呂氏春秋 / 功名③
缶醯黃,蚋聚之,有酸,徒水則必不可。以貍致鼠,以冰致蠅,雖工不能。以茹魚去蠅,蠅愈至,不可禁,以致之之道去之也。桀、紂以去之之道致之也,罰雖重,刑雖嚴,何益?
新字:缶醯黄,蚋聚之,有酸,徒水則必不可。以貍致鼠,以冰致蠅,雖工不能。以茹魚去蠅,蠅愈至,不可禁,以致之之道去之也。桀、紂以去之之道致之也,罰雖重,刑雖厳,何益?
書き下し
缶醯黃なれば、蚋之に聚まる。酸あればなり。徒に水なれば則ち必ず不可なり。貍を以て鼠を致し、冰を以て蠅を致すは、工と雖も能わず。茹魚を以て蠅を去らんとすれば、蠅愈々至り、禁ず可からず。之を致すの道を以て之を去らんとすればなり。桀・紂は之を去るの道を以て之を致さんとす。罰重くすと雖も、刑嚴にすと雖も、何ぞ益せん。
現代語訳
酢のかめの酢が黄ばんで熟すと、ぶよが集まってくる。酸っぱさがあるからだ。ただの水であれば決して集まらない。野猫を使って逃げる鼠を呼び寄せ、氷を使って蠅を呼び寄せようとしても、どんな名人でもできない。相手を引きつける性質がないからだ。腐った魚で蠅を追い払おうとすれば、蠅はますます集まってきて、止めようがない。蠅を引き寄せる当のもの(腐魚)で、蠅を追い払おうとするからだ。桀・紂は、人心を遠ざける方法(暴政)で人心を引き寄せようとした。罰を重くし、刑を厳しくしたところで、何の役に立とうか。
解説
この段は、身近なたとえを重ねて、目的と手段の一致を説きます。熟した酢にぶよが集まるのは酸味があるからで、ただの水には集まりません。野猫で鼠を、氷で蠅を呼ぶことは名人にもできず、腐魚で蠅を追おうとすればかえって蠅を招きます。原因と結果は釣り合っていなければならないのです。呂氏春秋はこれを政治に当てはめ、桀・紂は人心を遠ざける暴政という手段で人心を集めようとした、だから罰や刑を厳しくしても無益だと批判します。前段の徳治の主張を、逆の失敗例で裏づけています。現代でも、望む結果と矛盾した手段をとっていないか、原因と結果の整合を問う戒めとして読むことができます。
この章句が説くこと
功名目的と手段桀紂暴政人心徳治
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