呂氏春秋 / 異用④
孔子之弟子從遠方來者,孔子荷杖而問之曰:“子之公不有恙乎?”搏杖而揖之,問曰:“子之父母不有恙乎?”置杖而問曰:“子之兄弟不有恙乎?”杙步而倍之,問曰:“子之妻子不有恙乎?”故孔子以六尺之杖,諭貴賤之等,辨疏親之義,又況於以尊位厚祿乎?
新字:孔子之弟子従遠方来者,孔子荷杖而問之曰:“子之公不有恙乎?”搏杖而揖之,問曰:“子之父母不有恙乎?”置杖而問曰:“子之兄弟不有恙乎?”杙歩而倍之,問曰:“子之妻子不有恙乎?”故孔子以六尺之杖,諭貴賤之等,弁疏親之義,又況於以尊位厚禄乎?
書き下し
孔子の弟子、遠方從り來たる者あり。孔子杖を荷いて之に問いて曰く、「子の公は恙有らざるか。」杖を搏りて之に揖して、問いて曰く、「子の父母は恙有らざるか。」杖を置きて問いて曰く、「子の兄弟は恙有らざるか。」杖つきて歩みて之に倍し、問いて曰く、「子の妻子は恙有らざるか。」故に孔子六尺の杖を以て、貴賤の等を諭し、疏親の義を辧ぜり。又況んや尊位厚祿を以てするに於いてをや。
現代語訳
孔子の弟子で遠方から来た者があった。孔子は杖をかついで(肩に載せて)弟子に問うた、「あなたの祖父はお変わりありませんか」。杖を手に持って会釈して問うた、「あなたのご両親はお変わりありませんか」。杖を地に置いて問うた、「あなたの兄弟はお変わりありませんか」。杖をついて歩み、弟子に背を向けて問うた、「あなたの妻子はお変わりありませんか」。このように孔子は六尺の杖を用いて、身分の上下(貴賤)の等級を示し、疎遠と親密の別を弁別した。まして高い地位や厚い禄を用いるならば、なおさら人倫の序を明らかにできる。
解説
孔子が一本の杖の扱い方を変えることで、祖父・両親・兄弟・妻子と、問う相手への敬意の序列を身をもって示した故事です。杖を肩に担ぐ、手に持つ、地に置く、ついて背を向けるという所作の違いに、親疎・貴賤の別を込め、たった六尺の杖さえ人倫の秩序を表す道具になると説きます。物の用い方が意味を生むという異用篇の主題を、礼の実践で示す例です。まして地位や禄という大きな手段があればなおさらだ、と結びます。現代でも、些細な振る舞いに敬意や序列が表れるという視点は、礼儀や配慮の意味を見直す手がかりとして響きます。
この章句が説くこと
孔子六尺の杖貴賤の等疏親礼異用
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