呂氏春秋 / 愛士③
趙簡子有兩白(騾)〔驘〕而甚愛之。陽城胥渠處廣門之官,夜款門而謁曰:「主君之臣胥渠有疾,醫教之曰:『得白(騾)〔驘〕之肝病則止,不得則死。』」謁者入通。董安于御於側,慍曰:「譆!胥渠也期吾君騾,請即刑焉。」簡子曰:「夫殺人以活畜,不亦不仁乎?殺畜以活人,不亦仁乎?」於是召庖人殺白(騾)〔驘〕,取肝以與陽城胥渠。處無幾何,趙興兵而攻翟。廣門之官,左七百人,右七百人,皆先登而獲甲首。人主其胡可以不好士〔也〕?
新字:趙簡子有両白(騾)〔驘〕而甚愛之。陽城胥渠処広門之官,夜款門而謁曰:「主君之臣胥渠有疾,医教之曰:『得白(騾)〔驘〕之肝病則止,不得則死。』」謁者入通。董安于御於側,慍曰:「譆!胥渠也期吾君騾,請即刑焉。」簡子曰:「夫殺人以活畜,不亦不仁乎?殺畜以活人,不亦仁乎?」於是召庖人殺白(騾)〔驘〕,取肝以与陽城胥渠。処無幾何,趙興兵而攻翟。広門之官,左七百人,右七百人,皆先登而獲甲首。人主其胡可以不好士〔也〕?
書き下し
趙簡子、兩白騾を有して甚だ之を愛す。陽城胥渠は廣門の官に處る。夜門を款いて謁げて曰く、主君の臣胥渠疾有り。醫之に教えて曰く、白騾の肝を得れば病は則ち止まん、得ざれば則ち死せん、と。謁者入りて通ず。董安于、側に御し、慍りて曰く、譆、胥渠や、吾が君の騾を期す。請う即ち焉を刑せん、と。簡子曰く、夫れ人を殺して以て畜を活かすは、亦た不仁ならずや。畜を殺して以て人を活かすは、亦た仁ならずや、と。是に於て庖人を召して白騾を殺さしめ、肝を取りて以て陽城胥渠に與う。處ること幾何も無くして、趙、兵を興して翟を攻む。廣門の官、左七百人、右七百人、皆先登して甲首を獲たり。人主其れ胡ぞ以て士を好まざる可けんや。
現代語訳
趙簡子は二頭の白いラバを持って大変かわいがっていた。陽城胥渠が広門の役所にいて、夜に門をたたいて申し上げた、『主君の家臣胥渠が病気で、医者が「白いラバの肝を得られれば治るが、得られなければ死ぬ」と言いました』と。取次ぎの者が入って伝えた。董安于がそばに仕えていて、怒って言った、『ああ、胥渠め、わが君のラバを狙うとは。すぐに処刑させてください』と。簡子は言った、『人を殺してラバを生かすのは不仁ではないか。ラバを殺して人を生かすのは仁ではないか』と。そこで料理人を呼んで白いラバを殺させ、肝を取って陽城胥渠に与えた。しばらくして、趙は兵を起こして翟を攻めた。広門の役所の者は、左に七百人、右に七百人、みな先陣を切って敵の甲首を取った。君主がどうして士を好まずにいられよう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『五常訓』巻之二・仁之上一樊遅仁を問ふ、子曰く人を愛すと。仁は愛をつかさどる。故に仁を行ふの道は、人を愛するにあり。此人の字は、五倫をさして見るべし。人を愛するは、即人倫を愛する也。人の道は仁を行ふにあり。仁を行ふの道は人を愛するにあり。人を愛せんとならば、まづ心の私を去り、人我のへだて無くして、あはれみの心をおしひろむるにあり。愛人を以て仁を説き給ふ。誠に切実にして、近き教なり。
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『文武訓』文訓上之末一人の文字を見ば、よきことは褒め、さほどなきは、かげにてもそしるべからず。人のつとめて作れる文字を、一言にたやすくそしりおとさんもなさけなし。作れる人、そしりを聞かば、本意なく思ひうらみいかるべし。是をそしるは不仁無礼にて、道理にそむくのみならず、人のうらみを受けて悪しし。又あしき文詩を褒むるも、いつはりにて本意にあらず。只其よしあしを云はざらんには如かじ。

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