呂氏春秋 / 審時④
得時之稻,大本而莖葆,長秱疏穖,穗如馬尾,大粒無芒,摶米而薄糠,舂之易而食之香;如此者不益。先時者,本大而莖葉格對,短秱短穗,多秕厚糠,薄米多芒。後時者,纖莖而不滋,厚糠多秕,辟米,不得待定熟,卬天而死。
新字:得時之稲,大本而茎葆,長秱疏穖,穗如馬尾,大粒無芒,摶米而薄糠,舂之易而食之香;如此者不益。先時者,本大而茎葉格対,短秱短穗,多秕厚糠,薄米多芒。後時者,繊茎而不滋,厚糠多秕,辟米,不得待定熟,卬天而死。
書き下し
時を得るの稻は、大本にして莖葆じ、長秱疏穖にして、穗、馬の尾の如く、大粒にして芒無く、摶米にして薄糠、之を舂くに易くして之を食らうに香し。此の如き者は嗌せず。時に先だつ者は、本大にして莖葉格對し、短秱短穗にして、秕多くして厚糠、薄米にして芒多し。時に後るる者は、纖莖にして滋ならず、厚糠にして秕多く、辟米にして定熟するを待つを得ず、天を卬ぎて死る。
現代語訳
時機を得た稲は、根もとが大きく茎が盛んに茂り、節間は長く穂のずいはまばらで、穂は馬の尾のようにたわわに垂れ、粒は大きく芒がなく、粒は丸々として外皮は薄く、臼でつきやすく食べて香ばしい。このようなものは飽きがこない。時期に早すぎたものは、根もとは大きいが茎葉が上向きに長く伸び、節間も穂も短く、粃が多く外皮は厚く、米は薄く芒が多い。時期に遅れたものは、茎が細って茂らず、外皮は厚く粃が多く、割れ米(辟米)になり、十分に熟すのを待てずに天を仰いで枯れ死ぬ。
解説
ここでは稲を例に、時機を得た場合・早すぎた場合・遅すぎた場合が比較されます。時を得た稲は根もとが大きく穂が馬の尾のように実り、粒は大きく糠が薄く食味もよい。早すぎれば茎葉が上に伸びて穂が短く粃が多く、遅すぎれば茎がやせて割れ米になり、熟しきらずに枯れる、というのです。米を主食とする東アジアで、稲の適期を細かく観察したこの記述は、農本思想における耕作の要諦、時を審らかにすることの具体例です。同じ品種でもまき時と収穫時のわずかなずれが収量と品質を左右するという知見は、田植えや刈り取りの時期を重んじる現代の稲作にもそのまま生きています。
この章句が説くこと
審時稲得時先時後時稲作
関連する章句
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呂氏春秋・審時②是を以て時を得るの禾は、長秱長穗、大本にして莖殺ぎ、疏穖にして穗大なり。其の粟圓くして薄糠、其の米は沃多くして、之を食うに彊し。此の如き者は風せず。時に先だつ者は、莖葉、芒を帯びて以て短衡に、穗鉅いにして芳奪われ、秮米にして香からず。時に後るる者は、莖葉芒を帯びて末衡に、穗閱にして青零し、秕多くして滿たず。
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呂氏春秋・審時③時を得るの黍は、芒莖にして下に徼し、穗は芒して以て長く、摶米にして薄糠、之を舂くに易くして、之を食うに噮せずして香し。此の如き者は餲せず。時に先だつ者は、大本にして華、莖殺いで遂げず、葉膏短穗なり。時に後るる者は、小莖にして麻長く、短穗にして厚糠、小米にしてカンにして香からず。
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呂氏春秋・審時⑦時を得る麥は、秱長くして潁黒く、二七以て行を為し、而服、薄䅵にして赤色、之を稱るに重く、之を食らうに香を致して以て息し、人の肌をして澤にして且つ力有らしむ。此の如き者は蚼蛆せず。時に先だつ者は、暑雨未だ至らずして胕動し、蚼蛆して疾多く、其の次は羊以て節す。時に後るる者は、弱苗にして穗は蒼狼、薄色にして美芒なり。
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呂氏春秋・審時⑧是の故に時を得るの稼は興り、時を失うの稼は約す。莖相若く之を稱るに、時を得る者は重く、之を粟するに量多し。粟相若けば、之を舂くに、時を得る者は米量多し。米相若けば、之を食らうに、時を得る者は饑に忍う。是の故に時を得るの稼は、其の臭香しく、其の味甘く、其の氣章に、百日之を食らえば、耳目聰明に、心意叡智に、四衛變じて彊く、病氣入らず、身に苛殃無し。黃帝曰く、「四時は之を正せず、五穀を正すのみ。」
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呂氏春秋・審時⑥時を得るの菽は、長莖にして短足、其の莢二七以て族を為し、多枝數節にして、競葉蕃實、大菽は則ち圓く、小菽は則ち摶にして以て芳、之を稱るに重く、之を食らうに息して以て香し。此の如き者は蟲せず。時に先だつ者は、必ず長じて以て蔓し、浮葉疏節、小莢にして實らず。時に後るる者は、短莖疏節、本虚にして實らず。
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呂氏春秋・審時⑤時を得るの麻は、必ず芒ありて以て長く、疏節にして色陽に、小本にして莖堅く、厚枲にして以て均し。後熟は榮多く、日夜分かれて復た生ず。此の如き者は蝗せず。