呂氏春秋 / 仲春⑧
仲春行秋令,則其國大水,寒氣總至,寇戎來征。行冬令,則陽氣不勝,麥乃不熟,民多相掠。行夏令,則國乃大旱,煗氣早來,蟲螟為害。
新字:仲春行秋令,則其国大水,寒気総至,寇戎来征。行冬令,則陽気不勝,麦乃不熟,民多相掠。行夏令,則国乃大旱,煗気早来,虫螟為害。
書き下し
仲春に秋の令を行えば、則ち其の國、大水あり、寒気総りに至り、寇戎、來征す。冬の令を行えば、則ち陽気勝たず、麥乃ち熟せず、民多く相掠む。夏の令を行えば、則ち國乃ち大いに旱し、煗気早く來たり、蟲螟、害を為す。
現代語訳
仲春の月に季節はずれの秋の政令を行えば、その国は大水が出て、寒気がしきりに襲い、外敵が攻めてくる。冬の政令を行えば、陽気が振るわず、麦が実らず、民の多くが互いに略奪し合う。夏の政令を行えば、国はひどい干ばつに見舞われ、暖気が早く来すぎて、螟虫(茎の芯を食う害虫)が作物を荒らす。
解説
この段は、月令のしめくくりとして、季節にそぐわない政令を行った場合の災いを説きます。仲春に秋・冬・夏それぞれの政令を用いれば、大水・寒害・外敵、あるいは干ばつ・害虫といった禍が生じるとされます。これは、天子の政治が季節の気と一致しないと自然界の秩序が乱れる、という呂氏春秋の天人相応の思想を、警告のかたちで示したものです。時機を誤ることの危うさを強調しています。現代でも、状況や時期にそぐわない施策を無理に押し通すと、思わぬ副作用や失敗を招くという戒めとして読むことができ、時宜にかなった判断の大切さを教えてくれます。
この章句が説くこと
仲春季節はずれの政令天人相応災異時機警告
関連する章句
-
説苑・說叢時至らざれば、強いて生ずべからず。事究めざれば、強いて求むべからず。貞良にして亡ぶるは、先人の餘殃なり。猖獗にして活くるは、先人の餘烈なり。權は重きを取り、澤は長きを取る。才賢にして任輕ければ則ち名有り、不肖にして任大なれば身死し名廢る。
-
論語・郷党篇色みて斯に挙がり、翔りて後に集まる。曰く、「山梁の雌雉、時なるかな、時なるかな。」子路之を共す。三たび嗅ぎて作つ。
-
説苑・說叢時なるかな、時なるかな。間謀に及ばず。時の極みに至れば、間息を容れず。勞して體せざれば、亦た將に自ら息わんとす。有りて施さざれば、亦た將に自ら得んとす。
-
説苑・建本子路曰わく、重きを負い道遠き者は地を択びて休まず、家貧しく親老いたる者は禄を択びて仕えず、と。昔者由二親に事うるの時、常に藜藿の実を食して親の為に米を百里の外に負う。親没するの後、南のかた楚に遊び、車百乗に従い、粟を積むこと万鍾、茵を累ねて坐し、鼎を列ねて食う。藜藿を食い米を負いし時を願うも復た得可からず。枯魚索を銜んで、幾何ぞ蠹まざらん。二親の寿は忽ち隙を過ぐるが如し。草木長ぜんと欲するも霜露は使さず。賢者養わんと欲するも二親待たず。故に曰わく、家貧しく親老いたれば禄を択びて仕うと。
-
呂氏春秋・愼人②舜の耕漁せしときも、其の賢不肖は天子為ると同じ。其の未だ時に遇わざるや、其の徒屬を以て、地財を掘り、水利を取り、蒲葦を編み、罘網を結び、手足胼胝するも居まず。然る後に凍餒の患いを免れたり。其の時に遇うや、登りて天子と為り、賢士之に歸し、萬民之を譽め、丈夫女子、振振殷殷として、戴き説ばざるは無し。舜自ら詩を為りて曰く、「普天の下、王土に非ざるは莫し。率土の濱、王臣に非ざるは莫し。」盡く之を有するを見わす所以なり。盡く之を有するも、賢なること加わるに非ざるなり。盡く之れ無きも、賢なること損するに非ざるなり。時然らしむるなり。
-
呂氏春秋・首時⑤飢馬厩に盈ちて嗼然たるは、未だ芻を見ざればなり。飢狗窖に盈ちて嗼然たるは、未だ骨を見ざればなり。骨と芻とを見れば、動くこと禁ず可からず。亂世の民嗼然たるは、未だ賢者を見ざればなり。賢人を見れば則ち往くこと止む可からず。往くとは其の形に非ず、心を之れ謂うか。齊は東帝を以て天下に困しみ、而して魯は徐州を取れり。邯鄲は壽陵を以て萬民に困しみて、而して衛は繭氏を取れり。魯・衛の細を以て、皆志を大國に得たるは、其の時に遇えばなり。故に賢主秀士の黔首を憂えんと欲する者は、亂世之に當たれり。天は再び與えず、時は久しく留まらず。能は兩つながら工ならず、事之に當たるに在り。