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戦国策 / 謂趙王曰三晉合而秦弱

謂趙王曰:「三晉合而秦弱,三晉離而秦強,此天下之所明也。秦之有燕而伐趙,有趙而伐燕;有梁而伐趙,有趙而伐梁;有楚而伐韓,有韓而伐楚;此天下之所明見也。然山東不能易其路,兵弱也。弱而不能相壹,是何楚之知,山東之愚也。是臣所為山東之憂也。虎將即禽,禽不知虎之即己也,而相鬬兩罷,而歸其死於虎。故使禽知虎之即己,決不相鬬矣。今山東之主不知秦之即己也,而尚相鬬兩敝,而歸其國於秦,知不如禽遠矣。願王熟慮之也。「今事有可急者,秦之欲伐韓、梁,東闚於周室甚,惟寐亡之。今南攻楚者,惡三晉之大合也。今攻楚休而復之,已五年矣,攘地千餘里。今謂楚王:『苟來舉玉趾而見寡人,必與楚為兄弟之國,必為楚攻韓、梁,反楚之故地。』楚王美秦之語,怒韓、梁之不救己,必入於秦。有謀故殺使之趙,以燕餌趙,而離三晉。今王美秦之言,而欲攻燕,攻燕,食未飽而禍已及矣。楚王入秦,秦、楚為一,東面而攻韓。韓南無楚,北無趙,韓不待伐,割挈馬兔而西走。秦與韓為上交,秦禍安移於梁矣。以秦之強,有楚、韓之用,梁不待伐矣。割挈馬兔而西走,秦與梁為上交,秦禍案攘於趙矣。以強秦之有韓、梁、楚,與燕之怒,割必深矣。國之舉此,臣之所為來。臣故曰:事有可急為者。「及楚王之未入也,三晉相親相堅,出銳師以戍韓、梁西邊,楚王聞之,必不入秦,秦必怒而循攻楚,是秦禍不離楚也,便於三晉。若楚王入,秦見三晉之大合而堅也,必不出楚王,即多割,是秦禍不離楚也,有利於三晉。願王之熟計之也急!」趙王因起兵南戍韓、梁之西邊。秦見三晉之堅也,果不出楚王卬,而多求地。

新字:謂趙王曰:「三晉合而秦弱,三晉離而秦強,此天下之所明也。秦之有燕而伐趙,有趙而伐燕;有梁而伐趙,有趙而伐梁;有楚而伐韓,有韓而伐楚;此天下之所明見也。然山東不能易其路,兵弱也。弱而不能相壱,是何楚之知,山東之愚也。是臣所為山東之憂也。虎将即禽,禽不知虎之即己也,而相鬬両罷,而帰其死於虎。故使禽知虎之即己,決不相鬬矣。今山東之主不知秦之即己也,而尚相鬬両敝,而帰其国於秦,知不如禽遠矣。願王熟慮之也。「今事有可急者,秦之欲伐韓、梁,東闚於周室甚,惟寐亡之。今南攻楚者,悪三晉之大合也。今攻楚休而復之,已五年矣,攘地千余里。今謂楚王:『苟来舉玉趾而見寡人,必与楚為兄弟之国,必為楚攻韓、梁,反楚之故地。』楚王美秦之語,怒韓、梁之不救己,必入於秦。有謀故殺使之趙,以燕餌趙,而離三晉。今王美秦之言,而欲攻燕,攻燕,食未飽而禍已及矣。楚王入秦,秦、楚為一,東面而攻韓。韓南無楚,北無趙,韓不待伐,割挈馬兔而西走。秦与韓為上交,秦禍安移於梁矣。以秦之強,有楚、韓之用,梁不待伐矣。割挈馬兔而西走,秦与梁為上交,秦禍案攘於趙矣。以強秦之有韓、梁、楚,与燕之怒,割必深矣。国之舉此,臣之所為来。臣故曰:事有可急為者。「及楚王之未入也,三晉相親相堅,出銳師以戍韓、梁西辺,楚王聞之,必不入秦,秦必怒而循攻楚,是秦禍不離楚也,便於三晉。若楚王入,秦見三晉之大合而堅也,必不出楚王,即多割,是秦禍不離楚也,有利於三晉。願王之熟計之也急!」趙王因起兵南戍韓、梁之西辺。秦見三晉之堅也,果不出楚王卬,而多求地。

