説苑 / 尊賢
魏文侯見段干木,立倦而不敢息;及見翟璜,踞堂而與之言,翟璜不說。文侯曰:「段干木,官之則不肯,祿之則不受;今汝欲官則相至,欲祿則上卿;既受吾賞,又責吾禮,毋乃難乎?」
新字:魏文侯見段干木,立倦而不敢息;及見翟璜,踞堂而与之言,翟璜不説。文侯曰:「段干木,官之則不肯,禄之則不受;今汝欲官則相至,欲禄則上卿;既受吾賞,又責吾礼,毋乃難乎?」
書き下し
魏の文侯段干木を見るに、立ちて倦むも敢えて息わず。翟璜を見るに及びて、堂に踞して之と言う、翟璜説ばず。文侯曰く、「段干木は、之を官せんとすれば肯んぜず、之を禄せんとすれば受けず。今汝は官を欲すれば則ち相に至り、禄を欲すれば則ち上卿たり。既に吾が賞を受けて、又吾が礼を責む、乃ち難からずや」と。
現代語訳
魏の文侯が段干木に会う時は、立ったまま疲れても敢えて休もうとしなかった。ところが翟璜に会う時は、堂の上にどっかりと座ったまま話をしたので、翟璜は不満に思った。文侯は言った。「段干木は、官職を与えようとしても受けず、俸禄を与えようとしても受け取らない。それに対して、お前は官職を望めば宰相にまでなり、俸禄を望めば上卿の地位にある。すでに私の恩賞を受けておきながら、さらに私の礼儀まで求めるとは、少し厳しすぎるのではないか」と。
解説
段干木と翟璜への文侯の態度の差は、無欲な隠者への敬意と、実利を受け取った臣下への評価という、一見筋の通った区別に見える。しかし裏を返せば、地位や俸禄を受け取った者への礼遇を後回しにしてよいという理屈は、組織で実際に働き成果を出している人間を軽んじる危うさもはらむ。名誉だけを求める者には最大の礼を、実利を伴う関係の相手には礼を惜しむという態度は、待遇と敬意を取り違える落とし穴になりかねず、翟璜の不満は現代の職場でも「給料は払っているのだから敬意まで求めるな」という論理に潜む問題を映し出している。
この章句が説くこと
礼遇待遇敬意
関連する章句
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孟子・公孫丑章句下ことだと理屈をつけて断っている。勿論この理解の仕方は私の個人的なものであり、違う解釈もあり、昔から孟子像についていろいろ議論のある節である。
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司馬法・嚴位凡そ戦いは、敬すれば則ち慊(こころよ)し、率(そつ)すれば則ち服す。
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史記 管晏列伝越石父賢なるに、縲紲の中に在り。晏子出でて、之に塗に遭ひ、左驂を解きて之を贖ひ、載せて帰る。謝せずして閨に入る。之を久しくして、越石父絶たんことを請ふ。晏子懼然として、衣冠を摂へ、謝して曰く、「嬰不仁と雖も、子を戹より免れしむ。何ぞ子の絶たんを求むるの速やかなるか」と。石父曰く、「然らず。吾聞く、君子は己を知らざる者に詘するも、己を知る者に信ぶ、と。方に吾縲紲の中に在るや、彼我を知らざるなり。夫子既に已にして感寤して我を贖へり。是れ己を知るなり。己を知りて礼無きは、固より縲紲の中に在るに如かず」と。晏子是に於いて延き入れて上客と為す。
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論語 郷党篇君に事うるには、敬を以てす。
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孟子・盡心章句上孟子曰く、「食いて愛せざるは、之を豕交するなり。愛して敬せざるは、之を獸畜するなり。恭敬なる者は、幣の未だ將わざる者なり。恭敬にして實無ければ、君子虚拘す可からず。」
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説苑・雜言仲尼曰く、「史に君子の道三つ有り。仕えずして上を敬い、祀らずして鬼を敬い、直にして能く人に曲がる」と。