呂氏春秋 / 審時⑥
得時之菽,長莖而短足,其莢二七以為族,多枝數節,競葉蕃實,大菽則圓,小菽則摶以芳,稱之重,食之息以香;如此者不蟲。先時者,必長以蔓,浮葉疏節,小莢不實。後時者,短莖疏節,本虛不實。
新字:得時之菽,長茎而短足,其莢二七以為族,多枝数節,競葉蕃実,大菽則円,小菽則摶以芳,称之重,食之息以香;如此者不虫。先時者,必長以蔓,浮葉疏節,小莢不実。後時者,短茎疏節,本虚不実。
書き下し
時を得るの菽は、長莖にして短足、其の莢二七以て族を為し、多枝數節にして、競葉蕃實、大菽は則ち圓く、小菽は則ち摶にして以て芳、之を稱るに重く、之を食らうに息して以て香し。此の如き者は蟲せず。時に先だつ者は、必ず長じて以て蔓し、浮葉疏節、小莢にして實らず。時に後るる者は、短莖疏節、本虚にして實らず。
現代語訳
時機を得た豆(菽)は、茎は長いが根ぎわ(足)は短く、その莢(さや)は茎の両側に七つずつついて一群をなし、枝が多く節も多く、葉が密生して競い合い実がよくつく。大粒の豆は丸く、小粒の豆は丸々として香りがよく、量ると重く、食べると腹持ちよく香ばしい。このようなものは虫害を受けない。時期に早すぎたものは、必ず伸びて蔓(つる)になり、葉は浮いて節はまばらで、莢は小さく実らない。時期に遅れたものは、茎が短く節はまばらで、根もとがすかすかで実らない。
解説
ここでは豆(菽)を例に、時機を得た場合・早すぎた場合・遅すぎた場合が比較されます。時を得た豆は莢が両側に七つずつ群れをなしてよく実り、大粒は丸く小粒は香りよく、重くて腹持ちがよく虫害も受けない。早すぎれば蔓ばかり伸びて実らず、遅すぎれば根もとがすかすかで実らない、というのです。豆は穀物と並ぶ重要な食料で、その適期栽培が丁寧に観察されています。これは農本思想における耕作の要諦、時を審らかにすることを、豆類にまで及ぼしたものです。莢のつき方や粒の様子まで数えて記録するこの精密さは、経験知を体系化した古代の農業技術書の性格をよく示し、作物ごとの適期を見極める現代農業にも通じます。
この章句が説くこと
審時菽得時先時後時豆類
関連する章句
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呂氏春秋・審時②是を以て時を得るの禾は、長秱長穗、大本にして莖殺ぎ、疏穖にして穗大なり。其の粟圓くして薄糠、其の米は沃多くして、之を食うに彊し。此の如き者は風せず。時に先だつ者は、莖葉、芒を帯びて以て短衡に、穗鉅いにして芳奪われ、秮米にして香からず。時に後るる者は、莖葉芒を帯びて末衡に、穗閱にして青零し、秕多くして滿たず。
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呂氏春秋・審時③時を得るの黍は、芒莖にして下に徼し、穗は芒して以て長く、摶米にして薄糠、之を舂くに易くして、之を食うに噮せずして香し。此の如き者は餲せず。時に先だつ者は、大本にして華、莖殺いで遂げず、葉膏短穗なり。時に後るる者は、小莖にして麻長く、短穗にして厚糠、小米にしてカンにして香からず。
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呂氏春秋・審時④時を得るの稻は、大本にして莖葆じ、長秱疏穖にして、穗、馬の尾の如く、大粒にして芒無く、摶米にして薄糠、之を舂くに易くして之を食らうに香し。此の如き者は嗌せず。時に先だつ者は、本大にして莖葉格對し、短秱短穗にして、秕多くして厚糠、薄米にして芒多し。時に後るる者は、纖莖にして滋ならず、厚糠にして秕多く、辟米にして定熟するを待つを得ず、天を卬ぎて死る。
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呂氏春秋・審時⑦時を得る麥は、秱長くして潁黒く、二七以て行を為し、而服、薄䅵にして赤色、之を稱るに重く、之を食らうに香を致して以て息し、人の肌をして澤にして且つ力有らしむ。此の如き者は蚼蛆せず。時に先だつ者は、暑雨未だ至らずして胕動し、蚼蛆して疾多く、其の次は羊以て節す。時に後るる者は、弱苗にして穗は蒼狼、薄色にして美芒なり。
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呂氏春秋・審時⑧是の故に時を得るの稼は興り、時を失うの稼は約す。莖相若く之を稱るに、時を得る者は重く、之を粟するに量多し。粟相若けば、之を舂くに、時を得る者は米量多し。米相若けば、之を食らうに、時を得る者は饑に忍う。是の故に時を得るの稼は、其の臭香しく、其の味甘く、其の氣章に、百日之を食らえば、耳目聰明に、心意叡智に、四衛變じて彊く、病氣入らず、身に苛殃無し。黃帝曰く、「四時は之を正せず、五穀を正すのみ。」
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呂氏春秋・審時⑤時を得るの麻は、必ず芒ありて以て長く、疏節にして色陽に、小本にして莖堅く、厚枲にして以て均し。後熟は榮多く、日夜分かれて復た生ず。此の如き者は蝗せず。