書き下し

趙王に謂いて曰く、「三晉合すれば秦弱く、三晉離るれば秦强し、此れ天下の明らかにする所なり。秦の燕有りて趙を伐ち、趙有りて燕を伐つ、梁有りて趙を伐ち、趙有りて梁を伐つ、楚有りて韓を伐ち、韓有りて楚を伐つ、此れ天下の明らかに見る所なり。然るに山東其の路を易うる能わざるは、兵弱ければなり。弱くして相壹する能わず、是れ何ぞ楚の知にして、山東の愚かなるや。是れ臣の山東の爲に憂うる所なり。虎將に禽に即かんとするに、禽虎の己に即くを知らずして、相鬬いて兩つながら罷れ、其の死を虎に歸す。故に禽をして虎の己に即くを知らしめば、決して相鬬わじ。今山東の主秦の己に即くを知らずして、尚お相鬬いて兩つながら敝れ、其の國を秦に歸す、知禽に如かざること遠し。願わくは王熟ら之を慮れ。「今事急にす可き者有り、秦の韓・梁を伐たんと欲する、東のかた周室を闚うこと甚だし、惟だ寐ねても之を亡さんとす。今南のかた楚を攻むる者は、三晉の大いに合するを惡めばなり。今楚を攻めて休みて復た之にす、已に五年なり、地を攘うこと千餘里。今楚王に謂いて曰く、『苟くも來りて玉趾を舉げて寡人に見えば、必ず楚と兄弟の國と爲り、必ず楚の爲に韓・梁を攻め、楚の故地を反さん。』と。楚王秦の語を美とし、韓・梁の己を救わざるを怒り、必ず秦に入らん。謀有りて故に使いを趙に殺し、燕を以て趙に餌し、三晉を離す。今王秦の言を美とし、燕を攻めんと欲す、燕を攻むれば、食未だ飽かずして禍已に及ばん。楚王秦に入らば、秦・楚一と爲り、東面して韓を攻めん。韓南に楚無く、北に趙無く、韓伐たるるを待たず、馬兔を割挈して西走せん。秦韓と上交を爲さば、秦の禍安くにか梁に移らん。秦の彊を以て、楚・韓の用有らば、梁伐たるるを待たじ。馬兔を割挈して西走せば、秦梁と上交を爲さば、秦の禍案じて趙に攘らん。彊秦の韓・梁・楚を有つを以て、燕の怒りと與に、割くこと必ず深からん。國の此れを舉ぐる、臣の來たる所以なり。臣故に曰う、事急に爲す可き者有りと。「楚王の未だ入らざるに及びて、三晉相親しみ相堅くし、銳師を出だして以て韓・梁の西邊を戍らば、楚王之を聞き、必ず秦に入らじ、秦必ず怒りて循た楚を攻めん、是れ秦の禍楚を離れざるなり、三晉に便あり。若し楚王入らば、秦三晉の大いに合して堅きを見て、必ず楚王を出ださず、即ち多く割かん、是れ秦の禍楚を離れざるなり、三晉に利有り。願わくは王之を熟計すること急なれ。」趙王因りて兵を起こし南のかた韓・梁の西邊を戍る。秦三晉の堅きを見るや、果たして楚王卬を出ださずして、多く地を求む。

