呂氏春秋 / 審時③
得時之黍,芒莖而徼下,穗芒以長,摶米而薄糠,舂之易,而食之不噮而香;如此者不飴。先時者,大本而華,莖殺而不遂,葉槁短穗。後時者,小莖而麻長,短穗而厚糠,小米鉗而不香。
新字:得時之黍,芒茎而徼下,穗芒以長,摶米而薄糠,舂之易,而食之不噮而香;如此者不飴。先時者,大本而華,茎殺而不遂,葉槁短穗。後時者,小茎而麻長,短穗而厚糠,小米鉗而不香。
書き下し
時を得るの黍は、芒莖にして下に徼し、穗は芒して以て長く、摶米にして薄糠、之を舂くに易くして、之を食うに噮せずして香し。此の如き者は餲せず。時に先だつ者は、大本にして華、莖殺いで遂げず、葉膏短穗なり。時に後るる者は、小莖にして麻長く、短穗にして厚糠、小米にしてカンにして香からず。
現代語訳
時機を得た黍(きび)は、茎に細毛があって下部には枝葉がなく、穂は芒があって長く、粒は丸々として外皮は薄く、臼でつきやすく、食べても古びたにおいがせず香ばしい。このようなものは味が損なわれない(甘みが変わらない)。時期に早すぎたものは、根もとは大きいが枝葉ばかり茂り、茎が縮んで伸びきらず、葉は肥えているのに穂は短い。時期に遅れたものは、茎が細く干からびて長く、穂は短く外皮は厚く、粒は小さく黒ずんだ浅黄色になって香ばしくない。
解説
ここでは黍(きび)を例に、時機を得た場合・早すぎた場合・遅すぎた場合の姿と味が比較されます。時を得た黍は茎が締まり穂が長く、粒は丸く糠が薄く、つきやすく香ばしい。早すぎれば枝葉ばかり茂って穂が短く、遅すぎれば茎が干からび粒が黒ずんで香りを欠く、というのです。粟に続き作物ごとに同じ枠組みで観察を積み重ねる叙述は、農本思想における耕作の要諦、時を審らかにすることの効果を、品目を変えて実証的に示すものです。作物ごとの適期とその外れ方を細かく記録するこの姿勢は、経験知を体系化した古代の農業技術書として貴重で、品種と時期を見極める現代農業にも通じます。
この章句が説くこと
審時黍得時先時後時適期