呂氏春秋 / 審分③
人主之車,所以乘物也。察乘物之理,則四極可有。不知乘物而自怙恃,奪其智能,多其教詔,而好自以;若此則百官恫擾,少長相越,萬邪並起,權威分移,不可以卒,不可以教,此亡國之風也。
新字:人主之車,所以乗物也。察乗物之理,則四極可有。不知乗物而自怙恃,奪其智能,多其教詔,而好自以;若此則百官恫擾,少長相越,万邪並起,権威分移,不可以卒,不可以教,此亡国之風也。
書き下し
人主の車は物に乘ずる所以なり。物に乘ずるの理を察すれば、則ち四極は有つ可し。物に乘ずることを知らずして自ら怙恃し、其の智能を奮い、其の教詔を多くして、好みて自ら以う。此くの若くなれば、則ち百官恫擾し、少長相越え、萬邪竝び起こり、權威分移し、以て卒いる可からず、以て教うる可からず。此れ亡國の風なり。
現代語訳
君主の車とは、万物を御していくための手立てである。物を御する道理をわきまえれば、四方の果てまでも保つことができる。ところが御し方を知らずに自分だけを頼みとし、自分の知恵才覚をふるい、あれこれ命令ばかり多くして独断専行すれば、多くの役人は混乱し、若手と古参の秩序は乱れ、あらゆる邪悪がいっせいに起こり、君主の権威は分散して移ってしまう。これでは臣下を統率することも教化することもできない。これこそ国を滅ぼすやり方である。
解説
この段は、君主が臣下という車を正しく御する道理をわきまえるべきことを説き、それを誤ったときの弊害を描きます。君主が自分の才知だけを頼りに命令を乱発し独断すれば、役人は混乱し、序列は崩れ、権威はかえって分散して統率不能に陥ります。呂氏春秋はこれを亡国の風と厳しく戒めます。要は、権力を握り込むほど組織は回らなくなるという逆説です。トップが細部まで口を出して独断すると現場が萎縮し混乱するという構図は、現代の組織運営における過剰なマイクロマネジメントの弊害と重なり、委ねる技術の重要さを教えてくれます。
この章句が説くこと
乗物の理独断マイクロマネジメント亡国の風権威四極
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