論語 / 衛霊公篇
子曰:「已矣乎!吾未見好德如好色者也!」
新字:子曰:「已矣乎!吾未見好徳如好色者也!」
書き下し
子曰く、已んぬるかな。吾未だ徳を好むこと色を好むが如くする者を見ざるなり。
現代語訳
先生がおっしゃった。「もう仕方がない。私はまだ、美しいものを好むのと同じくらい徳を好む人を見たことがない。」
解説
子罕篇にも同じ言葉があり、繰り返された嘆きである。徳を好む気持ちが、色を好む気持ちに勝てない。この比較が的確なのは、色を好む気持ちが理屈抜きで自然に湧くものだからだ。努力せずとも惹かれる。徳はそうではない。頭では大事だと分かっていても、自然には惹かれない。孔子が嘆いたのは、人の欲望の構造そのものである。ここから引き出せる実務的な結論は、意志に頼るなということだ。自然に惹かれないものを続けるには、仕組みが要る。習慣にする、人と約束する、記録を残す。徳を好むようになるのを待つのではなく、好きでなくても続く形を作る。孔子自身、この嘆きを二度繰り返した。つまり、待っても変わらなかったということである。