呂氏春秋 / 壹行④
人之所乘船者,為其能浮而不能沈也;世之所以賢君子者,為其能行義而不能行邪辟也。
新字:人之所乗船者,為其能浮而不能沈也;世之所以賢君子者,為其能行義而不能行邪辟也。
書き下し
人の船に乘る所の者は、其の能く浮きて沈むこと能わざるが為なり。世の君子を賢とする所以の者は、其の能く義を行いて邪辟を行うこと能わざるが為なり。
現代語訳
人が船に乗るのは、船が浮くことができて沈むことがないからである。世の人が君子を賢いとするのは、君子が義を行うことができて邪悪なことを行わないからである。
解説
船と君子を対比させた簡潔な比喩によって、信頼の本質を説く一段です。人が安心して船に乗れるのは、船が浮きこそすれ決して沈まないと信じられるからであり、同じように人が君子を尊ぶのは、君子が必ず義を行い邪悪に走らないと信じられるからだといいます。つまり、どんな場面でも同じように正しく振る舞うという予測可能な一貫性こそが、信頼と尊敬の根拠だという「壹行」の主題を凝縮した表現です。呂氏春秋は難解な議論を身近な事物にたとえて示すのを得意としました。相手が状況によって態度を変えず、常に道理にかなって行動するからこそ人は安心して身を委ねられるという指摘は、リーダーや専門家への信頼が何によって支えられるかを考えさせ、現代にも通じます。
この章句が説くこと
壱行船君子義邪辟信頼
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