ず嫡子を危うくす。
-
『韓非子』揚權第八一家二貴なれば、事乃ち功無し。夫妻政を持てば、子適從する無し。人君爲る者は、數々其の木を披(ひら)き、木枝をして扶踈ならしむる毋(なか)れ。木枝扶踈なれば、將に公閭を塞がんとし、私門將に實ち、公庭將に虚しく、主將に壅圉(ようぎょ)せられんとす。
-
『韓非子』外儲說左下第三十三若し知能く天下を謀り、斷敢て大事を行わば、君因て専ら之を屬するに國柄を以てせん。...危うきこと無きを得んや。...乃ち隰朋をして内を治め、管仲をして外を治めしめて以て相參す。
-
『韓非子』人主第五十二人主の身危うく國亡ぶる所以の者は、大臣太だ貴く、左右太だ威あればなり。
-
老子・第30章道を以て人主を佐くる者は、兵を以て天下に強いず。其の事は還るを好む。師の処る所、荊棘生ず。大軍の後、必ず凶年有り。善なる者は果たすのみにして、敢えて以て強を取らず。果たして矜ること勿かれ、果たして伐ること勿かれ、果たして驕ること勿かれ、果たして已むを得ざれ、果たして強いること勿かれ。物壮なれば則ち老ゆ、是を不道と謂う。不道は早く已む。
-
戦国策・應侯謂昭王應侯昭王に謂ひて曰く、「亦た恆思に神叢有るを聞くか。恆思に悍少年有り、叢と博せんことを請ひて曰く、『吾叢に勝たば、叢我に神を籍すこと三日せん。叢に勝たずんば、叢我を困しめん。』乃ち左手叢の爲に投げ、右手自ら爲に投げ、叢に勝ちて、其の神を籍る。三日にして、叢往きて之を求むるも、遂に歸さず。五日にして叢枯れ、七日にして叢亡ぶ。今國なる者は、王の叢なり。勢なる者は、王の神なり。人に籍すこと此くの如くにして、危ふき無きを得んや。臣未だ嘗て指の臂より大にして、臂の股より大なるを聞かず。若し此れ有らば、則ち病必ず甚だし。百人瓢を輿(かつ)ぎて趨るは、一人持ちて走ること疾きに如かず。百人誠に瓢を輿げば、瓢必ず裂けん。今秦國、華陽も之を用ゐ、穰侯も之を用ゐ、太后も之を用ゐ、王も亦た之を用ゐる。瓢を稱して器と爲さずんば則ち已まん。已に瓢を稱して器と爲さば、國必ず裂けん。臣之を聞く、『木の實繁き者は枝必ず披き、枝の披く者は其の心を傷つく。都の大なる者は其の國を危くし、臣の強き者は其の主を危くす。』と。其れ邑中斗食より以上、尉・內史及び王の左右に至るまで、相國の人に非ざる者有りや。國事無くんば則ち已まん。國事有らば、臣必ず王の庭に獨立するを聞見せん。臣竊かに王の爲に恐る、萬世の後國を有つ者の、王の子孫に非ざらんことを恐る。「臣聞く、古の善く政を爲むるや、其の威內に扶(たす)け、其の輔外に布き、四たび政を治めて亂れず逆はず、使者は道を直くして行き、敢へて非を爲さず、と。今太后の使者、諸侯を分裂し、符を天下に布き、大國の勢を操り、強ひて兵を徵し、諸侯を伐つ。戰ひて勝ち攻めて取れば、利盡く陶に歸す。國の幣帛は、竭く太后の家に入り、竟內の利は、分ちて華陽に移す。古の所謂『主を危くし國を滅ぼすの道』必ず此より起こる。三貴國を竭くして以て自ら安んず。然らば則ち令何ぞ王より出づるを得ん、權何ぞ分たるる毋きを得ん。是れ我が王果して三分の一に處るなり。」