呂氏春秋 / 審時⑦
得時之麥,秱長而頸黑,二七以為行,而服,薄䅵而赤色,稱之重,食之致香以息,使人肌澤且有力;如此者不蚼蛆。先時者,暑雨未至胕動,蚼蛆而多疾,其次羊以節。後時者,弱苗而穗蒼狼,薄色而美芒。
新字:得時之麦,秱長而頸黒,二七以為行,而服,薄䅵而赤色,称之重,食之致香以息,使人肌沢且有力;如此者不蚼蛆。先時者,暑雨未至胕動,蚼蛆而多疾,其次羊以節。後時者,弱苗而穗蒼狼,薄色而美芒。
書き下し
時を得る麥は、秱長くして潁黒く、二七以て行を為し、而服、薄䅵にして赤色、之を稱るに重く、之を食らうに香を致して以て息し、人の肌をして澤にして且つ力有らしむ。此の如き者は蚼蛆せず。時に先だつ者は、暑雨未だ至らずして胕動し、蚼蛆して疾多く、其の次は羊以て節す。時に後るる者は、弱苗にして穗は蒼狼、薄色にして美芒なり。
現代語訳
時機を得た麦は、穂の節間が長く穂先(潁)は黒く、穂は十四(二七)ずつ列をなし、而服(原文に脱落があり解読不能)、外皮(䅵)は薄く赤みを帯び、量ると重く、食べると香りゆたかで腹持ちがよく、人の肌をつややかにし、しかも力を与える。このようなものは蚼蛆という虫害を受けない。時期に早すぎたものは、暑い雨がまだ来ないうちに茎の芯を病み、虫がついて病気が多く、その米は痩せて小さくなる。時期に遅れたものは、苗が弱々しく穂は青みがかり、色が薄く芒ばかり立派である。
解説
ここでは麦を例に、時機を得た場合・早すぎた場合・遅すぎた場合が比較されます。時を得た麦は穂先が黒く粒がよく実り、外皮が薄く重く、食べれば香りよく腹持ちして体に力を与えるとされます。早すぎれば茎の芯を病んで虫や病気がつき粒が痩せ、遅すぎれば苗が弱く穂は青く色あせて芒ばかり立派になる、というのです。麦は粟や稲と並ぶ主要穀物で、その適期栽培が食味や滋養の面からも語られています。これは農本思想における耕作の要諦、時を審らかにすることを穀物ごとに徹底した記述で、まき時が収量だけでなく栄養や健康にも及ぶとする見方は、食と農のつながりを重んじる現代にも通じます。
この章句が説くこと
審時麦得時先時後時滋養
関連する章句
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呂氏春秋・審時②是を以て時を得るの禾は、長秱長穗、大本にして莖殺ぎ、疏穖にして穗大なり。其の粟圓くして薄糠、其の米は沃多くして、之を食うに彊し。此の如き者は風せず。時に先だつ者は、莖葉、芒を帯びて以て短衡に、穗鉅いにして芳奪われ、秮米にして香からず。時に後るる者は、莖葉芒を帯びて末衡に、穗閱にして青零し、秕多くして滿たず。
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呂氏春秋・審時④時を得るの稻は、大本にして莖葆じ、長秱疏穖にして、穗、馬の尾の如く、大粒にして芒無く、摶米にして薄糠、之を舂くに易くして之を食らうに香し。此の如き者は嗌せず。時に先だつ者は、本大にして莖葉格對し、短秱短穗にして、秕多くして厚糠、薄米にして芒多し。時に後るる者は、纖莖にして滋ならず、厚糠にして秕多く、辟米にして定熟するを待つを得ず、天を卬ぎて死る。
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呂氏春秋・審時③時を得るの黍は、芒莖にして下に徼し、穗は芒して以て長く、摶米にして薄糠、之を舂くに易くして、之を食うに噮せずして香し。此の如き者は餲せず。時に先だつ者は、大本にして華、莖殺いで遂げず、葉膏短穗なり。時に後るる者は、小莖にして麻長く、短穗にして厚糠、小米にしてカンにして香からず。
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呂氏春秋・審時⑥時を得るの菽は、長莖にして短足、其の莢二七以て族を為し、多枝數節にして、競葉蕃實、大菽は則ち圓く、小菽は則ち摶にして以て芳、之を稱るに重く、之を食らうに息して以て香し。此の如き者は蟲せず。時に先だつ者は、必ず長じて以て蔓し、浮葉疏節、小莢にして實らず。時に後るる者は、短莖疏節、本虚にして實らず。
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呂氏春秋・審時⑧是の故に時を得るの稼は興り、時を失うの稼は約す。莖相若く之を稱るに、時を得る者は重く、之を粟するに量多し。粟相若けば、之を舂くに、時を得る者は米量多し。米相若けば、之を食らうに、時を得る者は饑に忍う。是の故に時を得るの稼は、其の臭香しく、其の味甘く、其の氣章に、百日之を食らえば、耳目聰明に、心意叡智に、四衛變じて彊く、病氣入らず、身に苛殃無し。黃帝曰く、「四時は之を正せず、五穀を正すのみ。」
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呂氏春秋・審時⑤時を得るの麻は、必ず芒ありて以て長く、疏節にして色陽に、小本にして莖堅く、厚枲にして以て均し。後熟は榮多く、日夜分かれて復た生ず。此の如き者は蝗せず。