呂氏春秋 / 審時②
是以得時之禾,長秱長穗,大本而莖殺,疏穖而穗大;其粟圓而薄糠;其米多沃而食之彊;如此者不風。先時者,莖葉帶芒以短衡,穗鉅而芳奪,秮米而不香。後時者,莖葉帶芒而末衡,穗閱而青零,多秕而不滿。
新字:是以得時之禾,長秱長穗,大本而茎殺,疏穖而穗大;其粟円而薄糠;其米多沃而食之彊;如此者不風。先時者,茎葉帯芒以短衡,穗鉅而芳奪,秮米而不香。後時者,茎葉帯芒而末衡,穗閱而青零,多秕而不満。
書き下し
是を以て時を得るの禾は、長秱長穗、大本にして莖殺ぎ、疏穖にして穗大なり。其の粟圓くして薄糠、其の米は沃多くして、之を食うに彊し。此の如き者は風せず。時に先だつ者は、莖葉、芒を帯びて以て短衡に、穗鉅いにして芳奪われ、秮米にして香からず。時に後るる者は、莖葉芒を帯びて末衡に、穗閱にして青零し、秕多くして滿たず。
現代語訳
だから時機を得た粟(禾)は、茎の節間が長く穂も長く、根もとは大きく茎は引き締まり、穂のずいはまばらでも穂は大きい。その粒は丸く外皮(糠)は薄く、その米は実り豊かで食べると歯ごたえがある。このようなものは風で実が落ちない。時期に早すぎたものは、茎葉が芒(のぎ)を帯びて穂の柄が短く、穂は大きいが香り(うまみ)が失われ、臼でついても実が出にくく味がよくない。時期に遅れたものは、茎葉が芒を帯びて葉柄が下に垂れ、穂は成長せず短く、熟さないうちに青いまま落ち、粃が多くて実が満ちない。
解説
ここからは、粟(禾)を例に、種まきや収穫が時機を得た場合・早すぎた場合・遅すぎた場合の三つを、作物の姿や味で細かく比較します。時を得た粟は茎が締まり穂が大きく、粒は丸く糠が薄く、食味もよく実も落ちにくい。早すぎれば香りが抜け実が出にくく、遅すぎれば熟さぬまま落ちて粃が多い、というのです。これは農本思想における耕作の要諦、時を審らかにすることの効果を、具体的な観察にもとづいて示したものです。同じ作物でもまき時ひとつで品質が大きく変わるという指摘は、経験を精密に言語化した農業技術の記録であり、適期栽培を重んじる現代農業の考え方の源流ともいえます。
この章句が説くこと
審時禾得時先時後時品質