論語 / 陽貨篇
子曰:「鄉原,德之賊也。」
新字:子曰:「鄉原,徳之賊也。」
書き下し
子曰く、郷原は、徳の賊なり。
現代語訳
先生がおっしゃった。「郷里で評判のよい俗物は、徳を損なう賊である。」
解説
郷原とは、誰からも善い人だと言われる人物のことだ。誰とも対立せず、皆に合わせ、評判がよい。孔子はそれを徳の賊と呼んだ。悪人ではないのに、賊である。なぜか。徳があるように見えて、実際には基準を持っていないからだ。基準を持たない人が徳者として通用すると、本物の基準が見えなくなる。偽物が本物の場所を占めることで、本物が現れる余地が消える。これが賊たるゆえんである。組織にもこの型は必ずいる。誰の意見にも頷き、誰とも揉めず、皆に好かれている。実害は無いように見えるが、その人が高く評価されると、対立を引き受けて判断する人が損をする構造ができる。子路篇で、皆に好かれる人物を孔子が評価しなかったのと同じ論点である。