呂氏春秋 / 應同②
夫覆巢毀卵,則鳳凰不至;刳獸食胎,則麒麟不來;乾澤涸漁,則龜龍不往。物之從同,不可為記。子不遮乎親,臣不遮乎君。君同則來,異則去。故君雖尊,以白為黑,臣不能聽;父雖親,以黑為白,子不能從。黃帝曰:“芒芒昧昧,因天之威,與元同氣。”故曰同氣賢於同義,同義賢於同力,同力賢於同居,同居賢於同名。帝者同氣,王者同義,霸者同力,勤者同居則薄矣,亡者同名則觕矣。其智彌觕者,其所同彌觕;其智彌精者,其所同彌精;故凡用意不可不精。夫精,五帝三王之所以成也。成齊類同皆有合,故堯為善而眾善至,桀為非而眾非來。商箴云:“天降災布祥,並有其職”,以言禍福人或召之也。故國亂非獨亂也,又必召寇。獨亂未必亡也,召寇則無以存矣。
新字:夫覆巣毀卵,則鳳凰不至;刳獣食胎,則麒麟不来;乾沢涸漁,則亀竜不往。物之従同,不可為記。子不遮乎親,臣不遮乎君。君同則来,異則去。故君雖尊,以白為黒,臣不能聴;父雖親,以黒為白,子不能従。黄帝曰:“芒芒昧昧,因天之威,与元同気。”故曰同気賢於同義,同義賢於同力,同力賢於同居,同居賢於同名。帝者同気,王者同義,覇者同力,勤者同居則薄矣,亡者同名則觕矣。其智弥觕者,其所同弥觕;其智弥精者,其所同弥精;故凡用意不可不精。夫精,五帝三王之所以成也。成斉類同皆有合,故堯為善而眾善至,桀為非而眾非来。商箴云:“天降災布祥,並有其職”,以言禍福人或召之也。故国乱非独乱也,又必召寇。独乱未必亡也,召寇則無以存矣。
書き下し
夫れ巢を覆えし卵を毀てば、則ち鳳凰至らず。獸を刳き胎を食らえば、則ち麒麟來たらず。澤を乾し漁を涸らせば、則ち龜龍住まず。物の同じきに從うこと、記するを為す可からず。子は親に遮られず、臣は君に遮られず。君同じければ則ち來たり、異なれば則ち去る。故に君尊しと雖も、白を以て黑と為せば、臣も聽くこと能わず。父は親しと雖も、黑を以て白と為せば、子も從うこと能わず。黄帝曰く、「芒芒昧昧、天の威に因り、元と氣を同じくす。」故に曰く、「氣に同ずるは義に同ずるに賢り、義に同ずるは力に同ずるに賢り、力に同ずるは居に同ずるに賢り、居に同ずるは名に同ずるに賢る。帝者は氣に同じ、王者は義に同じ、霸者は力に同ず。勤むる者は居に同ずれば則ち薄く、亡ぶる者は名に同じれば則ち觕なり。其の智彌々觕なる者は、其の同ずる所彌々觕に、其の智彌々精なる者は、其の同ずる所彌々精なり。故に凡そ意を用うるは精ならざる可からず。夫れ精は、五帝三王の成る所以なり。成ること齊しく類すること同じく、皆合う有り。故に堯は善を為して衆善至り、桀は非を為して衆非來たる。商の箴に云う、「天災いを降し祥を布く、竝ぶに其の職有り。」以て禍福は人之を召くこと或るを言うなり。故に國の亂るるは獨り亂るるに非ざるなり、又必ず寇を召く。獨り亂るるは未だ必らずしも亡びず、寇を召けば則ち以て存する無し。
現代語訳
巣をひっくり返して卵を壊すようなら鳳凰は来ず、獣を裂いて胎児を食らうようなら麒麟は来ず、沢を干し漁をとり尽くすようなら亀や龍は住みつかない。物が同類に従うさまは、いちいち書き記せないほどである。子は親に隔てられず、臣は君に隔てられない。君と同じであれば近づき、異なれば去る。ゆえに君が尊くとも、白を黒と言えば臣は聞き従えず、父が親しくとも、黒を白と言えば子は従えない。黄帝は言った、「茫漠として奥深く、天の威に従い、根源の気と一体となる」と。ゆえにいう、気を同じくするのは義を同じくするより勝り、義は力より、力は居を同じくするより、居を同じくするのは名を同じくするより勝る、と。帝者は気を同じくし、王者は義を、覇者は力を同じくする。努め励む者が世俗と同じであれば徳は薄く、滅びる者が不仁不義と同じであれば粗雑である。知が粗いほど同じくするものも粗く、知が精緻なほど同じくするものも精緻になる。ゆえに心の用い方は精でなければならない。精こそ五帝三王が成功したゆえんである。成るところが等しく類が同じければみな合致するので、堯が善をなせば多くの善が至り、桀が悪をなせば多くの悪が来た。