易経 / 彖伝
艮,止也。時止則止,時行則行,動靜不失其時,其道光明。“艮其止”,止其所也。上下敵應,不相與也。是以“不獲其身,行其庭,不見其人,無咎”也。
新字:艮,止也。時止則止,時行則行,動静不失其時,其道光明。“艮其止”,止其所也。上下敵応,不相与也。是以“不獲其身,行其庭,不見其人,無咎”也。
書き下し
艮(ごん)は、止まるなり。時、止まるべくんば則ち止まり、時、行くべくんば則ち行き、動静其の時を失わざれば、其の道光明なり。「其の止まるに艮(とど)まる」とは、其の所に止まるなり。上下敵応して、相い与(くみ)せざるなり。是を以て「其の身を獲(え)ず、其の庭に行きて、其の人を見ず、咎(とが)なし」となり。
現代語訳
艮とは止まることである。止まるべき時には止まり、進むべき時には進む。動くも静かにするも、その時を取り違えなければ、その道は光り輝いて明らかである。「止まるべきところに止まる」とは、自分のいるべき場所に止まるということである。上下の爻が互いに敵対して応じ合わず、与し合わない。だからこそ「自分の身を意識せず、庭を歩いてもそこにいる人が目に入らない。それでも咎はない」というのである。
解説
艮は「止まる」ことを主題とする卦です。彖伝の中心は「時、止まるべくんば則ち止まり、時、行くべくんば則ち行く」という一句にあります。止まることが常に善いのではなく、動くべきときに動き、止まるべきときに止まる――その時を取り違えなければ道はおのずと明るい、というのです。さらに「其の所に止まる」とあるように、止まる場所も問われます。自分の分と立場をわきまえ、そこに落ち着くことが艮の止まり方です。上下の爻が応じ合わないという構造は、外の動きに引きずられず、自分の身さえ意識から離れるほどの静けさとして描かれます。情報も要請も絶えず流れ込む毎日のなかで、私たちはつい動き続けてしまいます。止まる勇気を持ち、いるべき場所に腰を据える。その静けさが、次に動くときの判断を澄ませてくれます。