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驢鞍橋 / 卷下

同しく秀和尙語て曰く此前、山中にて瘡はやることあり。時に代官吉左衛門、台岩和尙に語りければ、台岩和尙塔を立て、二季の彼岸に團子を備へよと云ひ給ふ。吉左衛門その如くしければ、病留る也。後に團子を備へされば、その塔より光物飛ひ、村中の者に崇る也。吉左衛門この樣子を師に語る。師聞て曰く、扨ても台岩はそでもないことめされたり。早や体かでき、靈できて人に崇る也。是れは台岩のめされたる間、此人を喚はて叶はすと云つて、台岩と我を喚ひ給ふ。至りければ、師彼に同道ありて、一日施餓鬼、金剛經を誦み吊ひ、塔を打崩し、木ともを切拂ひ、本の野原は作して皈り給へば、忽ち治りたる也。

新字:同しく秀和尚語て曰く此前、山中にて瘡はやることあり。時に代官吉左衛門、台岩和尚に語りければ、台岩和尚塔を立て、二季の彼岸に団子を備へよと云ひ給ふ。吉左衛門その如くしければ、病留る也。後に団子を備へされば、その塔より光物飛ひ、村中の者に崇る也。吉左衛門この様子を師に語る。師聞て曰く、扨ても台岩はそでもないことめされたり。早や体かでき、霊できて人に崇る也。是れは台岩のめされたる間、此人を喚はて叶はすと云つて、台岩と我を喚ひ給ふ。至りければ、師彼に同道ありて、一日施餓鬼、金剛経を誦み吊ひ、塔を打崩し、木ともを切払ひ、本の野原は作して皈り給へば、忽ち治りたる也。

書き下し

同しく秀和尚語て曰く此前、山中にて瘡はやることあり。時に代官吉左衛門、台岩和尚に語りければ、台岩和尚塔を立て、二季の彼岸に団子を備へよと云ひ給ふ。吉左衛門その如くしければ、病留る也。後に団子を備へされば、その塔より光物飛ひ、村中の者に崇る也。吉左衛門この様子を師に語る。師聞て曰く、扨ても台岩はそでもないことめされたり。早や体かでき、霊できて人に崇る也。是れは台岩のめされたる間、此人を喚はて叶はすと云つて、台岩と我を喚ひ給ふ。至りければ、師彼に同道ありて、一日施餓鬼、金剛経を誦み吊ひ、塔を打崩し、木ともを切払ひ、本の野原は作して皈り給へば、忽ち治りたる也。

現代語訳

同じく本秀和尚が語って言われた。以前、山中で瘡が流行ったことがあった。そのとき代官の吉左衛門が台岩和尚に語ると、台岩和尚は塔を立てて、春秋の彼岸に団子を供えよ、と言われた。吉左衛門がそのようにしたところ、病は止まった。後に団子を供えなかったところ、その塔から光り物が飛んで、村中の者に祟った。吉左衛門がこの様子を師に語った。師は聞いて言われた。さても台岩はとんでもないことをされた。もう形ができ、霊ができて人に祟るのである。これは台岩がされたことだから、この人を呼ばなければかなわない、と言って、台岩と私を呼ばれた。行ったところ、師はそこへ同道して、一日施餓鬼と金剛経を読んで弔い、塔を打ち崩し、木々を切り払い、元の野原にして帰られると、たちまち治まったのである。

解説

疫病を鎮めるために塔を立て、彼岸ごとに団子を供えさせたところ、供えを怠ると祟りが起きるようになった。正三は、塔を立てたことで霊に形を与え、祟る存在を作り出してしまったのだ、と見抜き、塔を壊して元の野原に戻した。すると祟りは止んだ。対処のために作った仕組みが、かえって新たな縛りや恐れを生むことがある。本来不要なものは、形ごと取り払うのが解決になる、という話として読める。

この章句が説くこと

祟り形を与える仕組み取り払う恐れ台岩和尚

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