商の箴に「天は災いを降し吉祥を布き、ともにその務めがある」といい、禍福は人が招くこともあると説いている。ゆえに国の乱れはただ乱れるだけでなく、必ず外敵をも招く。ただ乱れるだけなら必ずしも滅びないが、外敵を招けばもはや存続できない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・應同①凡そ帝王なる者の將に興らんとするや、天必ず先づ祥を下民に見わず。黄帝の時、天先づ大螾大螻を見わす。黄帝曰く、「土氣勝つ。」土氣勝つ、故に其の色は黄を尚び、其の事は土に則る。禹の時に及び、天先づ草木の秋冬に殺れざるを見わす。禹曰く、「木氣勝つ。」木氣勝つ、故に其の色は青を尚び、其の事は木に則る。湯の時に及び、天先づ金刃の水より生ずるを見わす。湯曰く、「金氣勝つ。」金氣勝つ、故に其の色は白を尚び、其の事は金に則る。文王の時に及び、天先づ赤烏の丹書を銜えて、周社に集まるを見わす。文王曰く、「火氣勝つ。」火氣勝つ、故に其の色は赤を尚び、其の事は火に則る。日に代わる者は必ず將に水ならんとす。天且に先づ水氣の勝つを見わさんとす。水氣勝つ、故に其の色は黒を尚び、其の事は水に則る。水氣至りて數の備わるを知らざれば、將に土に徙らんとす。天の為すは時にして、農を下に助けず。類は固より相召く。氣同じければ則ち合し、聲比すれば則ち應ず。宮を鼓すれば宮動き、角鼓すれば角動く。地を平らかにして水を注げば、水は溼に流れ、薪を均しくして火を施せば、火は燥に就く。山雲は草莽のごとく、水雲は魚鱗のごとく、旱雲は煙火のごとく、雨雲は水波のごとく、其の生ずる所に比類して以て人に示さざるは無し。故に龍を以て雨を致し、形を以て影を逐う。師の處る所は、必ず棘楚を生ず。禍福の自りて來たる所、衆人以て命と為す。安くんぞ其の所を知らん。
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呂氏春秋・召類①類同じければ相召き、氣同じければ則ち合し、聲比すれば則ち應ず。故に宮を鼓すれば宮應じ、角を鼓すれば角動く。龍を以て雨を致し、形を以て影を逐う。禍福の自りて來たる所、衆人以て命と為す、焉ぞ其の由る所を知らざる。故に國の亂るるは獨り亂るるのみに非ず、有た必ず寇を召く。獨り亂るるは未だ必ずしも亡びざるなり。寇を召けば則ち以て存する無し。
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呂氏春秋・用眾⑥天下に粹白の狐無くして、粹白の裘有るは、之を衆白に取ればなり。夫れ衆に取るは、此れ三皇五帝の大いに功名を立てし所以なり。凡そ君の立つ所以は、衆に出づるなり。立つこと已に定まりて其の衆を舍つるは、是れ其の末を得て其の本を失うなり。其の末を得て其の本を失えば、安居することを聞かず。故に衆勇を以てすれば、孟賁をも畏るること無く、衆力を以てすれば、烏獲をも畏るること無く、衆視を以てすれば、離婁をも畏るること無く、衆知を以てすれば、堯舜をも畏るること無し。夫れ衆を以てする者は、此れ人に君たるものの大寶なり。田駢、齊王に謂いて曰く、「孟賁は術を患えしむるに庶けれども、邊境患えず。楚・魏の王、辭言もて説かず、而れども境內已に備えを修め、兵士已に用を修めたり。之を衆に得ればなり。」
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呂氏春秋・當染②獨り染絲のみ然るに非ざるなり。國も亦た染有り。舜は許由・伯陽に染まり、禹は皋陶・伯益に染まり、湯は伊尹・仲虺に染まり、武王は太公望・周公旦に染まる。此の四王者は染まる所當れり。故に天下に王となり、立ちて天子と為り、功名、天地を蔽えり。天下の仁義顯人を舉ぐるときは、必ず此の四王者を稱す。夏の桀は干辛・歧踵戎に染まり、殷の紂は崇侯・惡來に染まり、周の厲王は虢公長父・榮夷終に染まり、幽王は虢公鼓・祭公敦に染まる。此の四王者は染まる所當らず。