論語 / 述而篇
子溫而厲,威而不猛,恭而安。
新字:子温而厲,威而不猛,恭而安。
書き下し
子は温にして厲し、威にして猛からず、恭にして安し。
現代語訳
先生は、温かでありながら厳しく、威厳がありながら荒々しくなく、うやうやしくありながら落ち着いておられた。
解説
弟子が孔子の人物像を、三組の対で描いた一句である。どれも普通は両立しない性質が並んでいる。温かければ甘くなり、厳しければ冷たくなる。威厳を出せば威圧になり、丁寧にすれば落ち着かなくなる。孔子はその両端を同時に持っていた、というのが弟子たちの実感だった。両立の難しさは、上に立つ人ほど身に染みているはずだ。優しくすれば規律が緩み、締めれば人が萎縮する。多くの人はどちらかに振り切るか、場面ごとに切り替える。切り替えは、相手から見れば気分屋に映る。孔子が印象的なのは、この三組を同時に持ち、揺れなかったところである。厳しさは温かさの中にあり、威厳は静けさの中にあった。両立させるとは、混ぜることではなく、どちらも手放さないことである。