三略 / 上略
端末未見,人莫能知。天地神明;與物推移。變動無常,因敵轉化。不為事先,動而輒隨。故能圖制無疆,扶成天威。康正八極,密定九夷。如此謀者,為帝王師。
新字:端末未見,人莫能知。天地神明;与物推移。変動無常,因敵転化。不為事先,動而輒随。故能図制無疆,扶成天威。康正八極,密定九夷。如此謀者,為帝王師。
書き下し
端末未だ見れざれば、人能く知る莫し。天地神明のごとく、物と推し移り、変動常無く、敵に因りて転化す。事に先んじて為さず、動きて輒ち随う。故に能く図りて制すること疆り無く、扶けて天威を成す。八極を康正し、九夷を密定す。此くの如き謀は、帝王の師と為る。
現代語訳
始めも終わりも外から見えなければ、誰もその意図を知ることはできない。天地や神々のはたらきのように、物事の推移とともに移り変わり、変化に定まった形はなく、敵の動きに応じて姿を変える。自分から先に事を起こすことはせず、相手が動けばすかさずそれに従って応じる。だからこそ限りなく事を計り制することができ、天下の威光を成し遂げる助けとなる。四方の果てまで安んじ治め、遠方の異民族をも静かに落ち着かせる。このような謀をもつ者こそ、帝王の師となる人物である。
解説
すぐれた戦略家の在り方を描いた一段です。その意図は外から見えず、天地の運行のように状況とともに形を変え、決まった型を持たない。自分から仕掛けて先に手の内を晒すのではなく、相手が動いた瞬間にすかさず対応する。この受けの姿勢こそが、実は最も主導権を握るのだと説きます。形を持たないから読まれず、読まれないから制することができるという逆説です。ビジネスでも、自社の戦略を早々に公言して型にはめてしまうと、競合に読まれ、環境が変わっても方針転換しにくくなります。むしろ市場や顧客の変化を丹念に観察し、状況に合わせて柔軟に打ち手を組み替えられる組織のほうが強い。固定した必勝法を持つことよりも、変化に応じて自在に形を変えられる適応力を磨くこと。それが結果として、遠くまで届く影響力を生むのだと、この段は示しています。
この章句が説くこと
無形適応力変化対応戦略の柔軟性
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