論語 / 郷党篇
問人於他邦,再拜而送之。康子饋藥,拜而受之,曰:「丘未達,不敢嘗。」
新字:問人於他邦,再拝而送之。康子饋薬,拝而受之,曰:「丘未達,不敢嘗。」
書き下し
人を他邦に問うには、再拝して之を送る。康子薬を饋る。拝して之を受けて曰く、「丘未だ達せず、敢えて嘗めず。」
現代語訳
人を遣わして他国の人を見舞うときは、(その使いの者に)二度拝礼して送り出した。康子(季康子)が薬を贈ってきた。拝礼して受け取り、言った。「丘(私)はこの薬のことをよく知りませんので、すぐに口にすることはいたしません。」
解説
後半の対応が見事である。有力者からの贈り物を、受け取ったうえで、飲まないと明言した。受け取らなければ相手の好意を拒むことになり、黙って捨てれば欺くことになる。孔子は受け、礼を尽くし、そのうえで飲まない理由を述べた。三つとも同時に成立させている。断り方の技術として学ぶところが多い。好意を無にせず、しかし自分の判断は曲げない。そのためには、拒む対象を正確に分けることが要る。ここで拒んだのは薬を飲むことであって、贈り物でも相手でもない。実務でも、相手の提案を断るときに、相手そのものを拒んだように伝わってしまうことが多い。何を受け、何を受けないのかを分けて言葉にすれば、関係を壊さずに判断を通せる。
この章句が説くこと
贈答断り方誠実判断関係
関連する章句
-
孟子・離婁章句下孟子曰く、「言に実無きは、不詳(ふしやう)なり。不詳の実は、賢を蔽ふ者之に当たる。」
-
尚書・君陳至治は馨香にして、神明に感ず。黍稷は馨と非ず、明德のみ惟れ馨し。
-
『囲炉夜話』第百九十二則・必ずしも白を求むるに急ならず直道を以て人に教ふ、人即ひ從はざるも、而も自ら反みて愧づる無し、切に曲げて以て榮を求むる勿かれ。 誠心を以て人を待つ、人或いは諒とせざるも、而も久しきを歷て自ら明らかなり、必ずしも白を求むるに急ならず。
-
論語・為政篇子曰く、詩三百、一言以て之を蔽えば、曰く、思い邪(よこしま)無しと。
-
『武士道』第七章 至誠信實・独逸商人は二十年で正直を解した此母無くんば、誠実は貴族的の孤児にして、ただ教育高く、礼文秀でたる心念のみの、之を養ふて子とするを得べきものたり。かかる心念は武士の普く有したる所なりき。されど平民的実利的なる乳母の無かりしより、此の可憐の嬰児は発育を遂ぐること能はざりき。商工業にして進歩せば、誠実は之を守るに容易に、而も亦た有利なる道徳たるべし。試みに思へ、ビスマルクが独逸帝国の領事に訓示して、『就中、独逸船積の物資が、其品質、数量ふたつながら、著しく信用を欠くは悲しむべし』と戒飭したるは、近く千八百八十年十一月にあらずや。然るに現時に至りては、商業上、独逸人の不注意、不信用なる事実を耳にすること稀少となれり。されば独逸商人は、わずかに二十年の間に於て、早く既に正直は利潤の道なることを解したるものなり。
-
史記 儒林列伝申公之を恥ぢ、魯に帰り、退きて家に居りて教へ、終身門を出でず、復た賓客を謝絶し、独り王命之を召せば乃ち往く。弟子遠方より至りて業を受くる者百余人。申公独り詩経を以て訓と為して以て教ふ、伝無し、疑はしき者は則ち闕きて伝へず。