故に國は殘われ身は死して、天下の僇と為れり。天下の不義辱人を舉ぐるときは、必ず此の四王者を稱す。齊の桓公は管仲・鮑叔に染まり、晉の文公は咎犯・郄偃に染まり、荊の莊王は孫叔敖・沈尹蒸に染まり、吳王闔廬は伍員・文之儀に染まり、越王句踐は范蠡・大夫種に染まる。此の五君は、染まる所當れり。故に諸侯に霸となり、功名後世に傳われり。范吉射は張柳朔・王生に染まり、中行寅は黃藉秦・高彊に染まり、吳王夫差は王孫雄・太宰嚭に染まり、智伯瑤は智國・張武に染まり、中山尚は魏義・椻長に染まり、宋の康王は唐鞅・田不禋に染まる。此の六君は、染まる所當らず。故に國は皆殘亡し、身は或いは死辱せられ、宗廟は血食せられず、其の後類を絶ち、君臣は離散し、民人は流亡す。天下の貪暴羞づ可き人を舉ぐるときは、必ず此の六君者を稱す。凡そ君と為るは、君と為りて因りて榮えとするに非ざるなり。君と為りて因りて安しとするに非ざるなり。以て理を行うが為なり。理を行うは、染まることの當るに生ず。故に古の善く君為りし者は、人を論ずるに勞して、官事に佚す。其の經を得たればなり。君為る能わざりし者は、形を傷り神を費やし、心を愁え耳目を勞せしむるも、國愈々危く、身愈々辱めらる。要を知らざるが故なり。要を知らざるが故に、則ち染まる所當らず、染まる所當らざれば、理奚に由りてか至らん。六君者は是れなるのみ。六君者は、其の國を重んじ其の身を愛せざるには非ざるなり。染まる所に當らざればなり。存亡の故は獨り是れなるのみならず。帝王も亦た然り。
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呂氏春秋・先己②昔者、先聖王は、其の身を成して天下成り、其の身を治めて天下治まれり。故に善く響かせる者は、響に於いてせずして聲に於いてし、善く影つくる者は、影に於いてせずして形に於いてす。天下を為むる者は、天下に於いてせずして身に於いてす。詩に曰く、「淑人君子、其の儀忒わず。其の儀忒わずして、是の四國を正す。」諸を身に正しうするを言うなり。故に其の道に反れば而ち身善く、義を行えば則ち人善く、君道を備うることを樂しめば、而ち百官已に治まり、萬民已に利あり。三者の成るは、無為に在り。無為の道をば天に勝すと曰い、義をば身を利すと曰い、君をば身にすること勿しと曰う。身にすること勿ければ督しく聽き、身を利すれば平靜、天に勝せば性に順う。性に順えば則ち聰明にして壽長く、平靜なれば則ち業進みて嚮かうことを樂しみ、督しく聽けば則ち姦塞がり皇わず。故に上、其の道を失えば、則ち邊は敵に侵され、內は其の行いを失い、名聲外に墮つ。是の故に百仞の松も、本、下に傷つけば、末、上に槁る。商・周の國、謀、胸に失い、令、彼に困しめり。故に心得て聽くこと得、聽くこと得て事得、事得て功名得。五帝は道を先にして徳を後にす。故に德、焉より盛んなるは莫し。三王は教を先にして殺を後にす。故に事、焉より功あるは莫し。五伯は事を先にして兵を後にす。故に兵、焉より彊きは莫し。當今の世、巧謀並びに行われ、詐術遞いに用いられ、攻戰休まず、亡國辱主愈々衆し。事とする所の者、末なればなり。
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呂氏春秋・貴當①名號の大いに顯わるること、彊いて求む可からず。必ず其の道に繇る。物を治むるには物に於てせずして人に於てす。人を治むるには事に於てせずして君に於てす。君を治むるには君に於てせずして天子に於てす。天子を治むるには天子に於てせずして欲に於てす。欲を治むるには欲に於てせずして性に於てす。性なる者は萬物の本なり。長くす可からず、短かくす可からず。其の固より然るに因りて之を然りとす。此れ天地の數なり。赤肉を窺いて烏鵲聚まる。貍、堂に處りて衆鼠散じ、衰絰陳ねて、民、喪を知る,竽瑟陳ねて、民、樂を知る,湯・武、其の行いを修めて天下從い、桀・紂、其の行いを慢りにして天下畔く。豈に其の言を待たんや。君子は己に在る者を審らかにするのみ。