現代語訳

ある者が趙王に言った。「三晋(韓・魏・趙)が結束すれば秦は弱くなり、三晋が離反すれば秦は強くなります。これは天下が明らかに知るところです。秦は燕と結んで趙を攻め、また趙と結んで燕を攻めます。梁(魏)と結んで趙を攻め、また趙と結んで梁を攻めます。楚と結んで韓を攻め、また韓と結んで楚を攻めます。これも天下が明らかに見て知るところです。ところが山東の国々がこのやり方を改めることができないのは、兵力が弱いからです。弱いのに一つに団結することができない、これはどうして楚だけが賢明で、山東の他国が愚かだといえましょうか。これこそ私が山東諸国のために憂えるところなのです。虎がまさに獲物に襲いかかろうとするとき、獲物同士が虎が自分たちに迫っていることに気づかず、互いに争って両方とも疲れ果て、その死を結局は虎にもたらしてしまう。もし獲物たちに虎が迫っていることを知らせれば、決して互いに争うことはないでしょう。今、山東の君主たちは秦が自分たちに迫っていることに気づかず、なお互いに争って両方とも疲弊し、結局は自国を秦に差し出すことになっています。その知恵は獲物にさえはるかに及びません。どうか王にはよくよくこれをお考えいただきたい。「今、急いで対処すべき事態があります。秦が韓・梁を討とうとする野心は、東方の周王室をうかがうほど強く、寝ても覚めてもこれを滅ぼそうとしています。今、南の楚を攻めているのは、三晋が大きく結束することを嫌っているからです。楚を攻めては休み、また攻めるということを繰り返して、すでに五年、千里余りの土地を奪っています。今、秦は楚王にこう告げています。『もしおいでになって私にお目にかかっていただければ、必ず楚と兄弟の国となり、必ず楚のために韓・梁を攻め、楚の旧領を返還いたしましょう。』と。楚王は秦の言葉を美しいと思い、韓・梁が自分を救わなかったことに怒り、必ず秦に入朝するでしょう。秦にはあらかじめ謀りごとがあって、わざと趙への使者を殺し、燕を餌として趙に与え、三晋を分裂させようとしているのです。今、王が秦の言葉を美しいと思い、燕を攻めようとするなら、燕を攻めても食い尽くさぬうちに、禍がすでに我が身に及ぶことになりましょう。楚王が秦に入朝すれば、秦と楚は一体となり、東を向いて韓を攻めるでしょう。韓は南に楚の援けなく、北に趙の援けもなく、討伐を待つまでもなく、財産をかき集めて西へ逃げ出すでしょう。秦が韓と最上の同盟を結べば、その秦の禍はどこへ移るでしょうか、梁へと移ります。秦の強さに、楚・韓の力までも加われば、梁は討伐を待つまでもなくなります。梁も財産をかき集めて西へ逃げ出し、秦が梁と最上の同盟を結べば、秦の禍は今度は趙へと転じることになります。強大な秦が韓・梁・楚を手中に収め、そこに燕の怒りも加われば、趙の土地は必ず深く削り取られることになるでしょう。この国がこのような手を打とうとしているからこそ、私はこうしてお伺いしたのです。私はそれゆえに申し上げます、急いで対処すべき事態があると。「楚王がまだ秦に入朝していないうちに、三晋が互いに親しみ結束を固め、精鋭の軍を出して韓・梁の西の国境を守らせれば、楚王はこれを聞いて、必ず秦に入朝しないでしょう。秦は必ず怒って引き続き楚を攻めることになりますが、これは秦の禍が楚から離れないということであり、三晋にとって都合がよいのです。もし楚王が秦に入朝してしまえば、秦は三晋が大きく結束して固いのを見て、必ず楚王を(人質として抱えたまま)手放さず、多くの土地を割かせようとするでしょう。これもまた秦の禍が楚から離れないということであり、三晋に利益があります。どうか王には、これを急いでよくよくお考えいただきたいのです。」趙王はそこで兵を起こし、南方の韓・梁の西の国境を守らせた。秦は三晋の結束が固いのを見て、果たして楚王卬を(秦に来させたのちも)手放さず、多くの土地を要求した。

解説

三晋(韓・魏・趙)の結束こそが秦への対抗策であるという合従論の典型を示す一節です。話し手は、秦が各国を次々と結んでは離反させる分断策を繰り返し、山東諸国が虎に狙われる獲物のように互いに争って自滅していく構図を鋭く指摘します。特に、秦が楚に甘言を弄して引き寄せ、韓・梁・趙へと順に禍を波及させていく連鎖の予測は、目先の一国の利益ではなく、力関係の連鎖反応全体を見通す戦略的思考の好例です。実際に趙王がこの進言を容れて兵を動かした結果、秦は三晋の結束を恐れて譲歩しています。仲間割れさせて各個撃破する相手の手口を見抜き、脅威が迫っていることを共有して連携することの重要性は、競争社会における同盟関係のあり方にも通じる普遍的な教訓です。

この章句が説くこと

合従三晉秦の分断策虎と禽の譬え楚王入秦

この一句を、あなたの毎日に。

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