呂氏春秋 / 誠廉①
石可破也,而不可奪堅;丹可磨也,而不可奪赤。堅與赤,性之有也。性也者,所受於天也,非擇取而為之也。豪士之自好者,其不可漫以汙也,亦猶此也。
新字:石可破也,而不可奪堅;丹可磨也,而不可奪赤。堅与赤,性之有也。性也者,所受於天也,非択取而為之也。豪士之自好者,其不可漫以汙也,亦猶此也。
書き下し
石は破る可し、而れども堅きを奪う可からず。丹は磨く可し、而れども赤きを奪う可からず。堅きと赤きとは、性の有なればなり。性なる者は、天より受くる所なり。擇び取りて之を為すに非ざるなり。豪士の自ら好む者は、其れ漫して以て汙す可からざるや、亦た猶ほ此くのごときなり。
現代語訳
石は割ることはできても、その堅さを奪うことはできない。丹(朱砂)はすり減らすことはできても、その赤さを奪うことはできない。堅さと赤さは、それぞれの本性に備わっているものだからだ。本性というものは、天から受けたものであって、選び取って人為的に作ったものではない。気骨ある士が自らの節を大切に守るとき、それを汚し損なうことができないのも、ちょうどこれと同じである。
解説
本段は「誠廉」篇の総論で、士の節操を石の堅さや丹の赤さにたとえます。石は砕けても堅さは奪えず、丹はすり減っても赤は消えない――堅さも赤さも天から与えられた本性であり、人為で変えられないように、真に気骨ある士の節も汚すことはできない、と説きます。背景には、外からの力では損なえない内面の徳を重んじる思想があります。次段の伯夷・叔斉の物語への導入でもあります。現代の私たちにとっても、状況に流されずに保たれる信念や誠実さは、外圧では奪えない人格の芯として受け取ることができます。
この章句が説くこと
誠廉節操本性伯夷叔斉堅と赤士
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