呂氏春秋 / 仲夏②
是月也,命樂師,修鞀鞞鼓,均琴瑟管簫,執干戚戈羽,調竽笙塤(箎)〔篪〕,飭鍾磬柷敔。命有司,為民祈祀山川百原,大雩帝,用盛樂。乃命百縣,雩祭祀百辟卿士有益於民者,以祈穀實。農乃登黍。
新字:是月也,命楽師,修鞀鞞鼓,均琴瑟管簫,執干戚戈羽,調竽笙塤(箎)〔篪〕,飭鍾磬柷敔。命有司,為民祈祀山川百原,大雩帝,用盛楽。乃命百県,雩祭祀百辟卿士有益於民者,以祈穀実。農乃登黍。
書き下し
是の月や、樂師に命じて、鞀・鞞鼓を修め、琴瑟管簫を均え、干戚戈羽を執り、竽笙壎箎を調え、鍾磬柷敔を飭えしむ。有司に命じて、民の為に山川百原に祈祀し、大いに帝に雩するに、盛樂を用いしむ。乃ち百縣に命じて、雩して百辟卿士の民に益有りし者を祭祀して、以て穀實を祈らしむ。農は乃ち黍を登む。
現代語訳
この月には、楽師に命じて、鞀(振り鼓)や鞞鼓を整え、琴・瑟・管・簫を調律し、干(楯)・戚(斧)・戈・羽など舞の道具を手にとり、竽・笙・壎(土笛)・箎(横笛)を調え、鍾・磬(石の鐘)・柷・敔などの打楽器を整備させる。役人に命じて、民のために山川やもろもろの水源に祈り、盛大に天帝へ雨乞いの祭を行い、盛大な音楽を用いる。さらに畿内の各県に命じて、民に恩恵をもたらした過去の君や卿士を雨乞いの祭でまつり、穀物の実りを祈らせる。農民はこうして黍を献上する。
解説
仲夏に楽器を整備し、雨乞いの大祭(大雩)を音楽とともに執り行う定めを述べた段です。夏の盛りは旱魃が心配される時期で、天帝や水源の神、民に功績のあった先人へ祈りを捧げ、豊作を願いました。多種多様な楽器名が列挙されるのは、国家的な祭祀に音楽が不可欠だったことを示します。呂氏春秋のこの巻が音楽論を多く含むのも、音楽を単なる娯楽でなく天地と人を結ぶ営みと見たからです。現代でも、雨や実りを願う祭礼や芸能は各地に残り、自然への畏敬と共同体の願いを音に託す文化の原型がここに見えます。
この章句が説くこと
楽師大雩雨乞い祭祀琴瑟盛楽
関連する章句
-
論語・八佾篇子曰く、『禘は既に灌より往くもの、吾これを観るを欲せざるなり。』
-
孔子家語・好生魯の公索氏、将に祭らんとして其の牲を亡う。孔子之を聞きて曰わく、「公索氏二年に及ばずして将に亡びんとす、後一年にして亡ぶ。」門人問いて曰わく、「昔公索氏其の祭牲を亡いしとき、而して夫子曰わく、二年に及ばずして必ず亡びんと、今期を過ぎて亡ぶ、夫子何を以て其の然るを知るや。」孔子曰わく、「夫れ祭る者は、孝子の以て其の親に自ら尽くす所以なり、将に祭らんとして其の牲を亡う、則ち其の余の亡う所の者多し。此くの如くにして亡びざる者は、未だ之れ有らざるなり。」
-
説苑・修文聖人鼓・控・揭・塤・箎を作為し、此の六者を比するに德音の音なり、然る後鐘・磬・竽・瑟以て之を和し、然る後干・戚・旄・狄以て之を舞う。此れ先王の廟を祭る所以なり、此れ酢酳の酬を獻ずる所以なり、官序貴賤各おの其の宜しきを得る所以なり、此れ以て後世に尊卑長幼の序有るを示すべきなり。
-
呂氏春秋・仲春⑦是の月や、祀に犠牲を用いず、圭璧、更に皮幣を用う。
-
論語・八佾篇季氏、泰山に旅す。子、冉有に謂いて曰く、『子、止むる能わざるか。』曰く、『能わず。』子曰く、『ああ!曾て泰山は林放に如かずと謂えりや。』
-
孔子家語・禮運先王蓍龜を秉り、祭祀を列ね、瘞し、繒し、宣し、祝嘏の辭說、制度を設く。故に國に禮有り、官に御有り、事に職有り、禮に序有り。先王禮の下に達せざるを患う、故に:帝を郊に饗するは、天位を定むる所以なり。社を國に祀るは、地利を列ぬる所以なり。祖廟を禘するは、仁を本づくる所以なり。山川を旅するは、鬼神を儐する所以なり。五祀を祭るは、事を本づくる所以なり。故に宗祝は廟に在り、三公は朝に在り、三老は學に在り、王は巫を前にして史を後にし、卜蓍瞽侑、皆左右に在り。王の中心違う無く、以て至正を守る。是を以て禮郊に行われて、百神職を受く。禮社に行われて、百貨極む可し。禮祖廟に行われて、孝慈服す。禮五祀に行われて、正しく法則す。故に郊、社、祖廟、山川、五祀は、義の脩まりて禮の藏なり。